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【書籍化&コミカライズ】冒険者アル -あいつの魔法はおかしい  作者: れもん
第30話 プレンティス侯爵家の遺産

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30-6 侵入経路調査 後編

 アルの質問に、城内警備を統括する部屋で働いていた男女は顔を見合わせた。魔道装置を初めてみた時にアルが思わず口にした感嘆の言葉に反応した一番年配の男がおずおずと口を開く。


「この魔道装置が映し出しているプレンティス城と現在のプレンティス城では鐘楼の位置などに一部違いがあり、その事は私も疑問に思い先任の者に尋ねました。ですが、答えられるものは誰も居ませんでした。この詳細については記録が何も残っていないのです。おそらくですが、攻城戦の戦術が変化していくのに伴って城の改修が行われたものの、その内容については秘匿され資料としては残すことができなかったのではないかと推察しています。防衛に関する情報が資料として残されないことは時折みられることです。これは単に、その頃には既に魔道装置が映し出している城の幻覚を改修後の姿に変更する事ができなかっただけではないでしょうか。もちろんその改修に伴って警備用の魔道具の位置が変更されることはあったでしょうが、そこは考慮して改修はなされていたはずです」


 彼の言葉は最後の方は力がなくなっていった。宝物庫に侵入された事の責任が自分にかかってくるかもしれないと考えたのかもしれない。


「実際に反応が途中で消える事とかあったのではないですか?」

「それは稀ですがありました。ですが、この魔道装置に映されている反応の光点は一定周期で移動しますので元から時間差などもありそのせいだと考えていたのです」


 アルはプレンティス城を模した半透明の幻覚のなかで瞬く光の点を改めて見た。彼の言うように、光の点はスムーズに移動しているのではなく、何秒か置きに消えては少し離れたところに現れるというのを繰り返していた。一定間隔で場所の情報が更新され、それが反映されるようになっているらしい。光の点の上にある小さな数字によって辛うじてその移動をおいかけることができるのかもしれないが、警備用の魔道具の効果範囲を出たり入ったりする者が居ても区別はつきにくいだろう。


「プレンティス侯爵や城を守る責任者はこの事を知っていたのですか? 他に知る者は?」


 アルの問いに男は首を振った。


「侯爵閣下には報告されている筈だと先任の者は言っておりました。我々以外でこの事を知っているとすれば第3魔導士団の者でしょうか。彼らに警備の仕事などで手伝ってもらう事もありましたので、その際にこの部屋にも出入りしていたはずです」


 アルが気付いたぐらいだから、彼らも気付いた可能性はあるのではないだろうか。ここに映し出されている幻覚と現在の姿を見比べて、築城当時から変わっている場所を洗い出し、そこを中心に警備をすり抜ける具体的なルートがないのか調べる必要があるようだ。アルはこの部屋に案内してくれた従士たちを振り返る。


「クリントン、調査のために改めて城を空から調査するので、一応警備の者たちに通達をしてください」


-----


 詳細な調査はその日だけでは終わらなかった。東側の外壁のすぐ内側にあたるかなりの箇所で警備用の魔道具に反応しない場所があることが判明し、その精査にかなりの時間がかかったのだ。おそらく東側の城壁はかなり拡張されたようだ。ただ、その際に警備用の魔道具がどれぐらい動かされたのかははっきりしなかった。そこは元の配置図などが存在しないためである。該当の区画のほとんどは召使など城の使用人が主に利用する細い通路や倉庫に使われていて、呪文を使う者が出入りするような場所ではない事も発見を妨げる一因であったようだ。

 そして、問題の場所はその区画で見つかった。外壁に面した窓を持ち、中で呪文を使っても警備用の魔道具に反応しない小部屋が発見されたのである。偶然なのかどうかは判断がつかないがその窓のすぐ下には張り出しがあって地上からはその窓は見えない位置にあった。

 窓には鉄格子がついていたものの、それには細工がしてあって外から外せるようになっており、暗い時間に飛行(フライ)呪文で部屋の窓がある張り出しのところまで行けば見咎められずに中に入ることができるような仕組みとなっていた。部屋の中に入って呪文を解除してしまえば、それ以降は警備用の魔道具には見つかることなく自由に城内を行き来できてしまうだろう。

その小部屋の扉には鍵がかかっており、扉の先は城の使用人たちが利用する細い通路に繋がっていた。その通路にはベッドのシーツなど様々な備品置き場があり、貴重な食器などが保管されている部屋も面しているので、鍵がかかった小部屋の存在には誰も疑問を抱かなかったらしい。そして、プレンティス侯爵家が降伏する時点で小部屋を倉庫として利用していた部署は第三魔導士団となっていた。


「第三魔導士団の魔導士が呪文をつかっても見つからない部屋がある事に気付き、その部屋を借りて何かに利用していたということでしょうか」


 数日後の夕刻、作成し終えた調査結果を束ねながらターナー卿が呟く。アルは首を振った。


「その可能性は高いと思うけれど、証拠はないですね。目的もよくわからない。でも、そちらの調査は第一騎士団に任せます。私たちの任務は侵入経路の調査でしかありません。他におなじような条件を満たす部屋はないので、ここさえ封じれば、侵入を防ぐことはできるでしょう。とりあえず鉄格子は開かないようにし、この小部屋に警備用の魔道具を新たに設置するか、発見系の呪文が使える魔法使いをここに常駐させることができれば、侵入は防ぐことができる。クウェンネル男爵にはそう報告します」

「了解です」


 彼女とその従士たちは満足そうに頷いた。


「これと同じようなことがあったら、私が居なくても大丈夫ですか?」


 アルが尋ねる。細かな調査に入ってからはアルは確認をするだけで、城の見取り図を作り、それと設置されている警備用の魔道具の有効範囲を魔法発見(ディテクトマジック)呪文を使いながら照合するという作業は全てターナー卿たち3人に行ってもらった。その経験はうまく消化できただろうか。


「はい、大丈夫です」


 彼女たちはそう言って胸を張った。

 侵入する場合は、穴を一つ見つければ済むが、それを防ぐ側がすることは穴がない事を広い城の敷地すべてで確認するという根気の要る作業であった。さらに、今後、彼女たちにこう言った事を任せたいアルとしては、今回、ここに換気口がありますよとか、ここで石軟化(ソフテンストーン)呪文や金属軟化(ソフテンメタル)呪文を使えば魔法発見ディテクトマジックの反応が出ませんよといった思いつく限りの細かな指摘を行った。

 少しやりすぎたかもしれないが、それでも彼女たちはなんとかやり通した。彼女のこの反応からすると良い経験、かなりの自信になったようだった。王家の魔導士に抜擢されるだけの素養を十分示せたことになるのではないだろうか。この話はきちんと彼女たちの上官であるアーノルド子爵に報告することにしよう。


「ところで、途中で見つけたアレはどうされますか?」


 ターナー卿がおそるおそる尋ねた。アレというのは、抜け穴のことであった。調査をしているうちに、使用人通路の換気口から細い通路に繋がる穴が偶然にも発見されたのだ。ただ、その通路には厚く埃が積もって長らく人の通った痕跡がなく、今回の調査対象である侵入経路とはまた違うように思われたのでそれ以上の調査は行わなかった。城から非常時に脱出したりするための抜け穴である可能性もあり、そうだとすれば、おそらく城主かその家族のみが知るべきものだろう。

 アルは思わずだれも聞き耳を立てていないか周囲を見回した。


「調査が必要です。とは言え、あの通路の性格次第では公にはできない可能性もあります」


 いつ、パトリシアがこの城に来ることになるかわからないので、侵入経路に関する調査を優先したが、それは一旦終了した。もう、この資料を提出すれば大丈夫だろう。だが、このタイミングで抜け穴の調査もしておくべきだろう。調査を誰かに依頼すれば、この情報はたちまち噂となり多くの人に知られてしまう可能性がある。第一、調べるのは楽しそうで余人に任せたくない。


「この報告は明日の朝に行うとして、今晩にでも調査をしてみようと思います」


 アルの言葉にターナー卿は身を乗り出した。


「私たちも調査に一緒に行かせていただいても良いですか?」


 どうしよう。彼女も気になるらしい。もちろん魔導士団に入れるからには信用できる人物なのだろうし、秘密も守れるだろう。それに同じような事は今後もあるかもしれない。これも経験か……。


「わかりました。もしかすると不審者の侵入を阻害するための罠なども設置されている可能性があります。調査中は私の指示には疑念を持たずに従う事。それでいいですか?」

「もちろんです」


 ターナー卿だけでなく、ブライドン、フラーの2人の従士も瞳を輝かせて頷いた。


「では、食事を済ませ、1時間後に再びここに集合です。よいですね」


読んで頂いてありがとうございます。

月金の週2回10時投稿を予定しています。よろしくお願いいたします。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。


いいね、評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。


冒険者アル あいつの魔法はおかしい 書籍版 第4巻 まで発売中です。

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https://to-corona-ex.com/comics/163399092207730


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挿絵(By みてみん)


諸々よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
なんだか最近はごちゃごちゃした話が多くなっていて読み味が落ちてきてしまっている印象を受けます。ここからどう展開していくのか気になりますが、フラストレーションを発散させるような爽快な展開があるのでしょう…
立場が人を作る 本人は戸惑ってるけど、アルくんにキリッとしたかっこよさが加味されて嬉しいです
アルがしっかり上司をやってる……
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