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2022年 光の家庭  作者: ヒトミ
第一部 本然の自分に還る
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教会暮らし

 そうしたある日、一通りの学びを終えた時、担当の人に言われた。

「体系的な理論は学んだから、今度は実践をやってみない?」

 なんじゃそりゃ!である。聞いてみると、数名で泊まりながら、講義を受けたり、お祈りをしたりするという。全くもって、未知の領域だったけれども、お試しでやってみることにした。


 しばらく寝泊りできる分の荷物を準備して、いざ乗り込んだ。

 場所は教会だった。四階建ての建物で、一階が事務所と風呂場、二階は大きな礼拝堂、三階がキッチンと男性部屋、女性部屋、講義室、四階はさらに別の部屋がある。私達は主に三階の部屋を使用した。プライベートなんてものはない。教会の担当のお姉さんが一つ一つ部屋を案内していく。教会で寝泊りと聞いていて、なんとなく薄暗い小さな屋根裏部屋みたいなのを想像していたが、実際はそうでもなく、最初の印象は「意外と普通の建物じゃん」だった。

 最後に女性部屋に入ると、そこには四角いちゃぶ台と座布団があり、同年代ぐらいの女の子とその母親と思われる女性が座ってお茶を飲んでいた。

「綾香って言います。大学四年生です。よろしく」

 背が高くて可愛らしい女の子が明るく自己紹介をしてくれた。私より年下だったけれど、後に一番仲良くなった友達だ。隣にいた女性はやはり綾香の母親だった。教会には綾香のように、親が信仰を持っていて、その子供である「信仰の二世」と呼ばれる子達もたくさんいた。こうして男女合わせて約十名の教会でのトレーニングが始まった。


 教会の生活は朝五時四十分頃、起床、まず神様に挨拶する。私を含め起きるのが苦手な子は、寝ぼけまなこ状態だ。布団を片づけ、身支度を簡単に整え、六時から朝の祈祷会が始まる。聖歌をみんなで一曲賛美し、代表者が祈祷する。その後、経典を順に声を出して読んでいく。最後に各自で祈祷し、朝の挨拶をする。その後、掃除や朝食当番に分かれ、終わった後、朝食となる。その後は身支度をし、各々学校や会社へと向かう。

 夜は七時頃から夕食の配膳を始め、準備ができたら、そろったメンバーでお祈りをし、食事を始める。夜八時半頃、講師を迎えて講義を受ける。講義の感想や一日の振り返りなどをノートに書く。

 十時頃、その流れで夜の祈祷会へと移り、最後は神様に一日の終わりの挨拶をして解散。そして、順番にお風呂に入り、寝支度をととのえ、就寝となる。

 こうして私の信仰生活は始まったが、初めは慣れなかった。講師は情熱的な人で、講義の中で神様の心情を熱く語りながら、突然私達に話を振ることがあった。周りの人達はそのノリに素直についていっている。しかし、私だけその雰囲気に慣れず、解散後、自分の衣装棚の前で深い溜め息をこぼしていたら、隣にいた綾香が私を見て笑いながら、

「わかる、わかるよ。あのノリ馴染めないよね。実は私もだよ。まぁ、ゆるく気楽にいこう」

 と声をかけてくれ、一気に仲間意識が芽生えたのだった。お互い、気持ちに正直で、場の雰囲気に馴染めないという点で一致したマイペースな二人だった。ただ、彼女は信仰の二世で、私より教会文化や雰囲気というものを知っていたので、そういう面ではある意味先輩だった。

 さらに、そういった小さな心のつまずきを教会のお姉さんは見逃さず、フォローしてくれた。

「こういった信仰の共同生活はね、洗濯機のなかで芋を洗っているようなものなの。どういう意味かというとバックグラウンドも全く違った見ず知らずの人達が集って生活することで、時に色んな想いや感情が湧いてくるんだけど、神様が見守る場で、そういったものが整理されていくの」

 そうやってお姉さんは一つ一つ信仰のいろはを教えてくれるのだった。

 神様を生活の中に迎えて、神様や聖書について学びながら、信仰の仲間達と寝食を共にした信仰生活は神様に愛された実りある時間だった。


 そうして生活に慣れてきて、一か月たった時のことだった。

 夜のプログラムを全て終えて、二階の礼拝堂に向かった。一人で祈りに来たのだ。夜の礼拝堂は祭壇以外の明かりが消え、全体的に薄暗く、少し怖い雰囲気を醸し出している。だけれど、今までたくさんの人達が祈りを捧げてきた場であるから、場が整っていて、祈りやすいのだ。信仰初心者の私でもそれを感じることができた。

 祭壇近くに行き、静かに座り、祈った。神様に話したいことをありのまま全部伝えた。そしたら、心の底から込み上げてきた熱いものがあり、涙が自然と頬を伝っていた。

 この状況にびっくりして、その後すぐにお姉さんに報告すると、

「それはね、涙の祈祷っていうんだよ。神様の心情が降りて来たんだね」

 と教えてくれた。初めて神様に繋がるというこの体験が嬉しくてしかたがなかった。


 神様と出会ってきた一つ一つの体験が積み重なって、それらはいつしか神様との絆となっていった。上京時、日本と海外のどっちつかずの状態で自信がなかった私が、今は神様という軸を中心に据えて生きられるようになっていた。

 そして何よりも神様が好きだった。礼拝堂での涙の祈祷体験のように直接心におりてきて応えてくださる時もあれば、日常生活の中で人や場所、映画、本など様々なものを介して、その時に必要なメッセージが与えられることもあった。そのような神様からの導き・愛を発見した時には嬉しくなったし、絶妙なタイミングで必要なものを与えてくださる神様にすごい!と感嘆せずにはいられなかった。目には見えないけれど、確実に私達と共におられる神様を実感するのだった。

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