レイラインと三角形
十一月の終わり、東京に戻ってきた。奈良に行く前に気づいたことがあった。いつもの日本地図を開き、訪問した地にピンを立てていく。最後に行った場所、奈良の大神神社、石上神宮までマークした。やっぱり、そうか……。
一月に参拝した茨城県の鹿島神宮から九月に行った九州の高千穂や幣立神宮までを結ぶ一本線の「レイライン」が出来上がっていた。レイラインとは古代の遺跡や巨石群、神社仏閣などが、不思議と一直線上に並んで位置するように見える現象をいう。鹿島神宮と高千穂・幣立神宮を結ぶレイライン上には、東京の皇居、静岡・山梨の富士山、三重の伊勢神宮、徳島の剣山といったポイントとなる地があるのだが、それらも過去に家族や友人と訪れていた場所だった。私の気づかないところで神様に導かれていたのだなと感じたのだった。
埼玉県日高市、千葉神社周辺、大磯の三点を結んで出来上がった東京を囲う三角形の場に、レイラインで繋がったエネルギーを流していく。
日本の西部で受け取った、神代の中心人物であった須佐之男命と饒速日命のエネルギーがレイラインを通り、東京の場に流れていくのだろう。そのエネルギーが場に入ってくるポイントがおそらく七月に訪れた「東京のへそ」とよばれる杉並の大宮八幡宮なのだと思う。
十二月に入って、明子からラインがきた。
「さっきうとうとしていたら、夢で三峯神社に行くように言われたの。一緒にいかない?」
埼玉県秩父にある三峯神社だ。埼玉と言えば、気になっていた場所がある。以前、埼玉に訪れた時に、観光案内所で貼られていたポスターに描かれていた場所だ。車ではないと行けないような山の奥地にある場所だった。埼玉に行くならと思い、聞いてみた。
「三峯神社にいくなら、飯能にある竹寺も行きたいんだけど行けるかな?」
「いいよ、いこう」
十二月九日、まずは埼玉県飯能市にある竹寺に向かった。天台宗の寺院である竹寺は神仏習合のお寺であり、本尊に須佐之男命と同体とされている「牛頭天王」を祀っている。標高四九〇メートルの山頂に位置するこの山寺に辿りつくのには苦労した。カーブの多い山道を通り、ひどい車酔いにかかってしまったからだ。それでも、休憩を何度かはさみ、ようやく到着した。
寺院でありながら、入口には鳥居がある。境内には弁天堂、弁天池、牛頭明王像、トーテンポールがあり、進んでいくと、左手に連なって並んだ竹製の鳥居があり、本殿への入口が見えてくる。さらに進むと階段があり、大きな茅の輪がついた鳥居に着く。鳥居をくぐって、石段を登っていくと苔むした茅葺き屋根に入母屋造で朱塗りの本殿があった。
本殿前にある柱に目がいった。柱には五色の御手綱が結ばれており、その御手綱は本殿へと続き、本殿内の本尊牛頭天王様の手に結ばれているのだ。
ちょうど十二月十二日まで、十二年に一度の丑年の御開帳の時期だった。五色のエネルギーが全て統合されてレイラインの流れができ、須佐之男と結縁がなされたのだろう。日本の地のエネルギーが整い、天地の陰陽結びが完了したのを実感したのだった。
本殿よりさらに奥深く登った場所にある鐘つき堂で鐘を鳴らして、次の三峯神社へ向かった。
埼玉県秩父市にある三峯神社も標高一一〇二メートルに位置し、山奥にある。日本武尊が東国の平安を祈り、伊弉諾尊と伊弉冉册尊の二神をお祀りしたのが始まりという。この時、日本武尊を道案内したのが狼であり、神様の使いとして、狼が狛犬に代わりに鎮座している。
入口には大きな白い石製の三ツ鳥居が見える。大神神社の鳥居の形に似ていて、明神鳥居の両脇に小さな鳥居を組み合わせたものである。鳥居の前には狛狼が立っている。鳥居をくぐって、大きな石碑が立ち並んで、緩やかな上り坂になった参道を上っていく。
しばらく行くと、分かれ道の場所に出で、左へ曲がって階段を下りていくと、鮮やかな極彩色と金色の文字が目を引く随身門だ。銅板葺で軒唐破風切妻造の八脚門で実に厳かである。随神門をくぐり、徐々に下がっていく道を進むと、狛狼が立っていて、左右二つに分かれる道にでる。その左側を進んでいき、右手にある石段を登ると、立派な青銅鳥居が見え、社殿に到着だ。
極彩色の総漆塗りと見事な彫刻が施された権現造の拝殿はまさに美麗荘厳の一言に尽きる。境内にある八棟燈籠や手水舎まで煌びやかだ。また、拝殿の後ろにある本殿は、春日造の一間社で総漆塗りの一部に極彩色が施されていて、こちらも美しかった。
拝殿を前に右方向に進むと、祖霊社、國常立神社、日本武神社と始まり、約二十近くの摂末社が連なっていた。摂末社を抜けると、日本武尊銅像が立つ小山への道が見えてくる。約五メートルの大きな日本武尊がキリっとした顔をし、右手をあげて堂々と気風よく立っているのだ。日本武尊が願った国の平和への想いに重ね、祈りを捧げ、最後に、奥宮遥拝殿へと向かった。
三ツ鳥居方向に戻る道の左手に階段があり、そこを登ると、奥宮遥拝殿だ。三峯神社の奥宮が鎮座する妙法ヶ岳をはじめとした山々が一望できる。夕暮れ時の一時、ペールトーンの霞がかかったような幻想的な空と山々の景色が一面に広がっていた。遠くかすかに見えた白い三日月を眺めながら、自然が織りなす風景にうっとりするのだった。




