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2022年 光の家庭  作者: ヒトミ
第二部 日本の陰陽結び
20/26

九州トリップ③ 西と東の陰陽結び

 三日目、九州の旅最終日を迎えた。台風の影響で、宮崎は朝からひどい雨が降っていた。東京から持ってきていた大きなビニール傘がとても役に立った。名前でもつけてあげようかな……そう思えるほど、こんなにもこのビニール傘に愛着がわくとは思っていなかった。

 今日は、日南市にある鵜戸神宮に行って、熊本空港へ向かう予定だった。ただ、鵜戸神宮は太平洋の日向難に面した断崖にあるので、この雨の中、行けるのかが分からなかったが、とりあえず行ってみることにした。

 宮崎市内からだと、海沿いの国道二二〇号線を使って約一時間で行ける。しかし、出発後すぐ、その道路が大雨のため、閉鎖されたことを知った。

 仕方なく、私達は内陸の別ルートを使って南下した。途中、冠水した道路も通り、ちょっと怖かったけれども、日南市の東郷という地域まではなんとかたどり着けた。雨はさきほどよりはましになっていた。しかし、そこには道路整備をしている人達がいて、私達は止められた。

「ここから先は、さきほど通行止めになりました」

「雨は少しましになりましたが、しばらく解除されないのでしょうか」

「はい、一旦通行止めが出ると数時間は解除されないんです」

 日南市から鵜戸神宮には、やはり海沿いの道を通って、上がっていくしかなかったのだが、そこが完全に通行止めとなったのだ。残念だが、ここで諦めるしかない。私達はUターンした。

「これから、どうしようか。まだ、空港行くには時間があるよ」

「ねぇ、昨日暗かったし、もう一回西都原古墳群いってもいい?」

「うん、いいよ」

 やった!再び西都市に行けることになった。

 西都市に入る頃には雨はまたザーザー降りになっていた。今回は古墳群の敷地内にある宮崎県立西都原考古博物館に訪れた。四階建ての建物で、地下一階が主な展示室となっている。 

 早速、導入スロープを通って、地下一階へと下っていく。薄暗い展示室では、おしゃれなイラストが入った解説パネルや、「ハンズオン展示」という展示資料に実際に触れて、五感を使って楽しめるものなどが効果的に取り入れられた、スタイリッシュで工夫がある空間となっていた。

 前半は旧石器、縄文、弥生時代、後半は古墳時代についての展示であった。国内外の情勢や地勢などの背景も踏まえながら、解説されていて、じっくり楽しめた。その他にも、当時、九州南部に住んでいた辺境の民「隼人はやと」の紹介や「地下式横穴墓」の原寸大模型もあった。これで入館料無料なのは驚きである。全ての展示を見終わり、三階のテラスから古墳群を一望して、この地を後にした。

 西都市に二回も訪れることができて幸せだった。そして、東京から来た私達が西都市に訪れたことが「東の都」と「西の都」の陰陽結びだとも感じたのだった。西都市、ありがとう。

 私達は宮崎郷土料理を食べに、宮崎市内へ戻った。思えば、名所や神社を回ることに夢中で、あまりまともな食事をとっていなかった。鶏の炭火焼、チキン南蛮、冷や汁の宮崎名物がたっぷり詰まったランチ定食を堪能し、熊本空港へ向かった。

 宮崎でのどしゃ降りだった雨はどこへ行ってしまったのだろうと思うほど、熊本に入ると、空は見事に晴れていた。「神は火水なり、つまり、陽を表す『火』と陰を表す『水』の統合なのだ」と誰かに聞いたことがあるけれど、この天気はそれを感じさせた。

 また、道中、車から、奇妙な形をした雲を見つけた。夕日の光があたり、少しオレンジがかった黄金色の雲だ。少しぼてっとした形で、シュシュっと細い線が入っている。不思議な雲だねと言いながら、明子と眺めていた。

 あの雲が何だったのかが、熊本空港に到着して分かった。お土産屋さんを散策していた時に見つけたのだ。そう、それは陣太鼓ソフトだった!

 私は車の中で明子にずっと言っていたのだ。

「旅行の最後にもう一度おいしいソフトクリームを食べたいなぁ」

 けれども、道中のパーキングエリアでは惹かれるソフトクリームはなく、そのまま空港に到着してしまったので、渋々諦めていたのだった。

 そこに現れたのが「陣太鼓ソフト」だった。大納言あずきの中に求肥が入った熊本の代表銘菓「誉の陣太鼓」が丸ごと一個はいったスペシャルソフトクリームである。見た目は少しぼったりとした重みがあるクリームに、マシュマロを潰したようなしわが入り、あずきが混ざっているクリームは、きなり色をしていた。早速購入して、明子に見せたら、

「あの雲はこのソフトクリームだったんだね、そっくりじゃん」

 と言われた。神様は最後まで私達を楽しませてくれたのだった。お土産を買い、ゲートへと向かう。そこで、機内持ち込み荷物の重さのチェックを受けた。明子の荷物を見て、空港スタッフの方は言った。

「これは明らかに重量オーバーですね。でも、お連れ様の荷物がかなり軽いので、大目にみます」

 最後まで明子は笑いを与えてくれた。大好きな明子と駆け巡った九州の旅が終わった。

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