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2022年 光の家庭  作者: ヒトミ
第一部 本然の自分に還る
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親友とのルームシェア

家と留学繋がりでもう一つ思い出深い話をしよう。

 米国に留学して、数か月たった頃、語学学校で仲良くなった亜耶ちゃんという友達と、初めてアパートを借り、二人でルームシェアを始めた時のことだ。

 一か月先に渡米していた彼女は出会った頃、ホームシックに陥っていて、そんな彼女を励まし、そこから話すようになっていった。ミニーマウスやお姫様っぽい女の子らしいものが好きで、大好きな映画の主人公の英語のセリフを何十回も唱え、英語の勉強をしながら主人公になりきる彼女が面白かった。

 私の周りに今までいなかったタイプなので少し不思議だったけれど、女子力が高く、可愛らしい彼女にメイクやネイルを教えてもらいに彼女のホームステイ先に度々行くようになり、学校や将来のこと、恋愛、今までのことなどいつしか何でも話すようになっていた。

 だから、彼女とのルームシェアはとても楽しく始まった。

 部屋ごとにテーマカラーを決めて小物をそろえたり、お気に入りのマグカップでお茶をのんだり、友達と一緒に生活をすることが新鮮だった。

 私たちは学生でお互い節約を心掛けていたから、共通の食費財布というものをつくっていた。その財布を首にさげて、二人でスーパーに行き、支払いを終えたある時、店員がお釣りを間違えて、戻ってくるはずのお札が返されなかったことがあった。私達にとっては大きな額だ。どう計算しても足りないので、私は怒りながら店員に文句を言ったが、

「後で確認して連絡するわ」

 と店員はしれっと答え、私達の事を面倒くさそうに眺めながら、奥の方にひっこんでしまった。

 亜耶ちゃんも怒っていた。仕方なく、その場を後にし、店を出てとぼとぼと駐車場を歩いていたら、さっきの店員がお釣りを持って走ってきた。

 やっぱり店員のミスじゃん……怒りが収まらないまま、私は歩き始め、隣を見た。あっけにとられて、怒りはどこかへいってしまった。

 さっきまで一緒に怒っていた彼女の姿はなく、穏やかに笑顔で店員に向かってごきげんようと言わんばかりに軽やかに大きく手を振っているのだ。彼女の心の広さに脱帽し、そんな彼女の性格に救われた。

 そんなふうに幸せに過ごしていた彼女との生活だったけれど、大きな亀裂が入った時もあった。お互い語学学校の次に通った学校が異なり、彼氏や好きな人が出来て、一緒に時間を過ごすことが少なくなっていた。私も学校の課題が多くてイライラしたり、溝ができてしまった彼女と気まずくて、彼氏の家で時間を過ごしたりもしていた。

 そして、お互いに踏み込めない微妙なピリピリしたムードがしばらく続いたある日、私達は思いっきりぶつかった。お互い感じていた不満や想いをすべてぶちまけた。こらえられなくなった彼女は思わず部屋を飛び出していった。私も後に続いた。

「逃げないでよ……私も悪かったし、今も亜耶ちゃんのことが大好きだよ」

 ストレートで不器用だった。思いっきり泣きながら伝えた私の言葉はアパートの廊下中に響き渡っていた。

 本当にあの時はしんどかった。けれど、あんな体験があったからこそ、彼女と私の絆は深くなった。家族のような大親友と今は言える。

 そんな彼女が学校を一足早く卒業し、次の仕事が決まって、この家を出ていった時には本当に寂しかった。彼女の新しい出発を絶対に笑顔で見送ると心に決め、空港で友人と見送るまでは上手くやったけれど、彼女がゲートに入るなり、こらえていたものがこらえきれなくなって、涙がぽたぽたと落ちてきた。

 大好きな人がいってしまった。

 ガランとした無機質な部屋はお構いなしに私に語りかけてきた。数時間前の空気とは全く違う。涙はここでもとめどなく流れ続けるのだった。

 数日後、パソコンのデスクトップに覚えがないアイコンを見つけて開いてみた。それは彼女からのビデオメッセージだった。たくさんの愛と幸せを彼女はくれた。

 結婚した彼女は遠方にいて、今は時々のやりとりになってしまったけれど、私達の中で今でもあの時の生活は色あせることなくキラキラと輝きを放っているのだった。

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