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2022年 光の家庭  作者: ヒトミ
第二部 日本の陰陽結び
19/26

九州トリップ② 幣立神宮と西都市

 翌日、早朝から農作業のお手伝いをしていた。トマト農家さんの別宅の一間を借りて宿泊したからだった。ちょうど夏のトマトの収穫が終わり、次の作物を植える前の時期だったので、大した作業はしなかったが、それでも土を触りながら、阿蘇の大地のエネルギーを感じられることが嬉しかった。ひと汗かいた後に見た朝の阿蘇山は清々しく素晴らしい眺めだった。

 農作業が終わった後は、宿泊先の女主人が作って下さった朝食に目をときめかせた。豆腐の味噌汁に栗ご飯、卵焼き、焼き鮭、トマト、南京の煮物、ほうれん草のおひたし、漬物二種、梨、トマトいちごジュースの朝定食だ。味噌汁はお手製の味噌、トマトいちごジュースは少し入った酸味と甘さが絶妙で最高だった。ほとんどの食物を作る前に畑から摘み取って、料理を準備してくれたのだそうだ。どれも素材の味が生きていて、一品一品、舌鼓を打って頂いた。

 阿蘇山が広がる風景と自給自足の生活で暮らす女主人家族の方達はかっこよく、素敵で、たくさんの幸せを頂いて、私達は幣立神宮へ向かった。

 熊本県上益城郡山都町大野にある幣立神宮は九州のおへその辺りに位置する神社で、神漏岐命かむろぎのみこと神漏美命かむろみのみこと大宇宙大和神おおとのちおおかみ天御中主大神あめのみなかぬしおおかみ、天照大御神を祀っている。

 薄いオレンジがかった木製の一の鳥居をくぐると、森のような杉並木に入り、急勾配の石段を登っていく。石段の上段には木製の二の鳥居があり、そこを抜けると大きな日の丸が二枚掲げられている拝殿に着く。例祭だったこともあり、参拝に訪れていた人は多かった。参拝時には、宮司さんが大幣おおぬさと鈴で一人一人にお祓いをして下さった。

 三手先入母屋造の本殿の他に、伊勢の内宮や伊勢の外宮、水神宮、健磐龍命たけいわたつのみことの宮、立派な御神木もあった。

 さらに、本殿左手には奥に下っていく道があり、約二百メートル下ると、東水神宮と池もある。

 全ての参拝を終えて、私達は宮崎の方へ向かった。九州のへそと呼ばれる中心から、宮崎県の日向市の方に出て、海沿いを南下する。海沿いの国道にはヤシの木が植わっていて、南国感溢れる景観が続いていた。阿蘇山をはじめとした熊本の緑いっぱいの山道から一転して、真っ青な海が眺められる道になり、ガラッと別世界に入ったようだった。

 いよいよ西都市だ。本に書いてあった、卑弥呼達がいたと言われている場所に今向かっているのかと思うと、心がワクワクした。


 『九州は、四十年ぐらい出雲族に占領されていた。

  そして、卑弥呼は須佐之男との間に三女を儲け、その長女多紀理姫は、

  須佐之男の死後、後を継いだ、大国主との間に二男一女を儲けている。

  そして、大国主は最後に、日向の多紀理姫の許で死んでいる。

  その大国主が、日向で死んだため、あとの政治を卑弥呼が受け継いだ。

  この須佐之男、大国主、卑弥呼(天照大神)、豊受姫と四代にわたる、

  日向、または九州の政治の中心は全部現在の西都市であった。

  この邪馬台国西都が、九州の都として栄えたのは四代約百二十年である。』 

  原田常治『記紀以前の資料による古代日本正史』(同志社、一九七六年)

  五一〇、五一一頁


 宮崎県西都市にある特別史跡西都原古墳群は宮崎県のほぼ中央、一ツ瀬川の近くに位置する場所にあり、その範囲は南北四・二キロメートル、東西二・六キロメートルに及ぶ。三世紀末から七世紀にかけて築造されたこの古墳群には、三百十九基の古墳がある。

 西都原古墳群に着いた時には、既に夕暮れにはいり、辺りは薄暗くなり始めていたので、有名な古墳に絞って見ることにした。

 まずは、男狭穂塚と女狭穂塚だ。男狭穂塚は帆立貝形古墳、墳長は一七六メートル、女狭穂塚は前方後円墳、墳長は一七六・三メートルである。共に陵墓参考地となっており、中には入れないため、遠くから眺めるだけにした。しかし、古墳が大きすぎて、大きな森にしか見えない。古墳に向かって挨拶をして、もう一方の鬼の窟古墳に行ってみた。

 鬼の窟古墳は直径三十六・四メートル、高さ七メートルの円墳である。中央の墳丘の周りには外提があり、古墳内には西都原古墳群内で唯一の横穴式石室がある。外提の階段を上り、墳丘周りを歩いて、最後にお祈りをした。

 そうこうしている内に、あっという間に日は暮れた。夜の古墳群は鬱蒼としていて、少し不気味で怖い。けれども、ここに卑弥呼がいて、古代の人達が集って生きていたんだなぁと思うと、感慨深いものがあった。少しだけお祈りを捧げて、宮崎市内の宿泊先へ向かった。

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