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2022年 光の家庭  作者: ヒトミ
第二部 日本の陰陽結び
11/26

2021年のメッセージ

 二○二一年一月一日、東京のホテル椿山荘のカフェでお茶をしていた。窓からは立派な日本庭園が眺められる場所だった。コロナ禍で年末年始の帰省をしなかった私を見かねて、教会でお世話になっていた野村さんご夫婦が連れてきてくれたのだった。椿山荘の向かいにある東京カテドラル聖マリア大聖堂を見学した後に、一息していたところだった。

「今年は……今年こそは結婚して、家庭を築くんです!」

 私は新年の抱負と決意をご夫婦に伝えた。

「よしっ、じゃあ次は、その願いを伝えにいこう。東京と言えばここだ!」

 信仰にあついご主人が連れて行ってくれた初詣の場所は靖国神社だった。東京都千代田区にある明治以降の英霊を祀った神社である。駐車場を出ると、大村益次郎の大きな銅像が目に入る。幅広い石畳参道を通り、大きな青銅製の鳥居、神門をくぐって境内に入っていくと、檜でできた中門鳥居があり、その先に、薄緑色の屋根に唐破風を持つ入母屋造の拝殿がみえた。コロナ禍でも、参拝者は意外と多く、間隔を空けながら、列に並んだ。

(……なんで、靖国神社なのだろう?……)

 都内に神社はたくさんあるのに、なぜ日本の戦争で亡くなった軍人らを祀る神社を初詣の場所に選んだのだろうと不思議でならなかった。けれども、その答えはすぐにわかった。参拝して、境内を立ち去る頃に、心にストンとはっきりとメッセージが降りてきた。

「……日本の尊厳の回復……」


 そのメッセージを聞いて、その時はまだピンとこなかった。けれども、年初めに入ってくるメッセージはその年の私が向き合うテーマにも繋がってくる。どうやら二○二一年のテーマは日本人として、もしくは日本の地に関することのようだ。

 参拝後、中門鳥居を出て駐車場に向かっていく中で、左側に見える建物を指さしながら、野村婦人が教えてくれた。

「あそこにね、遊就館という戦争の資料や戦没者の遺品を展示している資料館があるの。昔、見に行ったわ。」

 ちらっとその建物を横目にやり、そそくさと車へ向かった。寒かった。もうすっかりと日は落ちて真っ暗になり、より一層寒さを感じるのだった。


 一月十三日、私は靖国神社に再び足を運んでいた。遊就館が気になったのだ。ガラス張りの建物入口に入るとすぐエスカレーターがあった。二階の展示室が最初の順路である。古代から江戸時代までの刀や武具甲冑の展示から始まり、時代の流れに沿って展開されていく。二階は主に、幕末、明治維新から満州事変までの内容が中心で、パノラマ映像やパネル、資料、ご遺品を用いて丁寧に説明されていた。階下へ降りる。

 一階はフロア全体が大東亜戦争についてだ。パネルと共にご遺品やご遺書、資料が展示され、各作戦について解説されている部屋がいくつか続く。そして、ずらっと並んだご遺影のパネルの部屋、大型兵器や艦上爆撃機の展示室へと続く。

 名前や戦死した地が記載されたご遺影のパネルのお部屋では立ち尽くさずにはいられなかった。一人一人凛として映るご遺影を眺め、展示されたご遺書に目を通すと、ぶわっと涙が込み上げてきて、とめどなく流れ続けるのだった。時代の奔流の中で必死に生きた魂たちの涙と想いを受け取って館内を後にした。

 泣きはらした目と気持ちを落ち着かせようと、建物を出たところにあったベンチに座った。外は天気がよい午後の穏やかな一時で、平和のありがたさを改めて感じるのだった。

 ふと、ベンチから顔を上げると、外国人の男性が描かれた石碑が目に入った。

 それはラダビノードパール博士の顕彰碑だった。東京裁判で判事を務めて、裁判官の中で唯一、被告団全員を無罪とする意見書を提出した人である。顕彰碑にはパール博士の肖像と言葉が記されていた。以下、ここに顕彰碑にあったパール博士の言葉を記しておきたい。


 『時が熱狂と偏見とをやわらげた暁には

  また理性が虚偽からその仮面を剥ぎとった暁には

  その時こそ正義の女神はその秤を平衡に保ちながら

  過去の賞罰の多くにそのところを変えることを要求するであろう』

       (遊就館にあるラダビノードパール博士の顕彰碑より抜粋)


 あの時代に公正な目で裁判に関する厖大な史料を調査し、真摯に向き合って下さったパール博士に深い感謝を送ると共に、その言葉を自分の胸に刻んだ。

 この遊就館で受け取った先人達の想いを持って、翌日、友人と予定していた初詣の場所、鹿島神宮へ向かったのだった。

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