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されど神に感謝すべし(結成編)  作者: 近衛モモ
Just The Way You Are
24/40

五人の絆


 兎が五人分の座席を確保していたのは、家族経営の小さなお好み焼き屋さん。


 巨大な鉄板を囲んで座り、後から参加した真昼も合わせて、親睦会の参加者は五人になった。


 すでにその鉄板の上では、具材を混ぜた生地が焼かれ、鰹節が踊っている。


 ソースの良い匂い。


「遅れて参加した椿先輩は、ちゃんと自己紹介からしてくださいよ。 特に瑞埜ちゃんに!」


「はーい。椿 真昼です。二年生です。転入したてで学校のことは全然わかりません。教えてください。昔この街に住んでたことあるんで、優都と仲良しです。」


「好きなものと嫌いなものは?」


「好きなのはゲーム。嫌いなのは運動。」


「典型的なダメ人間っすね。」


「うん。でも仲良くしてね。」


 真昼の雑な自己紹介が終わると、後は各々自由に喋りながら飲食を楽しむ。二次会の始まりだ。


 はじめてお好み焼き屋さんに来た優都は、真昼と兎の間の席に入れて貰って、出来立てのお好み焼きをハフハフ頬張った。


「瑞埜…澄音さん…。うん、『みすてぃ』です!」


「みすてぃって、私ですか?」


「よまちぃとみすてぃで相性ばっちりです!それに、瑞埜さんはミステリアスな感じも持っていらっしゃいますし、名が体を兼ねて、さらにばっちりこです!」


 迷は新たに瑞埜にもアダ名をつけてくれたようだ。


 無事に女子二人は仲良くなれたようで一安心。優都が神であるかどうかはともかく、瑞埜の願いが叶う日はそう遠くないだろう。


 二人でお好み焼きを格子状に切り分けていく。


「ねぇ、椿先輩。あの家で一番念が強いって言ってた男の霊って、退治してくれたんすよね?」


「してないよ。逃げられた後だったし。」


「ええ…逃げられないでくださいよぉ。親父に上げる報告書どうしよっかな…。」


「君の親父さんの持ち家だったの?」


「というか、親父の会社の。不動産やってて…。『事故物件なんで要お祓い』って書いておけばいっか。」


「よければ椿家と提携して、この街の事故物件をクリーンな状態にして販売する有益な土地活用を進めない?」


「うわっ。さらっと営業して来た! でも、ちょっといいかも…。」


 いずれは家業を継ぐ者同士なので、真昼と兎は、互いに仕事の話で盛り上がる。


 自分の皿も空けつつ、真昼は優都の様子を気にしてくれていた。


「優都はちっちゃなお口で一生懸命もぐもぐしてるのかな?」


 遠回しに、食べるのが遅いのでペース配分を気配りしてくれる。


「もぐもぐしてるよ。遅くてごめんな。」


「いや遅くはないけど、これずっとここに置いておくと焦げちゃうから、お皿に乗っけていい? 優都はまだ食べれるかい?」


「四分の一くらいなら食べれる…。」


「じゃあ、ここ優都のね。この半分僕が貰って…。おーい。ウサギ。ここの欠片お前にやるわ。ほれ。食え。」


「あざーす。」


 男子は何も考えずに打ち解けるのも早いです。


 食べ進めていた箸を一度休めて、瑞埜は改めて先輩二人に向き直る。


「先輩方、助けて頂いて本当にありがとうこざいました。」


 ペコリと頭を下げる瑞埜に、


「みすてぃ、オバケ見れた?」


 兎が興味本意に尋ねる。


「それが、自分では全く覚えていなくて。夜中さん…いえ、よまちぃと窓辺で話していた時に、見たような気はしたんですが…。」


 この様子なら未来の兎と出会したであろうことは覚えていないようなので、真昼は一安心だ。


「体はホントに大丈夫? 怪我はないみたいだけど…。」


 心配する優都に瑞埜は笑顔を向ける。


「はい。それは本当に大丈夫です。あの家には、やはり幽霊がいたのですか?」


「男の霊と老婆の霊ね。それ以外は出たり入ったり普通な感じ? 普通の空き家、みたいな。」


 食べながら答える真昼に、マヨかけまくり事案の兎が続ける。


「桜庭先輩の祈りで老婆の霊を鎮めても、その男の霊が居座ってるなら変わんないじゃないすか。」


「変わんないねぇ。でもボランティアで立ち向かう相手じゃないな。正式に依頼でもあるならともかく。」


「折角こんなすごい先輩が二人もいるのに勿体ないっすよぉー…てことで!」


 机をバンと叩いて兎が立ち上がる。


 何か言い出しそうな雰囲気を隠さない。


「みんなで部活を作らないっすか!? 桜庭先輩と一緒に幽霊を研究する部! 略して『桜庭先輩研究部』っす!」


 略したことによって大幅に趣旨が誤解される部活名だ。


「そんなの通るわけ…」


 ないだろ、と優都が言い切る前に、


「そういえば、僕まだ部活も決まってないんだよな…。」


 と真昼が口にする。


「優都と一緒の部活ならなんでもいいと思ってたから、それでいいよ。」


「よまちぃも大賛成です!」


「では、生徒会の方に話を通しておきますね。顧問の先生が着くのは必須条件なので、部の方針に理解を得られる先生を探しておきます。」


「流石みすてぃ、頼もしいっす! 今回一番、霊の存在に近付いたのも、みすてぃだし。部長になってくれてもいいっすよ!」


「すみません、私自身も生徒会執行部の一員で、部を兼任という形になるので…。まだ一年ですし、重要な役員というわけでもないので、大袈裟に動かなければ兼部自体は大丈夫だと思いますが。」


「では、部長はよまちぃが務めさせて頂きます! みすてぃ、後で怒られないように、部の成立の為に名前を貸しているだけだとか、上手く言えばいいんですよ。」


「そんな嘘ついていいんでしょうか?」


「みすてぃはクソ真面目に生きすぎです。」


「く、くそまじめ…?」


 話はどんどん前向きに進んでいく。


 優都はもうお腹がキチキチなので、最後の一口がなかなか食べられなくて、それも言い出せないし、話しにも口を挟めない。


「ほら桜庭先輩、前にROUTEの面白い使い方があるって言ったじゃないすか! グループ会話っていう設定で、部活の仲間だけで喋れるようになるっすよ!」


 と話を振られて、ようやく喋っても大丈夫そうなターンが回ってくるけど、すでに遅い。


 他に喋れるチャンスが無さそうなので、優都は部活の反対を口に出すべきか、食べれないあと一口を兎に押し付けるかで迷った。


「う、うん…、あとで登録する、あの、これもうお腹いっぱいで食べれない…。」


 お好み焼きを押し付けることを優先しました。


「あー。それ俺食べるっす。椿先輩いる?」


「いや、いいよ。お食べ。…はーい。学生証出した。誰かコードくれー。」


「真昼様、よまちぃの登録お願いします! みすてぃも!」


 言われて瑞埜は自分も学生証を取り出す。


 真昼は自分の名前の後に「様」が付いたことに違和感だ。


「あれ…。僕、真昼様に昇格してる。」


 真昼もフェアリーテイルトライアングルに組み込まれたので、迷の本尊に昇格しました。


「なぁ、兎って部活入ってたんじゃなかったのか? 前に誰かと連絡とってたじゃん。」


 最後の一口を押し付けたことで気が軽くなった優都は、余裕が出来たので兎にそう質問した。


 もくもくと上がる湯気で視界がぼんやり白い。まだ夕飯時には早いので人の少ない店内で、兎は拗ねたように口にした。


「誘われてんの断ってたに決まってんじゃないすか…。桜庭先輩とおんなじ部活に入りたかったから。」


「え?」


 嬉しいことを言われて驚く。聞き間違いかと思って聞き返す。なんか最近そんなことの多い優都だ。



 友達ができただけだけど。


 嬉しいのある日々は、加速していく。



「そうだったんだ…。待たせてごめんな?」


 そんなこと露ほども考えが及ばなかった。


「もぉー! そういうとこっすよー!」


 兎さん叫ぶ。でもお店の迷惑にならないよう、声が抑えめだ。



 親睦会に参加したメンバー。


 祓屋の跡取り、椿 真昼。霊媒体質の高校生、桜庭 優都。


 元気いっぱいの後輩たち、稲早 兎と夜中 迷。


 そして神を待つ少女、瑞埜 澄音。



 五人の絆と慌ただしい学園生活がこの先も続くことを、未来からも願う人がいる。




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