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片翼の翼  作者: 七星北斗
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1地上を写す鏡

 天界は退屈だ。娯楽はなく、今日も書類の山を片付けなければならない。


 神の雑用を片付ける、それが天使の仕事だ。


 仕事が嫌だとは感じたことはない。寧ろ光栄に感じている。


 毎朝のコトだが、同僚の天使は書類を見てため息を吐く。


 そのため息を聞くと、自分はまだ頑張れる。そう感じるのだ。


 今日の仕事は昨日よりは少ないな。これなら定時で帰れそうだけど、帰っても暇なんだけどな。


 書類の山と格闘すること二時間。減らない書類の山に同僚の天使は萎れてブツブツと謎の呪文を唱えていた。


 しょうがない、手伝ってやるか。私は同僚の書類の半分を引っ手繰った。


 毎度のことだが、同僚は涙目で感謝を表現した。


 同僚の話によれば、今日は娯楽のない天界に下界の鏡と呼ばれる鏡が発売される日だとか。


 だからどうしても定時で帰りたかったそうだ。昼休みにそんな話を同僚から聞いた。


 下界の世界をその鏡を通して見ることができるそうだ。しかし建物の中までは見ることはできない仕様である。


 娯楽のない天界に、下界の鏡はきっと人気なのだろう。私はその鏡に興味を持ちながらも仕事に専念した。


「よっしゃー、仕事終わったー。うし、定時で帰れる。ベリアルさんも一緒に下界の鏡を買いに行きませんか?」


「いや、私はいいよ。それよりも急いで行かないと売りきれるぞ」


「確かにそうですね。じゃあ、先輩お先に失礼します。お疲れ様です」


「お疲れー」


 後輩は帰り支度を済ませると、天界ゴール堂へ向かって飛んでいった。


 明日の昼休みに下界の鏡の自慢話をするんだろうな。まったくしょうがない奴だ。


 ベリアルは文句を言いながらも、後輩の奇妙奇天烈な話を聞くのが好きだった。


 天界では噂話や神の逸話などが娯楽の一つだ。自分の好きな神の話などをするのが日常である。だが、正直飽きた。


 しかし退屈だな。家に帰る前に今日はどう時間潰しをしようか。


 そうだな。いつものようにあの場所で雲の風景画でも描こうか。


 私は身支度を済ませると、お気に入りのあの場所へ翼を広げ飛び立った。


 ベリアルの翼は、天界で誰の翼が一番美しいのか?討論する際に頻繁に名前が上がるほどの美しさだ。


 秘密のあの場所は景色が美しく、しかし、いつも誰もいない。


 静かで心が落ち着く。ベリアルはいつもの自分だけの場所に降り立つと、鞄からデッサン用紙を取り出した。


 雲と空の境界線。いつもの景色、しかし同じようで同じではない。


 雲の形、空気の匂い。微細に感じる風の向きや強さ。


 絶えず世界は変化している。


 今日も天は、暖かい。


 天使は空に愛されているのだから。

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