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白兎令嬢の取捨選択  作者: 菜っぱ
第一章 大領地の守り子
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7もう勝手に強くなりますから!


 一気に忍時代の記憶を得たり、髪を短くしてしまったり、おばあさまが亡くなったり……。いろんなことが数日のうちに起こったので、いささかわたくしの頭は混乱しています。


 なんだかぐるぐるして何がなんだかわからなくなりつつあるので、ちょっと状況を整理しましょうか。


 わたくしは高熱がきっかけで、真壁忍という女性として別の世界に暮らしていた前世のことを思い出しました。

 前世の世界は、この世界とは全く常識が異なる世界です。国も違えば、文明も、大陸の形も違う、全く別の世界。


 なかなか興味深い世界ですが、今のわたくしはそちらの記憶に全てを引きずられて、この世界で忍になった、という感覚はありません。あくまでも、わたくしはわたくし。今までもこれからも変わらず、リジェットのまま。


 忍は老衰するまで生きましたから、大人の考え方や知識は引っ張り出すことはできるのですけれど、忍に乗っ取られた感じはありません。

 もし、わたくしが生まれた時から、この記憶を持っていたとしたら性格なども引き継いでいたかもしれません。


 ただ、性格というものは暮らしや環境で大きく変化するものです。忍の世界だと、女性は貞淑であれば貞淑てある方が良い、という考えの家で暮らしていましたが、今の世界はそれとも少し違う気質の女性が好まれるのですよね。


 オルブライト家の教育方針は、女児としてそこそこの貞淑さは求められていますが、貴族としての気高さやある種の傲慢さも、それはそれで好ましいという育て方をされていました。


 末娘ということもあり、甘やかされていたところもあるとは思いますが、戦乱も起こりやすいこの国の貴族として、誰かに舐められたら生き残れませんから、有事の際は人を統率するくらい気高さとわがままさがあった方が良い、と教えられてきました。


 そんな経緯もあって、わたくしと忍は同じ者から派生はしていますが、別の人々だという認識を今のわたくし自身は持っています。


 例えて言うならば、事細かく書かれた忍の自伝を、わたくしがどこからでも閲覧できる状況、という感じでしょうか。


 今のわたくしからすると、ちょっとのことで諦めてしまう忍は、あまり好ましい人だとは思えないのですよね。

 とりあえず記憶を見た中で、一番強く思ったのは、忍のような人生は送りたくない、ということなのです。


 忍は自分の人生を自分で決められず、流されるように生きて来たこと後悔して死んだ女性でしたから。

 時代や環境がそれを許さなかった、というのももちろんあると思うのですが、それにしたってもうちょっとやりようがあると思うのですよね……。


 わたくし、忍のことを反面教師にしながら、生きなければならないと思いませんか?

 今回もそんな人生を歩んだら、ノアにもおばあさまにも、顔向けできませんもの。


 わたくしは自分で自分の人生を選んで見せますから!



 翌日からわたくしは剣の自主練時間を増やすことにいたしました。


 というか自主練をするしかなくなってしまったのです。お父様的には、あの日の夕食会を境にわたくしは騎士になることを完全に諦めただろう、と考えているようです。

 実際は余計に火がついただけなんですけど……。

 それから、お父様はわたくしはもともとよその令嬢よりも剣が使えるということもあり、これ以上剣のお稽古は必要ないと判断し、オルブライト領に派遣されていた剣の先生を王都へと帰してしまったのです。


 剣の先生はわたくしには剣の素質があるので、趣味だとしても続けたらどうだ、と言って下さったようですが、またわたくしが戯言を言ったら困るから、と二度と派遣されないように、手続きを踏んでしまったとのこと……。


 ああ! なんということでしょう! 


 朝からそんなことをラマから伝えられて、わたくしは衝撃で、持っていたカップを落としてしまいました。


「ぎゃあ! アンティークのカップが!」


 ラマは顔を真っ青にして割れたカップを見ていましたが、わたくしの心はそれどころではありません。


 今頃、先生は王都で他の貴族の子女たちと楽しく剣を振るっているのでしょう……。

 はあ、なんて羨ましい。


 でもまあ、一人であっても素振りはできますし、やれることはたくさんあるから今のところ大丈夫ですかね……。


 ——中庭に行く前はそう思っていられたのです。


 地獄の淑女教育をちょっぱやで終わらせ、待ちに待った、自由時間。わたくしはスキップをしながら中庭に向かいます。

 いつものように中庭にすみに建てられた小さな武器倉庫から、わたくしの愛用している子供用の剣を探そうとしました。子供用の剣は、お兄様たちも使っていたもので、普通の剣より一回り小さく、わたくしくらいの体格のものが使いやすい代物です。

 倉庫内の一番手前に剣がたくさん立てかけられているスペースがあり、いつもそこに剣を保管しているのです。


 そこをいつものように覗き込むと……、剣がゴッソリなくなっていたのです。


 どうして!? ないっ……ないっ!


 どこを見渡しても剣が見当たりません。


 ——正確には一本だけありました。


 ほぼ、観賞用の剣。お父様が先の大戦で戦利品としてもらってきた大剣です。端っこに忘れ去られたように追いやられていました。


 錆び付いているのに、どこか青銅器を思わせるような質感と細かい装飾が鞘に施されていたので、なんだか子供心に惹かれてしまうところがあるなあ、とたまに目に留めてはいたのですが、今のわたくしにはなんの役にも立ちません。

 なぜならそれは家にある剣の中で一番重く分厚い、子供の私には扱うことができない代物だからです。

 大きさは大人の身長ほどありますし、幅もわたくしの横幅と同じくらいあります。こんなに大きい剣を誰が使うのでしょう……。思わずため息が出てしまいます。


 ——確か、重すぎて誰にも使えないので、お父様も諦めて、倉庫にしまっていたのですよね。


 そんな大剣だけなぜここに残されているのでしょう。もしかしたら、重すぎて運ぶのが面倒になったのかもしれません。だけど、お父様からしてみたら、あの重い剣を振れないならば、騎士を諦めろ、という口実にもなりますよね。


 お父様は何が何でもわたくしが騎士なる道を閉したいようです。むう……意地悪です。


 普通であればここで諦めるのが正解なのでしょうが、わたくしは諦めたくなどございません。

 ——諦めが悪い女? 上等です。


 さてどうすればこの剣を振ることができるでしょうか?

 ……力では叶わなくても何か別の方法がある気がするのですけど。何かいい方法はないでしょうか。

 そうなると情報集めが必要になってきますね。


 午前中の座学をこなした後、剣のお稽古がなくなってしまい、ポッカリと時間が空いてしまったわたくし。そのまま、調べ物をするために屋敷の資料室に向かうことにしました。


 オルブライト家では、家族それぞれの大切な本は各自の部屋で保存しております。しかし自室には意外と書物を保管しておけるスペースがありません。そのため、家族が自室に置き切れない書物を集めておく、書斎兼物置のような部屋が屋敷に一室あるのです。


 使わなくなった本を各自の部屋に置いておくと、盗みを働いてしまう使用人が稀にいるのでそれを防ぐため、という悲しい理由もあるのですが……。



 わたくしは資料室の鍵を開け、中に入ります。

 資料室は入り口から入って右側に本棚があり、左側が物置スペースになっています。本を読めるように小さな机と椅子のセットもあり、ちょっと隠れて時間を潰すにはぴったりな空間です。

 わたくしは入ってすぐに本棚を確認します。


 鎮座する本の背表紙を指でつたい、めぼしいタイトルがないか確認します。

 お母様の刺繍の図案、お父様の領主向けの本、お兄様の騎士物語……。わたくしがもう少し小さい頃に読んでいた、お姫様が出てくる絵本もありました。


 確か囚われたお姫様を王子と騎士が助けに行くお話だったはず。お姫様と王子を狙う悪者を騎士が身を呈して守るシーンがとっても素敵なのです。

 ……わたくしはこの絵本のお姫様より、騎士の方に感情移入していましたが。


 何冊か開いて閉じてを繰り返しながら、情報を精査します。


「お、これは王族が所有する継承物の本ですか」


 ふと開いた本は剣とは関係のない本ですが、興味がある内容だったので目が止まってしまいます。


 ふうん、この国にも忍が暮らしていた日本のように、三種の神器に値するものがあるのですね。

 王家の継承物、と書かれた三つの宝物のうち『反逆者の剣』と呼ばれる項目は絵図が載っておらず、隣国シハンクージャとの大戦時に消失したと書かれていました。


 代々王家に伝わる継承物がなくなったとなると当時は大問題だったのではないでしょうか。

 王の代替わりの際には継承物の中の叡智の王冠だけがあれば問題がないとされているので、今の王はそれのみで継承を行なったようですね。


「うーん。やっぱりこうして本を読むのは大事ですね。いろいろなことを知れますもの」


 その後もいろいろな本をパラパラとめくっては閉じるを繰り返しながら、知識を補完して過ごしました。

 たくさんの本を読み込みながら、知識になりそうなものを探しているうちにわたくしは一冊の本に目をとめます。そこには「初級魔法陣入門」というタイトルが付けられていました。


 魔術! 前世ではファンタジーとして扱われていましたが、この世界には普通に存在しているのですよね!

 今わたくしが生きている世界では、日常生活のいたるところに魔法陣を用いた魔術具が使われていますもの。


 騎士が専門職として成り立っているように、この世界には魔術師が存在しています。


 不思議な力……、魔術。それを自由自在に操る魔術師は、膨大な知識を持った、知の賢人として国をあげて丁重にもてなされています。


 前世ではもちろんなかった未知の領域との出会いに、私は胸を熱くなりました。使えたら便利そうな力ですよね。

 ラマはわたくしに、魔力が少量しかないからほとんど魔法陣を使えないと言っていましたがそれは本当でしょうか?


 わたくしは諦めの悪い女なのです。

 できない、と誰かに言われても、それが本当にできないのか自分で確かめなければ諦めがつきません。


 見つけた本は、あまり使われていない綺麗な状態で保管されていたのでちょっとびっくりしてしまいましたが、誰も使っていないならわたくしが利用した方がいいでしょう。


 信じられないことがあったときはとことん、実験してみるにつきるのです。

 私は好奇心と少しの疑心を抱えて、魔術書を開きました。


 内容を確認してみると、古代の言語といくつかの印を含んだ魔法陣を描くことができれば、魔術は誰でも使えると書かれてあります。


 魔法陣は見るからに複雑。八つの属性を古語で表し、円の中に組み込むことで魔法陣は発動そうですが……。あまりにも要素の組み合わせが難しすぎて、今の知識ではなんの魔法陣なのかが分かりません。でも、学びがいのありそうです。


 わたくしは資料室から本を持ち出し、本を理解できるまで読みこんでみようと決めました。



 それから数日間は中身を理解するのに、時間を使いました。


 わたくしはまず、本の目次から体を強くできるような類の魔法陣を探し、その構造を理解できる重点的にその部分を読み込みます。

 まだ全部は理解できていませんが、なんとなく分かった気がします。わたくしは、自室の机からペンを取り出しました。


 以前剣のお稽古中に怪我をした際、巻いていた包帯のあまりをこっそり机の中の引き出しに仕舞い込んであったので、そちらに一番簡単に描けそうなの魔法陣を描き写しました。


 わたくしは魔法陣もどきが描かれた包帯を手に持ち、中庭にある武器倉庫へと向かいます。早速、魔法陣の様子を確かめてみようと思ったのです。

 そして、自力では持ち上げることもできなかったあの剣の前へと向かいます。


 出来上がった包帯魔法陣をぐるりと腕に巻きつけ、剣の柄をグッと握り締めます。


 __お願い! 魔法陣、力をかして!


 願いを込めながら、力を込めるます。すると剣が地面から浮き上がりました。

 なんと今まで持ち上がりもしなかった剣が振るえるようになっているではありませんか!


「ひやあ! 魔法陣、すごいです!」


 この自作魔法陣、なぜだかはわかりませんが、ほぼ魔力がないわたくしにも使えるではないですか!


「これでやっと、剣のお稽古が再開できます!」


 久しぶりに大好きな剣を持つことができて、大はしゃぎなわたくしはそのまま素振りを始めます。

 うん、重さはありますが、ちゃんと動かせますね。


 慣れたところで、素振りをやめ、狙ったものを切る練習に取り掛かります。

 剣のお稽古に使う道具は片付けられてしまっていたので、仕方なく舞う枯れ葉を切ることにします。


 宙に舞う枯れ葉を剣先で狙い、剣を振るう。その動作を繰り返していると、今までよりも狙いが定めやすくなっていることに気がつきます。


 今まではなんとなくこの辺かしら? と大まかに狙いを定めて、剣を振るっていましたが、葉の位置座標を自分の中で見極め、当たる位置を狙い定めて剣を触れるようになっていたのです。


 そうだ! わたくし、お母様に押しつけらた刺繍の課題をできるだけ早く終わらせられるよう、布地の織目を見てどこに針を刺すか次の動きを計算しながら、刺繍していました。


 あの経験がこんなところで、応用できるなんて!

 ……淑女教育もやっておくものですね。


 意地悪なお母様にちょっと感謝したくなりました。



 翌日、剣のお稽古があった時間に意地悪そうな顔をしてお父様が確認にやってきました。

 きっと私が諦めているとでも思ったのでしょう。ふふふ、残念諦めてなどいません。


 わたくしは自慢げな顔をしてえいやっとお父様の目の前であの重い剣を振ってやりました。


「はあ⁉︎」


 それを目にしたお父様は信じられないもの見たかのように声をあげ、こちらに大股歩きで近づいて来ました。


「お前はあの剣を振っているのか⁉︎ いかにも細づくりなお前が⁉︎ どうやって⁉︎」


 ポカンとしたお父様はアングリと口を開けたままの表情になっています。

 さすがにお父様もわたくしの進化に驚いたようです。サプライズ成功ですね!


「はい、そのままでは振ることができないので魔術を使って体を強化しています」

「魔法陣を……お前は書くことができるのか!」


 お父様が続けて驚愕した表情になりました。——あんなに感情が剥き出しになるお父様を見るのは珍しいですね。


「え?古代文字を読み解き魔方陣を書くことができれば魔法を使えるのでしょう? 学べば使えるのですから使わない手はないでしょう?」


 またもや、お父様は口をアングリと開けて動きません。貴族らしくない表情のお父様、初めて見ました。

 どうしてこんなに驚いているのでしょうか? 何かわたくし、非常識なことでもしてしまったかしら?


「誰にでも描くことができる代物だったら、魔術師はいらんだろう」


 お父様は低い声で言います。


「普通の人は魔法陣を作れないのですか?」


 わたくしの質問にお父様は眉間に谷底のように深い皺を寄せました。


「皆作れないに決まっているだろう。私も魔法陣は使うことはできても、描くことは……あまりできないな。だから魔術師が重宝されるのだろう」


 喩えていうならば、忍の世界のシステムエンジニアみたいな人たちが魔術師にあたるようですね。

 独自技術がないと生産できませんが、生活には必要不可欠なのでその存在が重宝されるようですね。


「しかし驚いたな、お前が魔術を学ぶとは思っていなかった。……図書室にあったあの本は、お前の兄達のために買ったものだったからな。魔術を剣術に取り入れられないかと一時期勉強していたが、三人ともあまりの難易度の高さに諦めていたからな」


 あれはお兄様達の本だったのですね。でも諦めてしまう気持ちもよくわかります。

 魔法陣の構造は一晩で理解できるほど用意なものではなく、ものすごく理解するのに時間がかかりました。


 でも、今のわたくしにはそれ以外、めぼしい手段がなく、やるしかなかったのです。あと単純に、魔術の内容が面白かった、というのもありますが。


「わたくしはただでさえ使えるカードが少ないので、持てる全てのカードをきっただけです」

「大したものだな」


 お父様は素直にわたくしの努力を褒めてくださいます。お父様は基本的には頑なですが、努力したことに対しては素直に褒めてくださるのです。こういった部分があったからこそ、お父様は騎士団長として、慕われていたのでしょう。


 わたくしはお父様のこういうところ好ましく感じてしまいます。子ども用の剣を隠すとか、わたくしの意見を聞かないとか、そんなふうに、どこまで手厳しく扱われても、嫌いになれないのです。


「そうか……。リジェットが魔法陣を描く素質のある子供だとは思っていなかったな……。そうか自分で書くことができれば婚姻の魔法陣も……」

「え?」

「いいや、なんでもない。リジェット、今からでも遅くない。魔術師ならば伯爵家の令嬢がなっても問題ない職業だ。魔術師にならんのか」

「なりません。わたくしはあくまでも、国を守る王家の剣の一員になりたいのです」

「王家の剣に魔術師職があれば良かったのだけどな……。あそこは騎士の集まりだからな」


 お父様はやれやれという様子で、額を手で抑えています。でも、わたくしにとって魔術はあくまでも自分の能力を補う手段なのです。それを生業とする気はありません。


「それよりもお父様。見てください。わたくし手の皮が硬くなってきて、だいぶ剣士らしい手になってきたのですよ」

「淑女がそのようなことを喜ぶものではない」


 お父様の言い切るような強い言葉に少しシュンとしてしまいます。

 わたくしは手の皮が厚くなったことで、騎士に近づいたみたいでとっても嬉しかったのですけども……。


「その情熱が淑女の嗜みに向けられていたならば、お前は素晴らしい令嬢になっただろう。それこそどんな大領地でも立派に職務を全うできる妻君を目指せた。場合によっては王家に連なるものに嫁ぐこともできたかもしれない」


 お父様は心底残念そうな顔をしています。そんな顔したって、わたくしの何かが変わることはないのですけれど。


「お父様はそのようなご令嬢になることをわたくしに求めていらっしゃるのですね。理想を語るのは自由ですがそれはもうわたくしではございませんわ」


 自分でもこんな皮肉が口から出たことにびっくりしました。


「少しほったらかしておくだけで、生意気な口を聞くようになるものだな」


 お父様はそれかな何も言わず黙り込んでしまいました。もしかして、怒ったのでしょうか?

 機嫌を悪くした状態が長引くと、また面倒なことしてくるでしょうね。今度はあの重い剣も隠されてしまうかもしれません。

 心配になってチラリ、とお父様の顔色を伺います。あ、怒っているわけではなさそうです。呆れて声も出ないだけですか。


「少し頭を冷やしなさい、明日はお前と婚約が決まった、エメラージ様がいらっしゃるし、明後日はヨーナスが休暇で騎士団の寮から帰宅する。様々な方向から話を聞いて現実を見るんだな」


 ……エメラージ様。婚約者。

 はあ……。あいつかあ……。


 その名前は聞かなかったことにします。わたくし何も聞いてません。聞いてません。


 そんなことよりも……。


「ヨーナスお兄様が帰って来るのですか!? わたくし騎士学校の話を聞きたいのです! 明後日がとっても楽しみですわ!」

「エメラージ様については無視か……。先が思いやられる」


 ええ、わたくし嫌なものからは完全に目を逸らしますから。

 明日のことは考えずに、明後日のヨーナスお兄様のご帰宅だけを心待ちにしておりますわ!

 うれしさに胸を弾ませる私とは反対に、お父様は頭を抱え、苦いものを噛み締めたような顔をしていました。




大暴走、始まります !

次は 8婚約者を叩きのめします です。

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