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日記、始めてみました。  作者: 小島秋人
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2020/02/27

2020/02/27


 唐突に酸い味の物を口に含みたくなることが間々有る。妊婦でもあるめぇしと自虐してはお愛想に失笑を頂戴するのが常であるのだが、基本的に食に関する欲求には素直に従う事を信条としている。昨日の話ではないが、欲していると言う事は身体に何等かがしかの不足が生じての事なのだろうと熟慮せず納得しているが故である。


 「にしたってコレは無いわ」

 眼前に山と積まれた「UHA味覚糖 シゲキックス」の箱を見下ろして彼が悪態を吐く。

 「別に一気にドカ食いしようってんでも無いんだし構うまいよ」

 定期的に訪れるそんな欲求の度にコンビニに足を運ぶのも億劫とネット通販で衝動買いをした結果が現状である訳なのだが、正直反省材料は多い。最たるは値段のみに目が行き商品個数を熟読しなかった事だが、態々返品しては何のために惜しんだ手間なのかもわからない。今日日菓子の値段も軒並み右肩上がりを続けているのだろう思い込みが有ったが、老舗は良心的な側面も残してるとは知らなんだ。


 「他人事みたいに言っちゃって、どうすんの?」

 「まぁ気長に消費するしかねぇな」

 職場に持ち込んで配る事も考えたが現在お茶請けコーナーには卒業生から送られた御礼品の菓子折りが山と積まれていたことを思い出し断念する。


 「禁煙の予定も無いのに奇しくも口騙しに事欠かなくなっちまったな」

 「それこそいい機会だし暫く煙草は控えたらいいんじゃない?」

 大仰に肩を竦め呆れ顔の彼に此方も同様の表情で返した。心にも無い事を。気の長い自殺は双方の同意で以て続けていると言うのに。それとも


 「長生きして苦しみ喘ぐ俺を見下ろしたいってんなら仰せの通りにしますけど?」

 喧嘩腰で投げつけた言葉にどう返すかは甚だ楽しみで仕様が無い。

 「同じ所に辿り着くまで長い道中楽しみたいってんなら止める気はないんだよ?」

 これは引き分けになるのか、いや恐らくは引け目の分だけ此方が不利だな。そんな時には大抵笑って誤魔化す事にしている。どうせお互い本心から責めようと言う気もないのだ。自分自身に限って言うならば、即断して彼岸に渡ろうとしない事に些少とは言い難い自己嫌悪が募りはするのだが。自責の念も彼が望まないのなら早々に断ち切って黙って泣き寝入るのが正しい未亡人の在り方だろうよ。

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