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日記、始めてみました。  作者: 小島秋人
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2020/02/21

2020/02/21


 昨日の話を自ら蒸し返すのは大概被虐趣味的ではあるものの、上手くすれば弁解の機会とも成り得ようと虚弱な決意で足跡を論じてみたいのが今日の気分だ。結論から言って「浮気はしても本気にはなっていないからセーフ」


 「アウトだよ、ばか」

 聞こえない聞こえない。

 「と…取り敢えず聞くだけ聞きませんか」

 「わざわざ蒸し返すならせめて神経逆撫でないように気を遣ってくれないかな?」

 「押忍…努力します…」


 既に取り直しようもなく沈み込んだ気を何とか持ち上げ穴だらけの風呂敷を広げてみようと思う。諸々慮って黙りを決め込むのは容易だが、変に凝りを後日に残すくらいなら今日中にきっちり怒られておきたい。我ながら何と姑息な事よ。


 とりもなおさず、現状の「思い出に殉じ幻想と生きて思慕と心中」を選択した時点で自分の無実は確定的と言って過言…過言か。とは言え、過日体位の上下を問わず自分の傍らを通り過ぎていった老若男女は、一時羽根を休める渡り鳥が如く枝先に落ち着いた期間は何れも半年に満たず。新たに宿り木を見繕う者も居れば既に安住を手にした者も居り、あれ、無聊ないしは寂寥の間に合わせに使われたのは寧ろ俺の方なんじゃねぇのと。


 「はい、そこまで」


 眼前に迫る彼の顔。成る程良心と言うのはこんな形で自制を促すのかと冷淡な思考が数瞬過る。


 「ちょっと攻撃的すぎ、論点もずれてきてない?」

 「好きに語ると決めてんだ、構いやしめぇ」

 「構えよ」

 真剣な面持ちで睨み付けられる。そうやって時折発する明確な男言葉に知れず痺れさせられている事を君は知りもすまい。日頃は見た目通りに中性的な言葉運びを常としており、それはそれで擽られるものなのだが。


 何にせよ、頭は大概に冷えた。狙っての事なら大したものだ、掌で転がされていると言うのも強ち間違いではない。


 「癇癪持ちも泣き虫も治らないね、別に悪いとは言わないけど」

 「苦労かけるなぁ」

 「良いよ、それも含めて好きなんだから」

 成る程今宵はそうやって泣かせにくるのか。その手は食わぬと奥歯を噛み締めると知覚過敏が肩先まで鈍痛を走らせる。その痛みに気付かされた訳でもないのだろうが、抑々彼に対して斯様に強固に通す意地の必要も無いのだった。図らずも、在りの儘を愛してくれると言質が取れたばかりなのだから。

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