プロローグ
いつも通りの図書室に僕はいた。
図書室はいつもとは違う雰囲気を纏っていた。
僕はカウンターに近づくとカウンターの机上には、何も書かれてない一冊の本が置かれてある。一応、僕は熱心な読書家だと自負している。僕はその本が気になり、手に取った。タイトルも無く、ただ真っ白でページを捲っても、捲っても何も書かれていない。何も書かれていない本に、僕は肩を落とした。
僕は本を閉じ、元の場所に戻す。
ふと僕は、後ろを振り返る。後ろにある本棚にはカウンターの上に置いてあった本と同じ様な本が綺麗に一列に陳列してあった。本の形は様々で大きい辞書の様なものから小さい文庫本の様な本まで並んでいた。
本棚をなぞるように歩いていると一冊だけ色の付いた本が何も書かれていない本の中に窮屈そうに置かれてあった。手に取ってみるがこの本も他の本と同じ様にタイトルが無い。ただ色が付いている。見方を変えて見ると赤が青になったり、青が緑になり、緑になったかと思うと赤に戻る。僕は色が変わる不思議な本が気になり、開く。開いた途端、一枚のしおりが、ひらひらと僕の足元に落ちる。しおりを拾ってみると僕が何故、この図書室がいつもと違うのかが分かった。確かに大小様々で色の無い本、僕だけしかいない図書室、色が見方によって変わる本、これらも違う雰囲気を作り出している物だが決定的に違う物があった。
君がいなかった。
これが決定的に違うものだった。
他の人にしてみれば小さいものかもしれない。でも僕からすれば、決してこの図書室に欠けていけないものだった。
そして僕はこの図書室に君がいないもとに気が付く。
そして僕が熱心な読書家でも無かった。
僕は君がいたから読書が好きになり、君がいたから僕が今ここにいる。
それは、他の人からすれば小さいもの。僕からすれば大きいもの。
止まることの無い時間、その時間の中で死ぬことが大前提で、その生命が朽ちるまで幸せというものを探す僕ら生物。
その幸せを君と分かち合いたかった。君と大きいものを分かち合いたかった。
そんな地球の中で僕は君を愛したかった。
君が何と言おうと僕は君を愛したかった。
嘘で塗り固められた君を。