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月
小林様とのリレー小説「夢はひとりみるものじゃない」から書いています。
「どれだけ食べる気だ?」
「パパだって」
神社の秋祭り、参道に並んだ夜店を父娘で歩くのは何年ぶりだろう。当時と同じく浴衣にした。肩車をしてもらった記憶が蘇る。
露天で綿菓子や焼きそば、たこ焼きなどを買い、神社の先にある公園へ階段を上る。最後の打ち上げ花火を見るには昔からここと決めている。まだ時間も早いから、街を見下ろすベンチに座ることが出来た。
「始まった!」
目前の高さに広がる光の渦を見ながらの夕食。1時間ほどで花火は終わり、観客が帰路についても、よつ葉は立ち上がろうとしなかった。
「いいよ、最後で…」
「暗くなるぞ?」
「ううん、今日はお月様が帰り道を照らしてくれる」
空の主役は優しい光を放つ満月に交代していた。
小林様、こちらにも父娘物語で書くことを快諾してくださりありがとうございました。




