俺が隠キャなのは前世で何か大悪事をやらかしたからに違いない。
俺は中学の頃いじめられていた。
いじめられた原因は俺が小さく女の子みたいだったからだ。
だが中三の受験期の間に背が著しく伸び、身長が170センチまで到達した。そして今日は高校の入学式。体育館での入学式を終え初めてのホームルームを受けているところだ。
「えぇ。みなさん、ご入学おめでとうございます!突然ですが、高校生活を充実するために必要なことはなんだと思いますか?」
担任の藤田先生は30代前半の綺麗な女性だ。身長が高く出るところはしっかり出ていて思わず俺のまだ新品未使用の股間も重力に逆らい上昇してしまった。
(あっぶねぇ、あっぶねぇ、始業式からボッキしてるところを女子生徒に見られたらもう俺の高校生活はジ・エンドだぞ、と自分に言い聞かせなんとか荒ぶる股間を静めることに成功した。)
「んーと、じゃあ出席番号3番大石くん!何だろう?」
先生は出席簿を見て生徒の顔と名前が一致してるのを確かめてから質問をした。
「あ、はい部活を一生懸命やることじゃないでしょうか?」
「部活ね!それも正解だよね!じゃあ次出席番号12番佐藤さん!」
「はい」
返事をしたのは栗色の髪の遊んでそうな子だった。慎ましい胸をお持ちのものの、顔はとても可愛かった。毎朝こんな子と登校できたら楽しいだろうなと思い、脳内で佐藤さんと登校を始めた。
「恋愛だと思います、一生の思い出になるような...」
「恋愛ね!女の子らしくて良いわね。先生にも佐藤さんみたいな時期があったのよねぇ... あの頃に戻りたいわ。」
(先生まだまだいけます!何なら僕と!、と心の中で先生に爆裂ストレートを投げ込んだ。しかし佐藤さんていう子、意外としっかりしているんだなと感心した。)
「先生はね、みんなにお願いがあるの。それは君たちが夢中になれるものを見つけて欲しいということです。大人になってね、何も夢中になった経験がないというのはとても悲しいことなの。だから私は君たちにそんな大人になってほしくはないの。じゃあ次は部活見学になるのでみんな行ってらっしゃい!」
その言葉とともにホームルームは幕を閉じた。
俺は今一人で部活見学をしている。いや正確には同じクラスの男子の集団の後ろにストーカーみたく付いて行っているからぼっちではない。うん。絶対にぼっちではない。あ。目から汗が。
まあ中学の頃にいじめられてわけだからそんなに友達とかすぐにできるわけもなかったと気づいた。
野球やサッカーといった陽キャがやるような部活はできない。初めから俺は運動系の部活に入るつもりはなかった。俺は女子が多そうな吹奏楽部などで女子とキャッキャしたいんだ。とふてくされながらプレハブの校舎の中をぶらぶらしていると
「おい!ばか和也!」
と廊下を大きな胸をぷるぷる震わせた女の子が駆け寄ってきた。彼女は小学せ時代からの幼馴染で家も隣だ。けっっこう可愛く、中学では彼氏もいたらしい。
「ああ、つかさか。よくわかったな」
「そんな入学式の日に暗い後ろ姿をしているのは和也ぐらいっしょ笑」
「なんだとこのやろう。そのおっきなおっぱい揉んじゃうぞ!」
と手で揉むふりをする。
「相変わらずきもいな和也は。で、部活何するか決めた?」
「ああ吹奏楽部にしようかと思ってるよ」
「吹奏楽部?結構強いから練習大変だよ?」
「え。そうなの。えじゃあやめた。帰宅部だわ。」
「諦めるのはや!どうせ女の子目当てなんでしょー本当に和也はダメなんだから」
「うるせ。そういうお前はどうなんだよ。」
「私はサッカー部のマネージャーかな?楽しそうだし。」
「サッカー?お前サッカーなんか興味ないだろ?」
(絶対こいつサッカーのマネジメントじゃなくて、イケメン部員の股間のマネジメント役するだろ。)
「和也、きもいこと考えてる時必ず鼻の穴が大きくなるよね。まあよく部活見学しなね。じゃね!」
さつきを見送った俺は職員室により担任の先生の机に第一希望「帰宅部」と書いた部活申請届けを提出した。
そして、その晩さつきからメールがきた。
「和也、本当に帰宅部にしてないよね?なんか噂だけど帰宅部にすると人間性矯正部っていう変な部活に入れられちゃうらしいよ!」
そのメールを見た俺は
「え?」と天窓から夜空に向かってポツリとつぶやいた。