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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
9/94

九、やっぱりそうなの・・?



そして次の日の朝、三人王子はいつものように電車に乗ってきた。


ああ・・時雨王子の顔を見れないわ・・

とてもじゃないけど・・見れない・・

横を見ると、紬と美琴も王子たちから視線を逸らしていた。


「今日の体育は、嫌でありんすな~」

「私は体育は好きやで」

「私、この体格でありんしょ・・走るのしんどいでありんすよ」

「確かにそうやな。でも走ったらダイエットになるやん」


紬・・美琴・・普段、そんな話しないじゃん・・

わざとらし過ぎるでしょ・・


「翔、ゆうべさあ、和樹がさ~、また俺の布団に入ってきやがって。こいつ寝ぼけたらすぐに間違うのな」

「あはは、相変わらずなんだね~」

「健人くん、きみだってこの間、間違えたじゃないか」


三人王子の会話に聞き耳を立てていた私たちは、思わず顔を見合わせ絶句していた。


「なんと・・公の場で行為を赤裸々に・・言葉を失うでありんす・・」


いや・・行為って・・そこまでは言ってないんじゃ・・


「すごいな・・布団とか具体的なこと言い過ぎちゃう?」


いやまあ・・確かに布団なんて・・ちょっとびっくり・・

そして翔王子の意味深な発言・・

「相変わらず」と・・

ってことは・・やっぱりそうなんだわ・・


私が時雨王子を見ていると、目が合った。

きゃあ~~~!素敵いぃぃ~~!

でもっ・・時雨王子は・・違うのよね・・ダメなのよね・・


「お・・おはようございます・・」

「おう」

「き・・今日もいい天気ですね・・」

「そだな」

「かっ・・和樹王子とは・・」


私がそう言いかけたら、紬が私の腕を引っ張った。


「タブーに踏み込んだらダメでありんすよ・・」

「え・・」

「小春・・なにを訊くつもりなん・・」

「いや・・別に・・」


「なんだよ、和樹がどうかしたのか」


時雨王子は私にそう言った。


「いや・・あの~・・」

「小春はちょっと、体調が悪いでありんして・・」


紬が出まかせを言った。


「そうなのか。風邪か?」

「いや、そうじゃなくて・・悪夢を見たでありんすな・・小春」

「えっ・・」


紬・・なにを言ってるの・・?


「ふーん」


時雨王子は全く興味を示さなかった。


キキーーーッ


そこで電車が急停車した。

立っていた乗客は倒れそうになったが、実際には倒れる人はいなかった。

あああ~~びっくりした。


時雨王子を見ると、和樹王子の身体を支えて、いわば抱きしめる形になっていた。

ぎゃあ~~~!


「和樹、大丈夫か」

「うん。平気。ありがとう」


二人はお互いの顔を見つめ合って、そう言った。

紬と美琴を見ると、唖然としていた。


「ダメでありんす・・変な想像が・・頭を駆け巡るでござんす・・えっ・・いや、ありんす・・」


うわあ・・紬、言い間違えてるし・・


「しかし・・絵になることは絵になるな・・。やっぱりイケメンって得やな~」

「えっ・・美琴・・なに言ってるの・・」

「これが汚いおっさんやったら、私、吐きそうになるけどさぁ・・」

「ち・・ちょっと待って。無いって・・無いって・・」

「ふーん・・なるほどなぁ・・」


美琴は何かを考えている風だった。

なるほど・・って・・どういう意味よ・・



「私さ、もう翔王子のことは諦めるわ」


駅を出たところで、美琴がいきなりそう言った。


「えっ・・美琴、どうしたの?」

「翔王子もいいんやけどな・・やっぱりあの二人やで」

「なにを言ってるでありんすか・・」

「いや・・ほんまにあの二人がそうなんか、確かめたいねん」

「えっ・・マジっ?」

「それを確かめて、どうするでありんすか」

「だってさぁ~・・絵になるやん・・」


げっ・・ひょっとして・・美琴って腐女子??


「美琴・・その道へ行くでありんすか・・」

「その道・・って。その筋の人みたいに言いなや」

「美琴・・BLに興味があるの・・?」

「いや・・興味っちゅうか・・これは芸術やと思うねん」

「芸術?」

「美しいものを美しいと感じる・・これが芸術の真髄やん・・」


いやいや・・それを腐女子って言うんだけど・・

美琴・・時雨王子と和樹王子を見て・・新たな扉が開いたのね・・


「小春はどうなん?」

「え・・どうって・・」

「時雨王子と和樹王子の真相を確かめたないん?」

「いや・・私はどっちかって言うと・・知りたくない派なんだけど・・」

「紬はどうなん?」

「私でありんすか・・まあ・・確かめたくないと言えば嘘になるでありんす・・」

「げ~~。二人とも、なに言ってんのよ・・」

「私は、決定的瞬間を見たいわぁ・・それってええやん・・」

「やめて~~!ってか・・美琴、お願い、戻って来て!」

「戻る・・?そんなアホな・・」


ダメだ・・美琴・・完全にイッちゃってる・・

紬もなんか変なこと言ってるし・・


「あっ!そうでありんす」

「なっ・・なにっ?」

「若い二人は・・休日になると、きっとデートするに違いないでありんすよ・・」

「若い二人って・・なに年寄り臭いこと言ってんのよ。私たち高二でしょ。年下じゃない」

「今度の日曜日がチャンスでありんすな・・」

「それ、ええやん・・」

「ちょ・・ちょっと待って。どうするつもりなの?」

「どうするって・・そりゃ・・みなまで言わなくてもわかるでありんしょ・・」

「それ、ええやん・・」

「美琴!美琴ってば!」


私は美琴の身体をゆすった。


「なに?」

「美琴、ええやん・・ばっかり言って・・。しっかりしてよ!」

「しっかりしてるやん」

「してない!美琴、どっか行ってる!」

「いくら小春でも、私の脳内まで邪魔することはできひんで・・」

「そうでありんすよ、小春。想像とはイメージの世界。イメージを膨らますことによって、脳が活性化されるでありんすよ」

「なに言ってるの・・」

「つまり・・美琴は誰にも止められないってことでありんす」

「え・・説明になってないんだけど・・」



それからあっという間に、日曜日がきた。

私たちは朝から、時雨王子と和樹王子のアパートを張っている。

なに~~これ、マジでストーカーか、刑事の張り込みじゃない~~・・


美琴は双眼鏡とか・・準備してるし・・

ちょっとぉぉ~~・・あり得ないんですけど!


「あっ!出てくるで!」


双眼鏡をのぞいている美琴が叫んだ。


「えっ・・」

「玄関が開くで・・」


すると美琴の言う通り、時雨王子と和樹王子が出てきた。

きゃあ~~~!私服も素敵ぃぃ~~!


「出かけるでありんすな・・」

「よしっ・・後をつけるで・・」


そして私たちは王子たちにばれないよう・・後をつけた。


「ねぇ・・翔王子はいないね・・」

「そうでありんすな・・やはりでありんす・・」

「な・・なによっ・・」

「翔王子がいたら、事を始められないでありんしょ・・」

「あ・・そうか・・って!事ってなによ、事って!」

「小春・・まだまだ子供でありんすな・・」


なによ~~・・それくらいわかるわよ・・

でも・・なんだか、未だに信じられないんだけどなぁ・・


「あっ・・バスに乗るみたいやで」

「え・・そうなんだ・・」

「バスに乗って・・人気(ひとけ)のないところへ行くでありんすか・・」

「私らも乗らなあかんで」

「えぇ~~・・でも、絶対にバレるよ・・」

「あっ・・小春。あんた小さいから、あんただけ乗り」

「えっ!」

「それで、下車したバス停を電話で教えて」

「えぇ~~・・美琴と紬はどうするの?」

「私らは次のバスで追いかけるわ」

「うん。それは名案でありんすな」

「そ・・そんなあ~~・・私一人なの・・?」

「大丈夫やって。小さい身体、今、活かさずしていつ活かすん?」

「今でしょ!で、ありんすな」

「ひぃぃ~~・・」


こうして私は王子たちが乗るバスに、同乗することになった。


「幸い・・人がたくさん並んでるやん。絶対にバレへんって」

「わ・・わかった・・」


そして私は列の最後尾に並び、小さい身体を更に小さくしていた。

ほどなくしてバスが到着し、私は一番最後に乗った。

どうか・・バレませんように・・


するとバスは十分くらい走ったところで、「U公園墓地前」に到着し、王子たちは下車した。

私も慌てて、下車した。

幸い王子たちにはバレずに済んだ。


「もしもし」

「あ、小春か。で、どこなん?」

「えっと、U公園墓地前」

「なんやとぉぉ~~!墓地かいな・・」

「早く来て!」

「わかった。五分後のバスに乗るから、待っててな」


待つって言っても・・王子たち・・歩いて行ったしな・・

後をつけないと見失うよね・・


私は少しずつ後をつけて行った。

すると王子たちは墓地の中へ入って行った。

げ~~~・・墓地でなにする気なの・・

やっぱり・・人のいないところで・・「なに」を・・

いやああぁぁぁ~~~!

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