三、ありんす
うおおおぉぉぉ~~・・
さっき起こったことって、夢じゃないよね・・?
王子さまがぁぁ~~、たけちゃん王子さまがあぁぁ~~
私に「おはよ」とニッコリほほ笑んで・・
そして「今度は大声出せよ」って・・「バカ、いま大声出してどうすんだよ」って・・
「小春・・小春って!」
「え・・あ・・なにっ?美琴」
「ぼ~っとしてからに。ま、気持ちはわかるけどな」
「だってぇ~~たけちゃん王子・・「おはよ」って・・」
「よかったやん。笑ってたんかって、誤解やったしな」
「そうなのよ~~」
「大事なのは今後でありんす」
「え・・」
「今日のチャンスを、どう活かすかでありんすよ」
「そうなんだよね・・」
私たち三人は、駅を出て学校へ向かっていた。
「美琴と紬はどうなのよ」
「あまりのことに、目を合わせすらでけんかったわ」
「私も同じでありんす」
「まさか、たけちゃん王子が話しかけてくるとは、意外やったわ」
「明日も話しかけてくれると思う?」
「いや、こっちから話しかけるべきでありんしょ」
「だよね・・」
「まず、挨拶をするでありんす」
「そうそう。それが当たり前になったら、その時点で友達やん」
「だよね~~!」
「私らかて、小春のこと言うてられへんで。紬」
「そうでありんすな。私も頑張るでありんす」
私は家へ帰り、明日どうやって話をしようかと考えていた。
うーん・・まずは挨拶だよね。
元気に「おはよう!」って言えばいいんだよね。
問題はその後だ・・
挨拶だけで終わっちゃったら、なんか気まずいもんなあ・・
趣味とか訊いてみる・・?
いや・・早いか・・
好きなアイドルとか・・
あっ・・家族構成とか・・?
いやいや・・まだ付き合ってもいないのに、家族構成なんて早すぎるよね・・
って・・私ってたけちゃん王子と付き合えるのかな・・
ヤダ~~きゃ~~
はあ・・たけちゃん王子とデート出来たら、幸せだろうなあ・・
「小春~~!ご飯出来たよ!下りてらっしゃい」
階段の下で母親が私を呼んだ。
「はあ~~い。いま行く~~」
私は階段を下り、ダイニングの椅子に座った。
「お父さん、今日も遅いの?」
「うん、残業よ」
「大変だね」
「ちょっと小春、運ぶの手伝って」
母は向こうを向いたまま、お味噌汁を椀に注いでいた。
私は母親似だ。
母も小柄で細いのだが、超ブスだ。
歯は私より出ている。
しかし目だけはクリクリと大きく、とても惜しいのだ。
だからマスクをかけると、とてもかわいいのだ。
父の目は垂れててダンゴ鼻。
私は両親の悪いところを取ってしまったのだ。
「お母さんたちってさ、どっちから告ったの?」
「え・・なによそれ」
「そんな話、聞いたことないし」
「さあねぇ・・どっちからだったかな・・忘れちゃったよ」
「お母さんが好きになったの?」
「まさか。お父さんに決まってるじゃない」
「だったら告られたんじゃん」
「まあ・・そうなるかな・・」
母は照れくさそうに言った。
忘れたとか言ってるけど、やっぱり嬉しいんだな・・
「なによ、あんた。好きな人でもできたの?」
「まっ・・まっさか~~」
「あはは、あんたはわかりやすいねぇ」
「ち・・違うって・・」
「まあ、いいじゃない。年頃なんだもん」
「だから・・違うんだってば・・」
「もし付き合ったりしたら、連れて来なさいね」
「げっ・・あり得ないって・・」
たけちゃん王子を連れてきたら・・お母さんひっくり返って驚くだろうな・・
あんなイケメン王子・・いないもんなあ・・
え・・待てよ・・
たけちゃん王子・・彼女いるんじゃないの・・?
絶対、女子は放っとかないって!
ぐわあ~~・・そこ、忘れてた。
そうだよ・・絶対に彼女いるって・・
私はそう思うと、急に身体の力が抜けてきた。
「小春。なにやってんの。食べなさい」
「はぁ~い・・」
そして翌日の朝、私たちはいつものように電車を待っていた。
「ねぇ・・私、考えたんだけどさ・・。たけちゃん王子、彼女いるんじゃないかな・・」
「ああ、それ禁句な。そんなこと考えだしたらなんもでけへんがな」
「そうでありんすよ~。私たちにとって彼女がいるとかいないとか、そういう以前の問題でありんすよ?」
「え・・どういう意味よ」
「最初の一歩が肝心でありんす。どうやってきっかけを掴むか!そこが第一のハードルでありんす」
「そうなんだけどぉ・・」
「小春はあれこれ考えないこと。まずは友達になることからやん」
「美琴と紬だってそうじゃん」
「当然やがな」
「そうでありんす」
そして電車が入ってきて、私たちは乗った。
次の駅かぁぁぁ~~・・
はあ~~・・昨日の今日だし・・
挨拶くらいはいいよね・・
そして電車は次の駅に到着した。
わあ~~・・来たぁぁぁ~~・・・
私はたけちゃん王子を見つめた。
こっち向いて・・たけちゃん王子・・
だけど今日は向いてくれない・・
よし・・私から声をかけてみるか・・
「お・・おはよう・・」
私は小さな声で挨拶した。
「あ・・おはよ」
たけちゃん王子は私を見て、そう言ってくれた。
「い・・今から・・学校ですか・・」
「は?なに言ってんだよ」
「いや・・毎朝・・大変ですね・・」
「別に」
ひぃぃ~~今日は冷たいのねぇぇ~~・・
「別に」だって・・。
なんと返せばいいんだぁぁ~~・・
「きみたちも、いつもこの時間だよね」
背が低めの王子がそう言ってきた。
うわああ~~どうしたらいいの・・
「そうそう。私らいつもこの時間ですねん」
すかさず美琴が話に入ってきた。
そ・・そうか・・美琴のお気に入りの王子だもんね・・
でも・・美琴の方が背が高いし・・
いや・・ちょっと高いだけか・・
「そうなんだね~。混んでるから大変だよね」
きゃ~~この王子さま、かわいい~~。
で・・やっさし~~~!
「そ・・そうなんですわ~。もうこないだなんか、痴漢が出たり・・」
「ああ・・あれ大変だったよね」
「まったく、嫌ですよねぇ・・スケベジジイには、かないませんわ!」
うわあ~~美琴ぉぉ~~
もうちょっと・・女子らしくっていうか・・それじゃあかんがな・・
王子は、明らかに引いていた。
「翔・・」
たけちゃん王子がそう言った。
おおお・・この人は翔っていう名前なんだ・・
翔王子かああぁぁ~~
かわいい!!
「なに、たけちゃん」
「今度の文化祭さ、俺ら、なにすんだっけ」
「えっと・・和樹くん」
「ん・・?なに?」
おおおぉぉぅぅ~~・・もう一人の王子は和樹って名前なんだぁ~~
和樹王子~~~!もう~~素敵っっ!!
「屋台だったよね、僕たち」
「うん。そうだよ」
和樹王子はニコッと微笑んだ。
きゃあ~~なんて綺麗な笑顔なのぉぉ~~・・
「そ・・そうでありんすか・・」
紬は和樹王子に向かってそう言った。
「え・・」
和樹王子も明らかに引いていた。
「文化祭は、いつでありんすか・・」
「え・・えっと・・今月末だけど・・」
「そうでありんすか~~!」
「朝からうるさいぞ!」
そこでサラリーマン風の人に怒鳴られた。
「ありんす、ありんすって、うるさいよ!」
「ああ・・すみませんでありんした」
そこで車内は爆笑になった。
ひぃぃ~~・・また笑われてる・・
「ったく・・花魁かよ」
その男性がそう言った。
「そうでありんす。私、花魁が好きでありんす」
「はいはい。好きになるのは勝手だけど、車内では静かに」
「はい・・」
三人の王子さまも、当然のように笑っていた。
これは・・よい笑いなの・・?
それともダメな笑いなの・・?




