表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
21/94

二十一、次の約束?



「飯でも食うか?」


私たちは遊びを堪能し、気がつくとお昼もとっくに過ぎていた。


「そうですね。時雨さん、なにが好きですか?」

「ハンバーガーにしねぇ?」

「はい!」


そして私たちは、園内にあるバーガーショップへ行き、ハンバーガーとフライドポテトとコーラを注文し、テーブルに着いた。


「遊園地に来るとわかってたら、私、お弁当作ってきたのに」

「弁当さ、俺って毎日、自分で作ってんだぜ」

「わあ~、すごいですね」

「別にすごくねぇし」

「そうですかねぇ~、すごい思いますよ」

「そうかー?俺にとっちゃ普通のことだよ」

「時雨さんの作ったお弁当、食べてみたいです」

「はっ。マジかよ。あんなクソ不味いのをかよ」

「好きな人が作ったお弁当なんて、不味いはずがありません」

「え・・」


ぎゃっ・・私ってなにを言ってるのかしら・・


「お・・お前さ、お前も弁当作るのかよ」


なんだか時雨王子・・ちょっと変・・?


「いつもは母が作ってくれるのですが、デートの時は私が作るって決めてるんです」

「そ・・そうかよ・・」

「今日は、そのチャンスだったのにな・・」

「っんなもん、いつでも作ればいいじゃねぇか」

「そうですかねぇ。自分のために作ってもなぁ・・」

「あのさ・・」

「なんですか?」

「いや・・その・・さっきは、ありがとな」

「え・・」

「ジェットコースターでよ・・」

「ああ~~、いえ~」

「俺さ、親戚と遊園地行ったっつっただろ」

「はい」

「そん時・・初めてジェットコースターに乗って、すごく怖かったんだ。でもな、そん時、隣には親戚のババアが座っててよ。俺が怖がってるのを見て笑いやがったんだ」

「え・・」


そんなことがあったんだ・・

親戚のおばさんに、冷たくされたのね・・


「あれでトラウマになってよ・・」

「そうだったんですね・・。だから怖かったんですね」

「まあ・・な・・」

「そんなことも知らずに・・私ったら・・すみません」

「お前、関係ねぇじゃん」

「はい・・」

「でも、手を握ってくれて、俺、ちょっと安心した・・」

「・・・」

「ありがと」


時雨王子は恥ずかしそうに言った。


「時雨さん」

「なんだよ」

「私でよかったら、いつでも一緒に乗りますから!」

「え・・」

「ジェットコースターって、ほんとは楽しい乗り物なんです。だから時雨さんにも楽しんでもらいたいです」

「うん・・」

「笑って乗りたいですよね」

「んじゃ、お前はお化け屋敷を楽しめよ」

「えええ~~~!それは無理無理!絶対に無理~~!」

「あはは。お前、めっちゃ叫んでたもんな」

「だってほんとに怖いんですから~~!」

「俺が手を握っててもか・・?」


え・・

今の・・どういうこと・・?

どういう意味なの・・


「時雨さん・・今のって・・」

「ほら~ごちゃごちゃ言ってねぇで、さっさと食えよ」

「え・・?あ・・はい・・」


今のって・・今のって・・

また遊園地へ行こうってことよね・・?

私・・勘違いしてないよね・・

ダメだ・・嬉しくて叫びそう・・

きゃあ~~~~って言いたい!

またデートできるんだよね~~~~!?


これって夢・・?

夢じゃないよね・・?

現実だよね・・


私は自分の頬をつねってみた。

イダダダダ・・


「はっ、お前、なにやってんだよ」

「え・・いや・・その・・夢じゃないかと・・」

「あはは。バカじゃねぇのか」

「あのっ!今度はお弁当作ってきます!」

「ああ」


ああって言ったよね・・言ったよね~~~!

きゃあ~~~!もう死んでもいい!

あああ~~・・諦めなくてよかった!

また時雨王子とデートができるぅぅぅ~~~!


それから私たちは食事を終え、園内を歩いていた。

すると、周りの人が私たちを見て、なにかヒソヒソと話していた。


時雨王子のイケメンぶりを、話してるに違いないわ・・

で・・横にいるのがブスの私・・

不釣り合いなカップルだと思ってるんだろうな・・


「・・ねぇ・・私もそう思ったわ・・。あんなのありなの?」

「あの男子・・物好きよねぇ・・」

「そうそう・・世の中、もっとかわいい子、いくらでもいるのにね」


女子の集団が、そう話しているのが聞こえた。

やっぱりだ・・

きっと時雨王子にも聞こえてるはず・・

私は思わず下を向いてしまった。


「お前、顔を上げろよ」

「え・・」

「下を向くなっつってんだよ」

「は・・はい・・」


それでも私は、顔を上げられなかった。


「んでさ・・浴衣なんて着ちゃって。似合ってると思ってるのかしらね」

「あーあ。もったいないわ。私が代わりたいくらいだわ」

「ほんとよねー。鏡を見なさいって感じよねー」


私はすぐにでも逃げたい心境にかられた。

なんだか・・自分が情けない・・

時雨王子に申し訳ない・・


「小春。あっちへ行こうぜ」


そう言って時雨王子は私の手を引っ張り、女子たちと離れたところへ歩いて行った。

今・・小春って言った・・?

薄柿じゃなくて・・小春って・・


「あの・・」

「っんだよ」

「その・・小春って・・」

「はっ?お前の名前、小春ってんだろ」

「そ・・そうですけど・・」

「なんか問題でもあんのか」

「いえ・・ない・・です・・」

「でさ。人がなにを言おうが、堂々としてろよ」

「・・・」

「ぜってー下を向くな」

「・・・」

「わかったか!」

「・・・」


時雨王子とデートできるのは、ほんとに、めちゃくちゃ、死にそうなくらい嬉しいけど・・

周りの人の目は・・着いて回るのよね・・

気にしたくないけど・・やっぱり気になる・・

お洒落したって・・顔は隠せないもん・・


「俺は、お前がそんなだと、今後はもう会わねぇからな」

「えっっ!」

「っんな、下を向いて歩くようなやつと一緒にいても楽しくねぇからな」

「・・・」

「もう俺は、二度と下を向くなって言わねぇからな」

「・・・」

「わかったか!」

「は・・はい・・」


そうだよね・・

顔を上げようが・・下を向こうが・・私であることに変わりはない・・

それなら・・顔を上げる方がいいに決まってる・・

なにより・・時雨王子に幻滅してほしくない・・

一緒にいて、楽しいと思ってもらいたい・・


「でさ、小春」

「はい・・?」

「またお化け屋敷入る?」

「げ~~~!嫌ですぅぅ~~!無理無理っ!」

「あははは」

「じゃあ、ジェットコースターに乗りますか?」

「いや・・それは・・」

「あははは」

「てめぇ・・笑いやがったな!」

「時雨さんだって笑ったじゃないですか~~」

「くそっ・・ぜってー克服してやる!」

「おお~~言いましたね!約束ですよ!」

「じゃ、お前もな。お化け屋敷」

「わ・・わっかりましたよ・・」

「あはは~こりゃ楽しみだぜ」

「なんですかぁ~もう~」


そうよね・・

こうやって普通に話せばいいのよ。

ありのままの自分でいいじゃない!

時雨王子も笑ってるし、それで十分よね。


ほどなくして私たちは遊園地を後にした。


「時雨さん、今日はとても楽しかったです。本当にありがとうございました」

「俺も楽しかったよ。ありがとな」

「あの・・よかったら携帯の番号を・・教えてくれませんか」

「うん」


それから私たちは互いの番号を教え合った。


「んじゃ、また連絡すっから」

「はい!私も連絡しますね!」

「気をつけて帰れよ」

「はい。時雨さんも」


そして私たちは別れた。


ああ~~・・なんて幸せな一日だったんだろう・・

こんな日が来るなんて・・思いもしなかった・・

そして、また会えるなんて・・

神さま・・お願いします・・

もう少し・・私に夢を見させてください・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ