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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
19/94

十九、ぎこちない二人



「あの・・」


私は時雨王子の少し後ろを歩きながら、そう声をかけた。


「なんだよ」


時雨王子は立ち止まり、振り向いてそう言った。


「私・・その・・すみませんでした・・」

「・・・」

「ほんとに悪かったと反省してます・・」

「もういいよ・・」

「え・・ほんとですか?許してもらえるのですか・・」

「ああ・・」

「よ・・よかった・・よかった・・」


私は時雨王子が許してくれたことで、急に体の力が抜け、その場にへたり込んだ。


「お前、こんなところで座ってんじゃねぇよ」

「あ・・はい・・すみません・・」

「さっさと立てよ」


そう言って時雨王子は、私に手を差し伸べてくれた。

ぎゃあ~~~!王子の手がっっ!時雨王子の手があ~~~!

私はドキドキしながら、時雨王子の手に触れた。

きゃああああああ~~~~!

大きい手!しかも温かい!


時雨王子は手を握り、私を立たせた。


「ありがとうございます・・」


私が立つと、時雨王子はすぐに手を離した。


「ちゃんと歩けよ」

「はい・・歩きます」

「つか・・お前、なんだよ、その格好」

「え・・」


ううっ・・やっぱり指摘された・・

変だと思ってるんだわ・・


「ゆ・・浴衣もいいかなぁ~~・・なんて・・。でもっ!変ですよね。似合ってないですよね!あははは」

「なに笑ってんだよ」

「いえ・・別に・・」

「いいんじゃねーの」

「え・・」


いいんじゃねーの・・ってことは・・

とりあえず、よかったってことよね・・

よかった!やったーー!


「あのさぁ・・」

「はい・・?」

「今日は、ほんとは翔と遊園地へ行くはずだったんだよ」

「え・・」

「これ」


そう言って時雨王子は、遊園地の入場券を私に見せた。


「あ・・」

「んで、お前、どうすんの」

「え・・なにを・・ですか・・」

「行くのか、行かねぇのかって訊いてんだよ」


えええええ~~~~!

時雨王子とぉぉぉ~~~、時雨王子とぉぉぉ~~~ゆ!遊園地っっっ!

きゃあ~~~~行きたい!行きたいですぅぅぅ~~!


「あのっ!行きます!行きたいですっ!」


こうして私は、時雨王子と遊園地へ行くことになった。

時雨王子・・「話を聞くだけだぞ」って言ってたのに・・遊園地へ連れて行ってくれるなんて・・

やっぱり・・優しいな・・


「俺、なんかおかしいと思ったんだよな」

「え・・」

「このチケットさ、翔が用意してくれたんだけど、二枚ってのが変だと思ったんだよ」

「・・・」

「ふつーは、三枚か四枚のはずなのによ」

「そうなんですか・・」

「和樹と由名見も誘うはずなんだよ。翔ならぜってーそうする」

「由名見・・」

「ああ、由名見って和樹の彼女な」

「ああ・・」


文化祭で会った静香さんっていう、あのかわいい女子のことかな・・


「それが二人で行こうって・・変だと思ったんだよな」

「な・・なるほど・・」

「こういうことだったんだよ。ったく・・翔のやつ、後で覚えてやがれ」

「なんか・・私で・・すみません・・」

「はあ?なんだよ、それ」

「いえ・・その・・私なんかで申し訳ないというか・・」

「っんだよ、申し訳ないって」

「だって・・」

「あのな!もう行くと決めたんだよ!申し訳ないって思う方が失礼だと思わねぇのか」

「・・・」

「そんなだったら、俺、行かねぇし」

「あっ!すみません!私・・ほんとは死にそうなくらい嬉しいんです!申し訳ないなんて思いません!」

「だったら普通にしてろよ」

「はい・・」


そうね・・

もう行くと決めたんだもん・・

堂々と・・デートしなくちゃね!


それにしても翔王子・・チケットまで用意してくれたんだな・・

ほんと優しい人だなぁ・・


それから私たちは遊園地に到着し、まずは何に乗ろうかと考えていた。


「お前、苦手なもんとかあんの?」

「うーんと・・特には・・」

「へぇー、ジェットコースターとかもいけるわけ?」

「はい。全然、平気です」

「マジかよ・・」


時雨王子は少し驚いていた。


「むしろ好きっていうか・・」

「へぇー」

「時雨さんはどうですか?」

「っんなもん、平気に決まってんだろ」

「そうですか!よかった~~」

「でも、それ、後な」

「はい!楽しみは後の方がいいですよね!」


それから私たちは、まず、コーヒーカップに乗ることにした。


「俺さぁ・・実は遊園地なんて、殆ど行ったことがねぇんだよ」

「え・・そうなんですか?」

「俺、親に捨てられたから、家族で遊園地なんて行ったことねぇよ」

「え・・」


時雨王子・・親に捨てられたの・・?

なんでっ・・どうして・・

でも・・そんなこと訊いちゃダメよね・・


「親戚の家族と行ったことはあるけどさ。でも全然、楽しくなんかなかったぜ」

「そうなんですか・・」


なんか複雑そう・・

色々あったのかな・・


「ほら、乗るぞ」


時雨王子がそう言って、私たちはコーヒーカップに乗った。


「これってさ、グルグル回すんだろ?」


時雨王子は手すりを握ってそう言った。


「はい。これを回すと、カップが余計に回るんですよ」

「らしいな」


台が回り始めると、時雨王子は手すりを思いっ切り回しだした。

ひぃ~~~!ちょ・・ちょっと回し過ぎじゃ・・

げぇ~~~・・吐きそうになってきた・・


「あははは、面白れぇ~~」


時雨王子は私を見もせずに、一人で楽しんでいた。


「あの・・あの・・」

「なんだよ」

「き・・気持ち悪いです・・」

「あははは、マジかよ」

「マジ・・です・・」

「大丈夫か?」


私は、今朝、食べたものを戻しそうになり、口を押えていた。


「お・・おい・・ここで吐くなよ」

「・・・げ・・ゲボっ・・」

「おい・・マジかよ・・」


私は苦しかったが、なんとか堪えた。

すると冷や汗が出てきた。

うう・・マジでダメだ・・気持ち悪い・・


「お前・・めっちゃ汗かいてんぞ」

「・・・」

「ほら」


時雨王子は私にハンカチを差し出してくれた。


「ああ・・す・・すびばせん・・」


やがて私たちはコーヒーカップから降り、とりあえずベンチに座った。


「お前、大丈夫か?」

「は・・はい・・」

「苦手なもんねぇって言ってたじゃねぇか」

「そ・・そうですけど・・あんなに回されては・・」

「そっか。悪かったな」

「い・・いえ・・」


しばらく休むと、気分はよくなってきた。


「あの・・もう大丈夫です。すみませんでした・・」

「そうか。もっと休まなくていいのか?」

「はい・・。あの・・ハンカチは洗ってお返ししますので・・」

「いいよ。お前にやるよ」


ええええ~~~!時雨王子のハンカチが・・私のものにっっ!?

絶対に洗わないぞ~~~!

一生の宝物にする~~~!


「んじゃ~、次行くか」

「はいっ!」


そして私たちは、お化け屋敷へ入ることにした。

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