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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
18/94

十八、デ・・デートぉぉ?



それから数日後、私は、とある漫画喫茶に来ていた。

もう私は・・やっぱり二次元世界の王子さまへ恋する方に、気持ちが傾きかけていた。


紬と美琴は、誘っても来ることがない。

なので漫画喫茶には、いつも私一人で来ていた。

私は一冊の漫画本を手にして椅子に座った。


そうそう・・これこれ。

森本梢子先生の『アシガール』、好きなのよね~。

若君・・最高だわあ・・


「あ・・」


私の横で誰かが声をかけてきた。

顔をあげると、なんとっ!翔王子が立っていた。


「うわあ~~!なっ・・なんで・・」

「あはは。すごい驚きようだね」


翔王子はヤクザ漫画を手にして、笑っていた。


「し・・翔さん・・」

「きみ、漫画好きなんだね」

「あ・・はい・・」

「僕も好きだよ」

「そ・・そうなんですね・・」

「あ、ここ、座ってもいい?」


翔王子は、私の向かい側の席を指してそう言った。


「え・・」


う・・嘘でしょ・・翔王子が私と同じテーブルに・・


「あ・・ダメならいいよ」

「あっ!いえっ・・ダメじゃありません」

「そう?じゃ、お邪魔します」


うはあ~~・・なんという偶然。

翔王子も一人なのかな・・

時雨王子は・・来ないのかな・・


「翔さん・・お一人なんですか・・」

「うん」

「あの・・時雨王子は・・」

「たけちゃんは、漫画に興味ないからね」

「そうなんですね・・」

「薄柿さんだっけ・・」

「え・・はい・・」

「たけちゃん、あんなだけど、特に怒ってるわけじゃないからね」

「あ・・そ・・そうですか・・」

「たけちゃんね、意地っ張りなところがあってさ」

「そう・・ですか・・」

「僕、薄柿さんのこと、気の毒だなって思ってたんだよ」

「え・・」

「だってさ、一週間も謝ってるのに、たけちゃん何も言わないんだもんね」

「あ・・はい・・」


翔王子・・やっぱり優しいな・・

いい人だな・・


「あのさ・・」


翔王子は突然、小声で何かを言いた気だった。


「はい・・?」

「薄柿さん、たけちゃんと話がしたいんだよね」

「あ・・はい・・。でも、もう諦めました・・」

「僕が会わせてあげようか?」

「えっっっ!!」


なっ・・なにを言うかと思えば!

時雨王子と会わせてあげるって・・どういうこと?


「今度の日曜日、二人で会っちゃいなよ」

「ええええええ~~~~!」


私は、思いっ切り叫んでしまった。

すると店内にいたお客さんは、一斉に私たちの方を見た。


「し~~っ・・」

「あああ・・すみません・・」

「僕がたけちゃんを誘い出すから、薄柿さんも来てね」

「えっ・・ど・・どういうことですか・・」

「デートだよ、デート」

「でっ・・!デー――トぉぉぉぉ~~~!」

「こらこら・・静かに・・」

「うはっ・・すみません・・」

「で、どうする?来る?」

「え・・でも~~・・」

「無理にとは言わないけど」

「・・・」

「さっきも言ったけど、僕、薄柿さんが気の毒でさ・・」

「あ・・はい・・」

「なんとかしてあげたいなって、思ってたんだ」

「そ・・そうなんですか・・ありがとうございます・・」


翔王子・・なんて優しい人なんだろう・・

元はと言えば、私たちが悪かったのに・・

翔王子だって、ほんとはもっと怒っていいはずなのに・・

それどころか、時雨王子と会わせてくれるなんて・・泣きそうになる・・


「あのっ・・私、会います。会わせてください」

「うん。じゃ、駅前で十時にしようか」

「あ・・はい・・」

「あまり緊張しないでね」

「はい・・」



そして翌日・・

私は美琴と紬に、早速、昨日のことを話した。


「げ~~~!マジかいなっ!」

「うん、そうなのよ。もう私、びっくりしちゃって」

「それにしても・・翔王子は、優しいでありんすなぁ・・」

「でしょ~~。すごくいい人~~」

「でも時雨王子は、このこと知らんのとちゃう?」

「うーん・・それはわかんないけど・・」

「駅前に行って、いきなり小春が待ってたら、また怒るんとちゃう」

「ど・・どうなんだろ・・」

「翔王子が提案してくれたのでありんすから、無下にはしないと思うでありんすよ」

「だといいんだけど・・」

「よーーしっ。日曜日は私らも行くで」

「ええええ~~~!着いてくるの??」

「ちゃうがな。別行動やっちゅうねん」

「別行動って・・様子を見るってこと・・?」

「あったり前田のクラッカーやん」

「またそれを・・。なんなのよ、それ」

「別にええやん。紬、あんたも行くやろ?」

「ええ・・まあ、そうでありんすな」

「げ~~~・・紬まで・・」


別行動とは言え・・なんか・・嫌な予感しかしないんだけどぉぉ・・

でも、来るなって言っても・・絶対に聞かないよね・・この二人は。


「私・・何を着て行けばいいのかな・・」

「そらもう~~一張羅やん」

「なんか・・美琴って・・ますますおっさんみたいな話し方になってるよね」

「かまへんがなっ」

「そうでありんすな~~・・小春は白が似合うでありんすから、白のワンピースにしたらどうでありんすか」

「ワンピースか・・」

「それって、いかにもって感じとちゃうか?」

「そうでありんしょか」

「そうそう。いっそのこと、浴衣にしたらどうや」

「ゆ・・浴衣・・」

「日本人女子なんやから、やっぱり古風なのもええで」

「でも・・時雨王子、びっくりしないかな・・」

「ええやん。びっくりさせたったらええねん」

「髪も、おさげにして、かわいさをアピールするでありんすよ」

「おさげか・・」


私の髪は、肩より少し下のセミロングだ。

そうよね・・浴衣を着るなら・・やっぱり括らないとね・・

おさげなら、いいかも・・


「ひゃ~~日曜日が待ち遠しいやんかいさ~~」

「美琴ってば・・時雨王子のことディスってなかったっけ・・」

「そうやけどさぁ~。だってな、我々の中から初デート者が現れるとは、夢にも思わんがなっ。これは行くしかないやろっちゅう話やがな」

「そうでありんすな~。めでたい話でありんす」

「めでたいって・・。まだ何も・・」

「いやいやあ~。翔王子さまさまやな」

「そうでありんすな~」



そしてあっという間に日曜日がきた。

私は朝から、そわそわしっぱなしで、朝ごはんも喉を通らない状態だった。


「小春。浴衣って、ほんとに着るの?」


母が浴衣を手に持ってきた。


「うん。それ着るの」

「こんなの着て、どこへ行くのよ」

「紬たちと遊びに行くの」

「まあ最近、若い子の間で浴衣、流行ってるらしいし、いいかもね」

「うん」


ああ~~・・ダメだ・・ドキドキしてきた・・

なんか、ジェットコースターに乗ってるみたいな感覚・・

胃が・・キュウ~ってなる・・


「じゃ、ご飯済んだら着せてあげるよ」

「うん。お願いね」


はあ~~・・時雨王子・・どんな顔するのかな・・

引かれちゃったらどうしよう・・

いや・・笑われちゃったらどうしよう・・

ううう・・もしそうなったら・・私・・生きていけない・・


そして私は母に浴衣を着せてもらい、下駄を履いて家を出た。

よーーしっ!いざ出陣だ!


最初になんて挨拶すればいいかな・・

やっぱり、おはようございます・・かな・・

んで・・謝った方がいいのかな・・

いや・・謝るってのは・・もうさんざんやったし・・

普通に笑って・・元気に明るく笑って・・


そして私は電車に乗り、時雨王子たちが住む駅前に着いた。

携帯を見ると、九時五十分だ・・

あと十分・・あと十分で・・時雨王子が・・

うはあ・・ダメだ・・吐きそうになってきた・・

ああ・・心なしか眩暈もしてきた・・


ダメだ・・帰ろうかな・・

もう心臓が口まで上がってきてる感覚・・

マジで・・吐きそうだわ・・


「おい・・お前、こんなところでなにやってんだよ」


げ~~~!!しっ・・時雨王子が目の前にっっ!

ぎゃあ~~~・・な・・なんて言えば・・

ダメだ・・言葉が出ない・・

ダメよ・・小春!

ちゃんと挨拶しなくちゃ!


「おっ・・おはっよう・・ございますっ・・」

「ああ」

「あのっ・・!あの・・」

「っんだよ」

「きょ・・今日は・・す・・すみません・・」

「はあ?」

「えっと・・そのっ・・翔さんに・・」

「え・・?なに言ってんだよ」

「そのっ・・時雨さんと・・会わせてくれると・・」

「なに~~~!くそっ・・翔のやつ・・騙しやがったな・・」

「えっと・・翔さんは・・まだですか・・」

「ちょっと待て」


そう言って時雨王子は電話をかけていた。


「翔!てめぇ・・なに考えてんだ!ああっ?知るかよっ!だったらお前も来い!はあ??あり得ねぇよ。あっ!こらっ翔!くそっ・・」


時雨王子は電話を切り、私の方を見た。


「あの・・私は・・どうしたらいいのでしょうか・・」

「ったく・・翔のやつ・・なに考えてんだ・・」

「・・・」

「話を聞くだけだぞ」

「あ・・はいっ!」


そして私たちは少し離れて歩き出した。

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