表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
15/94

十五、下衆の勘ぐり

          


「それで、話とはなんだ」


紫苑さんは、ベンチに座るなりそう言った。


「あの・・今朝のことなんですけど・・その、紫苑さん、女装したことがあるって言ってましたよね・・」

「そうだが」

「それって・・なんで女装したんですか・・?」


私の質問に美琴と紬は、紫苑さんが何と答えるのか、今か今かと待っていた。


「話というのは、それか」


そこで美琴と紬は、ガクッとこける真似をした。


「おおーい。ちゃんと答えてくれなぁ~」

「それが、そんなに気になるのか」

「気になるでありんすよ~」

「きみたちは、変わっているな」

「いやいや・・女装って・・。変わってるのはあんたやがなっ!」

「それを知ってどうする」

「いやいや・・どうするもこうするも、普通は気になるで」


よーーしっ。この際、はっきり訊こう!


「あのですね、実は私たち、紫苑さんがそっち系の人だと思ってたんですけど、長谷部さんに訊いたら違うっぽくて、それでなんで女装なんてしたのかな~って・・」

「そっち系とは、なんのことだ」

「ホモ・・っていうか・・」

「ホモ!?バカなっ!。僕がホモだと言うのか!」

「いや・・だから、それは私たちの勘違いで・・」

「ったく・・女子は、くだらないことに時間を弄するものだな」

「だからそれはええねんって。女装した意味を知りたいねん」

「どうしてそれを、この僕が君たちに教える必要があるのだ」

「もうええ、はっきり訊くわっ!」

「なんだ」

「時雨王子、和樹王子、翔王子、この三人の関係を知りたいねん」

「関係?」

「特別な関係なんやろ?」

「その通りだが。それがどうかしたのか」

「だーかーらー、もう~~じれったいなっ!」


そこで紬が美琴の腕を引っ張った。


「私たちは、三人王子が「そっち系」だと疑っているのでありんす・・」

「はあ?」

「違うでありんすか」

「いくら僕でも、彼らの全てを知っているわけではないが、僕が見た限りでは彼らはホモではない」

「えっっ!違うんですか!」


私は嬉しさのあまり、思わず大きな声を挙げてしまった。


「違うね」

「じゃあ、なんで紫苑さんは女装なんかしたでありんすか・・」

「だから、どうしてそれを、きみたちに教えなければならないんだ」

「ええやん~、教えてぇな」

「僕のプライベートだぞ。個人情報を教えろと強要するのは法に触れるぞ」

「かあ~~~っ。理屈っぽいなぁ」

「僕の当然の権利だ。きみはそれを侵害しようとするのか」

「まあええわ。女装のことは訊かんわ。んで、三人王子はそっちじゃないんやな」

「だからさっきから、そう言ってるだろう」

「あの・・時雨王子と和樹王子は、一緒に暮らしてますよね・・」

「そうだが」

「えっと・・それはどうしてですか・・」

「きみたちに教える義務はない」

「え・・」

「これも個人情報だ」

「そ・・そうですか・・」

「話というのは、それだけか」

「えぇ・・まあ・・」

「では失礼する」


紫苑さんは機嫌を悪くして、その場を立ち去った。


「なんや、歩く理屈人間みたいな人やな」

「そうでありすんな・・」

「でもっ!これで王子たちはそっちじゃないってことがわかったね!」


私は嬉しくて、飛び上がりそうになった。


「小春・・嬉しそうやな・・」

「そりゃそうよ~~!これで希望が出てきた!」

「でも・・小春・・見たのでありんしょ・・」

「え・・?なにを?」

「電車で時雨王子と和樹王子が手を繋いでたのを、でありんす・・」

「あ・・」


そうだ・・

そういえばそうだった・・

あれは一体、どういうことだったんだろう・・



そして私は次の日から、また美琴と紬と同じの電車に乗ることにした。

ちょっと疑惑は残ってるものの・・紫苑さんは違うって言ってたんだし・・

いいよね・・違うってことで、いいよね~~!


「小春・・嬉しそうでありんすな」

「うん!だって違うってわかったもーん」

「残念やわあ・・」


私たちは朝の電車で、そんな話をしていた。

さて~~・・次の駅よ・・次の駅・・

ほどなくして王子たちが乗ってくる駅に着いた。

きゃあ~~!来たわ~~!


「おはようございます」


私は時雨王子に、挨拶をした。

しかし・・時雨王子は私を無視した。

え・・なんで・・

なんか怒ってる・・?


心なしか、和樹王子も翔王子も不機嫌そうな顔をしていた。

どうしたんだろう・・


「どうしたのでありんしょか・・」

「わかんない・・なんか怒ってるように見えるんだけど・・」

「小春・・翔王子に声をかけたらどうでありんすか・・」


あ・・そっか・・

翔王子って優しいし・・翔王子なら無視はしないかも・・


「おはようございます・・」


私は翔王子に挨拶をした。

すると翔王子は、チラッと私の顔を見ただけで、知らんふりをした。

げっ・・ど・・どういうこと・・?


「ねぇ・・紬・・これってどういうことかな・・」

「うーん・・わからないでありんすね・・」

「和樹王子は・・どうなんだろう・・」

「声をかけてみるでありんすか・・」

「うん・・」


そして私は和樹王子にも挨拶をした。

しかし・・和樹王子も聞こえないふりをしていた。

ガ・・ガーーン!


「おい」


そこで時雨王子が私に話しかけてきた。

げっ・・すごく怖い顔してるんだけど・・


「お前ら、もう声かけてくんな」

「え・・」

「俺たちはな、お前らみたいな、人の詮索をするやつって、大っ嫌いなんだよ」

「・・・」

「僕も怒ってるんだよ」


翔王子がそう言った。


「僕たちのこと、なんか勘違いしてるみたいだけど、そういうのって下衆の勘ぐりって言うんだよ」

「え・・そ・・そんな・・」


下衆の勘ぐり・・って・・

あ・・ひょっとして・・紫苑さんが話したのかも・・


「僕たちのこと何も知らないくせに、勝手な想像して人に訊いて回ったりするのやめてくれないかな」


あの優しい翔王子とは思えないほど、翔王子は怒っていた。


「ちょっと、下衆の勘ぐりってなんなん」


美琴が口を開いた。


「美琴・・やめようよ・・他の人たちに迷惑だし・・」


私はそう言って、美琴の服を引っ張った。


「わかった。お前ら、次の駅で降りろよ」


時雨王子がそう言った。

げげ~~~・・これって、とんでもない展開になるんじゃ・・


「ああ、わかった!顔貸せっちゅうことやな」

「そうだよ!」


もう降りる前からケンカ腰になっていた。

そして次の駅に到着し、私たち六人はホームに降りた。

それから私たちは、人の少ないホームの端の方へ行った。


「下衆の勘ぐりってなんなん!?」

「ああっ?そのままだろうがよ!このクソがっ!」


時雨王子は、相手が女子ということも関係ないと思えるほど、怒っていた。


「僕たち、紫苑くんに聞いたんだよ。そう言えばわかるよね」


翔王子がそう言った。


「だからなんなん?」

「ちょっと・・美琴・・やめて・・」

「なによ、小春。あんた下衆の勘ぐりって言われて平気なん?」

「そりゃ・・気分は良くないけど・・」

「はあ?気分がわりぃのは、こっちだっての!ハイエナみてぇに嗅ぎまわりやがって、バカかっ!」


「きみたちさ、そんなに僕たちのこと知りたいの?」


そこで和樹王子が口を開いた。


「え・・あの・・その・・」

「なんなら教えてあげるけど。聞く?」

「おい、和樹、こんなクソ女たちに言うことねぇよ」

「そうだよ、和樹くん。勝手に想像させたらいいんじゃない?」

「僕たちのこと知りたいのなら、こんな場所で話せる内容じゃないんだよ。すごく時間もかかるし」

「やめようぜ、和樹。時間の無駄だって」

「うん、そうだよ、和樹くん」

「どうするの、きみたち。聞くの聞かないの?」


和樹王子の言葉は柔らかかったが、表情からは優しさが消え去っていた。


「あの・・ごめんなさい・・聞かないです・・」


私は弱々しくそう言った。


「私も・・申し訳なかったでありんす・・」


紬もそう言って詫びた。

しかし、美琴だけは黙っていた。


「きみはどうなの」


和樹王子が美琴にそう言った。


「せやけどさ、時雨王子と和樹王子さ、電車の中で手を繋いでたんとちゃうの!?」

「ったく・・まだわかんねぇのかよ」

「なによっ」

「お前らが、そっちに興味があると知って、わざとそうしたんだよ」

「なんでそんなことする必要があったんよ」

「だから!俺たちが女に興味がないそぶりを見せたら、もう言い寄って来ねぇだろが!そのためだよ!」

「っな・・」

「これでわかったか!もう二度と言い寄って来るな。声かけてくんなよ!」


そして王子たちは、ホームの中央あたりへ歩いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ