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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
11/94

十一、自然体



今日は祝日で、昨日に引き続きお休みだ。

いつもなら、美琴と紬と三人で出かけるところだけど、私は家に一人でいた。

両親は親戚の法事で、出かけていなかった。

私にも「行きなさい」と言ってたけど、断った。


私は昨日のことがあって、やはり・・落ち込んでいた。


あ~~あ・・

もう時雨王子とは、話もできないんだなぁ・・

きっと見ても無視されるんだろうな・・

もう・・同じ電車に乗るの、やめようかな・・


私は自室のベッドに寝ころび、天井を見上げていた。

ええ~~い、あれこれ考えても仕方がない!

気晴らしに出かけるとするかっ!


私は服を着替え、家を出た。

美琴と紬も誘おうと思ったが、なんだか気まずくて、それはためらった。


私は電車に乗って、時雨王子の住む街へ行った。

もし・・もしよ?偶然会ったとしても・・これは言い訳ができるよね。

買い物するために、この街へ来たって不思議じゃないもんね・・


私はどこかで、時雨王子に偶然会えることを期待していた。

っていってもね・・そんな偶然なんてなかなかないよね・・

そう考えながら、私は雑貨店や服屋さんなど、適当に見て歩いた。


あっっっ!!

あれは・・第四のイケメン王子じゃないですか~~!

そう・・道を歩く人の中に、時雨王子と和樹王子の住むアパートに入って行った王子が歩いていたのだっっ!

ひゃ~~・・かっこいいぃぃ~~


え・・横にいる女性って・・誰・・?

いやいや・・私の見間違いよね・・

でも・・手を繋いでるし・・

しかも・・ブスなのに・・手を繋いでる・・


ええええ~~~!あの王子は何者っっ!?

そしてあの女性は何者っっ!?

私はそこで一気に気持ちが高ぶった。

だって・・悪いけど・・私も人のこと言えないけど・・ブスよ・・?

なのに・・手を繋いで歩いてるってことは・・

もしかして恋人同士??


きゃあ~~~!

わ・・私も・・ひょっとして・・チャンスがあるのかな・・


私は気になって、二人の後をつけてみた。

すると二人はお洒落なカフェに入って行った。


私もすぐに入り、二人と近い席に座った。

ここなら・・会話とか聞けるかも・・


「でさ、(あおい)ちゃん、式はいつにする?」

真人(まさひと)くん、そんなに焦らなくてもいいんじゃない?」

「だってさ~俺は早く結婚したいんだよ」

「わかるけど~、まだ貯金が足りないしね」

「俺、もっともっと働くからさ。ね~、結婚しようよ」


げ・・

な・・なんでしょうか・・この会話・・

私は夢でも見ているのでしょうか・・

私が来る日も来る日も夢に描いてた光景が・・いま、まさにっ!現実として・・目の前で起こっているじゃないですかぁぁ~~!

しかもですよ~~!女性の方が言い寄られてるって・・

こんなことって、あるんだぁぁぁ~~~!


「健人だって、早く結婚しろって言ってんだよ」

「まあね~。わかるけど、もう少しお金を貯めてからにしようよ」

「っんなぁ~・・」

「それにね、健人くん、大学へ行くんでしょ。だったら尚更じゃない」

「だーかーらー、それは奨学金で行けるんだって」

「私たちが結婚しちゃったら、健人くんと和樹くん二人でどうやって生活するの?」

「そうだけどさぁ・・」

「せめて、二人が高校卒業するまで待ちましょうよ」

「またそれかよ・・。この話、いつもここで終わるんだよな・・」

「あはは。でも私、嬉しいわ。ありがとう、真人くん」

「葵ちゃん・・」


ぐはぁぁ~~~・・なっ・・なんと熱い会話なのでしょうかぁぁ~~!

葵さんか・・いいなぁ~~・・羨ましいなぁ・・


ガチャン!


ぎゃあ~~!

な・・なんてことを・・

そう、私は二人の会話に夢中になったあまり、コーヒーカップを床に落としてしまったのだっ!

うわ・・注目されてる・・


「大丈夫?」


きゃあ~~!葵さんが声をかけてくれた・・


「あ・・はい・・」

「はい、これで拭いて」


そう言って葵さんは、私にハンカチを差し出してくれた。

カップが落ちた際に、私のスカートにコーヒーのシミがついてしまったのだ。


「あ・・いえ・・持ってますから・・」

「そう?シミになったら大変よ。早く拭き取った方がいいよ」


そう言って葵さんは、私のスカートを拭いてくれようとした。


「いや・・あの・・自分でやりますから・・」

「いいから、いいから」


葵さんはハンカチに水を含ませて、私のスカートにあててくれた。


「お客様、大丈夫ですか?」


そこで店員が布巾を持ってきた。


「あ・・すみません。私、ボーッとしてて・・」

「カップは拾いますので、お客様、席を移動してください」

「いや・・あの・・私、もう出ます」


それから私は葵さんにお礼を言って店を出た。


あああ~~・・焦ったわ・・

それにしても・・葵さん、なんて優しい人なんだろう・・

私は葵さんのために、ハンカチを買うことにした。

早く買わないと・・どっかへ行ってしまうかも・・


私はさっき覗いた雑貨屋へ行き、白地に花柄のハンカチを買った。

それを持って、カフェの前で待つことにした。


ほどなくして二人は店から出てきた。


「あ・・あの・・」


私は葵さんに声をかけた。


「あら、さっきの」

「さっきは本当にありがとうございました」

「あら~それを言うために待っててくれたの?」

「あ・・はい。それで、これ・・どうぞ」


私は包みを差し出した。


「え・・なにかしら?」

「あの・・ハンカチを汚させてしまったので・・買ってきました・・」

「そんな~~。全然、大したことないのに。気を使わせちゃったわね」

「いえ・・嬉しかったです・・」

「んじゃ、お言葉に甘えて頂戴します。ありがとうね」


葵さんはすごく優しい顔をして、微笑んでいた。


「いえ・・じゃ・・私これで・・」

「あなた、お名前は?」

「え・・薄柿小春です・・」

「薄柿さんか。私、水柿葵です。苗字が似てるわね」

「そ・・そうですね・・」


「葵ちゃん、よかったな」


真人王子は、とても嬉しそうだった。

きゃあ~~~!なんて素敵な笑顔なの~~!


「じゃ、薄柿さん、またね」

「はいっ!ありがとうございました!」


そして二人は手を繋いで歩いて行った。

ああ~~・・いいなぁ・・

ほんと羨ましい・・


私ってブスってことを逆手に取って生きてきたけど・・葵さんはそんな感じしないなぁ・・

ありのままっていうか・・すごく自然なんだよね・・

そういえば・・時雨王子が「卑下するな」って言ってたっけ・・

ってか・・時雨王子も葵さんのこと知ってるってことよね・・


真人王子とどういう関係なんだろ・・

あっっ!もしかしてお兄さんとか・・?

うーん、和樹王子と兄弟かも・・

いやあ~~わかんないわ・・


でもこれで、真人王子はそっちじゃないってことは確かよね・・

それだけでもよかった・・



そして次の日・・

私は一人で違う時間帯の電車に乗っていた。

美琴からも紬からも電話がかかってこない・・

怒ってるのかな・・

まあ・・電車はこの時間の方が空いてるし・・


私は座って本を読んでいた。


「おはよ」


えっ・・誰っ?

顔をあげると、目の前に時雨王子が立っていた。

ぎゃあ~~~~!

なっ・・なんで時雨王子・・

しかも一人で・・


「あ・・えっと・・」

「なんだよ、挨拶くらいしろよ」

「お・・おはようございます・・」


なんで・・なんで私に話しかけてきたの・・?

怒ってるんじゃなかったの・・?


「お前さ、昨日、葵ちゃんにハンカチプレゼントしたんだってな」

「え・・ああ・・はい・・」

「葵ちゃん、喜んでたぜ」

「そ・・そうですか・・」


そっか・・あの後、私のこと話ししたんだ・・葵さん・・


「俺、名前聞いてびっくりしたぜ。まさかお前だったなんてよ」

「はあ・・。あの・・時雨・・さん」

「なんだよ」

「今日は、なんでお一人なんですか・・」

「家を出たところで忘れもんに気がついてさ。ってか、お前こそなんで一人なんだよ」

「え・・それは・・」


美琴と紬とケンカしたことなんて、言えないしな・・


「わ・・私も忘れ物をして・・」

「ふーん」

「あの・・この間は・・すみませんでした・・」

「あ?」

「その・・バードウォッチングのこと・・」

「別にいいよ。もう気にしてねぇし」


え・・気にしてないんだ・・気にしてないんだぁぁぁ~~~!

神さま・・ありがとう~~~!


「あのっ・・これからも話をしてもいいですか・・」

「ああ」


きゃあ~~~!「ああ」って!やったぁぁぁ~~~!


「あのっ・・あのっ!ありがとうございます!」

「お前って、変なやつだな」

「え・・」

「大勢の前で告ったかと思えば、今みたいにオドオドしててよ」

「・・・」

「お前、もっと自分に自信を持てよ」

「え・・」

「見た目がどうのこうのってあるけどさ、そんなこと気にしてたってしょうがねぇだろ」

「は・・はい・・」

「俺さ、思うんだけどさ。お前ってほんとは根は明るいんじゃねぇのか」

「え・・」

「普通にしてろよ、普通に」

「はい・・」

「んじゃな」


E高校前に着き、時雨王子は降りて行った。

普通に・・か・・

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