アイス人~冷たいアイスが暑苦しい!!
暑さにやられたのでしょうか。
今朝みた夢がちょっと笑えたので短編にしてみました。
現代童話として、どうか一つ。
最近めっきりと暑さが増して、梅雨前だと言うのに夏日どころか猛暑日になりそうな気温が天気予報に並ぶ。
「は~、今年は暑さがキビしいらしいしなぁ~...」
アスファルトの照り返しの中、予報の気温より体感気温はさらに高く感じる。
高校の制服も夏制服に衣替えをしたばかりだが、それでも暑い。全然暑い。
「ダメだ、暑いー。アイス食おう」
熱中症も怖いしね、と理由を付けてコンビニへ。
店内の冷風を堪能しながら、いつもの定番のソーダ味アイスとこれまた定番のサイダーを購入。
暑い外に戻りたくないが、俺は、今、アイスが食いたい!
「ありあーっしたー」
店員の適当な挨拶に背中を押されて、帰路へと戻る。
コンビニ横の公園のベンチで座って食べよう。
幸いベンチは空いていて、ベンチの半分が木陰になっている。
ラッキー。
さっそくコンビニ袋から愛しのソーダアイスを取り出す。
「溶けるー」
バリッと袋を開けて、取り出し口に運ぼうとすると、
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
と、小さな女の子(?)の声が聞こえた。
なんだかすごく近くで。
周りを見渡す。
公園内ではたくさん子ども達が走り回っているけど、それほど近くにいる子はいない。
不思議に思ったが、まあいいか、とアイスに齧りつく。
冷たい。うまい。
「っあー!
今!私!美味しく!食べられてる!幸せ~!」
...は?
「しかも!こんなに暑い絶好のアイス日和!!
お兄さん!ナイスチョイス!シャリシャリって音がまたいい!
私いい仕事するっ!」
アイスから、声がする。
あ、やっべぇ、熱中症?幻覚?
こういう時ってどうすりゃいいの?
倒れたりする前に救急車呼んだ方いいの?
「あれ?
お兄さん、早く食べないと私溶けちゃいますよー。
私の場合、溶けだすとアイスの棒から一気にドシャッと落ちちゃいます。
悲しみ半端ないですよー、ハリーハリー!」
「...アイス、が、喋ってる」
「!? おおおおおお兄さん!
私の!アイスの声が聞こえてるんですか!!
超絶レアな、アイス感が強い「アイス人の声聞こえる人」ですか!!?」
アイス人ってなんだよ。
アイス感って霊感みたいなもんか?
アイス人の声聞こえる人って、ネアンデルタール人みたいなノリで言っただろ、絶対。
「とにかく!お兄さん、私を食べて下さい!
この気温じゃ、私達アイスはすぐに溶けてしまいます!」
「とにかくじゃねぇよ。話すアイスとかめっちゃ食べにくいんだけど」
「そこをなんとか!!」
「えぇ~...」
結局食べた。
アイスに応援されながら食べた。
なんだこれ。
食べ終わったらアイス人が消えるじゃないかと思ったが、
「大丈夫ですから!」
としつこかったので頑張った。もう味わかんなかった。
「ん~~~っ!えいっ!」
と言う謎の掛け声の後、目の前に全身水色の、手のひらサイズの可愛い女の子が浮いていた。トンボみたいな羽をパタパタと羽ばたかせている。妖精みたいだ。
「お兄さん、改めまして、アイス人です!美味しく食べてくれてありがとう!」
満面の笑みで少女はお辞儀をする。
「はぁ」
「気のない返事だなぁ。こんなに奇跡的な瞬間なのに」
アイス人曰く、
アイス人は普通のアイスの中にたまーに混ざってアイスケースの中にいるらしい。
アイス人自体が少ないのもあるが、俺のようなアイス感を持つ人間に巡り会う事は非常に稀で、大抵は普通のアイスとして美味しくいただかれ、また次のアイスに宿るらしい。
アイス人の声聞こえる人との巡り会いは、アイス人からすると大変な奇跡なんだそうだ。
「そんなの聞いた事ないんだけど...」
「でしょうね!アイス人の声聞こえない人に言っても、
「こいつヤバいやつだ」
「暑さにやられたか?」
「薬でもやってんの?」
って、最悪病院送りですからね!!」
確かにな!
俺も「アイスの声が聞こえる」っていきなり言われたらそう思うわ!!
「ちなみに、今現在も、一人でベンチにたたずみ、ブツブツ独り言をいっている高校生、って感じになってますからね!お兄さん!」
はっ!と気づいて周りを見渡すと、さっきまでいた子ども達が、チラチラとこちらを覗きながらも、不自然にこのベンチから距離をとっている。
違うな!俺から距離とってんだな!!!
「もう少し早く言えよ!帰る!」
「あっ!待って下さい~!
アイス人の声聞こえる人のお兄さん~!」
その後、食べるアイスに片っ端からあのアイス人が入り込み、
「ソフトクリームは、垂れやすいですから!早く!早く食べて!」
「これ人気の新作なんですよ!なかなかの入り心地です!」
「あああ~!ハーゲンガッツは別格ですね!ああ~!」
などと、ひたすらにやかましく暑苦しく騒ぐので、アイスを食べている最中は眉間のシワがなくならない。
アイス食っても涼しくならねえ!
「アイス人ってお祓いできるのかな...」
「!? お兄さんっ!!?」
基本アイスが絡まなければ、ふよふよと後ろを飛んでついてくるだけなので、害はない。
どうもアイス人は当たり付きアイスの当たり棒が好きしく、アイス人がこれがいい、と指差した当たり付きアイスは確実に当たる。
俺の統計だと、ジャリジャリくんは50本に1本ぐらいは当たりだ。
「お兄さん~、あれ!あのジャリジャリくんがいいです!」
「ダメ。今日はエッセルウルトラカップの気分なの」
「ええ~!いけず~!」
まあでも、アイス人が勧めるアイスはどれも俺好みだったりするので、ちょっと楽しかったりする。
もう少しこのままでもいいか。
ガコンッ!
自動販売機でジュースを購入。
「お兄さん~、そこはアイスにしましょうよ~」
「アイスばっかり食べてたら腹冷えるだろ」
いつものサイダーをプシュッと開けて...、
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
アイス人とはまた別の、女の子の声がした。
ジュース...!!!お前もかっ!!!!!
【アイス感】・アイス感がいい人はアイスの当たりが出やすかったり、たまたま買った新しくでたアイスがとても美味しかったり、買いたいアイスが必ずあったりする(売り切れがない)
ちなみに作者はカップラ感が非常に悪い。
シリーズ続編、「スイカ人~人に向けてタネを飛ばしてはいけません。」も宜しくお願い致します。
※ジュース人は出ていません。