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第1話 村に生まれた勇者(英雄) なんだそれ。

どうぞ。

 俺が生まれてから1年ほど経った。


 どうも、カイト=マクスウェル1歳でござんす、ってか。いや、なんかもう1年が短く思えてしかたがなかった。

 この世界の言語は前回の世界の言語に少しにていたので覚えるのは幾分か楽だった。


 さて、そんな俺だが………


「ん? なんだこれは? ふむふむ、食べられるのか」


 今は森の中でキノコを手に取り、フワフワと宙に浮いている。

 何をしているのかって? いや暇だったから色んな物を「鑑定」しようと思って、森に来ただけですが? 因みに俺の寝床には俺の分身を置いてきたから心配はされない。

 分身って何だって? どうやら俺は忍者だらけの世界にも転生したことがあったらしい。そこで覚えたようだがいまいち俺自身は覚えていない。


 俺の転生前の記憶っていうのはかなり曖昧だ。能力や魔法とか、そういう系の記憶はあるんだが、どんな国があったとか、こんなアイテムがあったとか、そんなことは全然覚えていない。

 だから転生の度にこうして楽しい楽しい鑑定タイムがあるわけだが。


 俺が生まれた村は大体小学校の敷地ぐらいの広さだった。で、南と東に森があって、北側に川があった。今俺が来ているのは南側の森だ。あ、因みに方角は砂鉄を錬金術で集めて磁石にして知った。


「お?」


 ガサガサッ、という音と共に、茂みから緑色の生物が現れた。

 全身緑色、手には棍棒を握り締め、歯を剥き出しにして此方を見ている。ゴブリンだ。


「おお!」


 キターーーーー!

 定番?やっぱりゴブリンの討伐ってのは避けて通れないよねぇ!


 いや、興奮する前に。

 今までこの森に魔物、モンスターとか、そういった類いのものは一切でなかった。

 考えられるのは3つ。


 1つは、俺のまだ行っていないところに魔物の巣がある、という説。

 これは即座に却下。前にこの森を上から眺めたのだが、そこまで大きい森ではなかった。この1年でもうほぼ探索し終えたと思う。


 もう1つは、新しく巣が作られた、という説。

 これは「探知」という他の世界で得た便利スキルによって違うことが分かっているので却下。


 必然的に最後の1つが正しいと思われる。

 はぐれの個体である、という説。


 と色々考えていると、急にコブリンが棍棒を振りかぶって突進してきた。咄嗟に、魔力を左手に籠め、人外な速度と力でそれをコブリンの緑色の体躯に撃ち込んだ。

 どごんっ!


 凄まじい音と共にゴブリンはその身体を九の字に折り曲げ、後方の木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされていく。約50メートル程吹き飛ばされたところで漸くそれは威力を落とした。


「うわぁー…………やっちまった」


 顔を若干ひきつらせながら呟く。

 ていうか俺強すぎじゃね?一体何回転生したんだよ………考えるのが怖い…………。


 最初の興奮は何処へやら。

 今はやっちまったという後悔しかない。これだけの轟音だ、100%村にも聞こえていることだろう。取り敢えず村に急いで戻ろう。


 ###


「透明化」と「浮遊」で戻ってくると、案の定村は大混乱となっていた。


「な、なんだったんだいまのは! 此処等に魔物はいない筈だろ!?」

「知るかよ俺に聞くなって!!」

「あああ! 此処ももうヤバイんじゃないの!? あああああああああああああ!!」


 うわぁ………こりゃひどい。

 只発狂してるやつとか、見るからにあたふたしてるやつとか、反応は個々様々だが、一様に皆混乱している。最早阿鼻叫喚の地獄絵図である。


 これどうすりゃいいんだ………。

 ふと、ある女性の姿が目に入った。


「おお、神よ………恐怖に包まれたる我等を救いたまえ………」


 それは、修道女だった。

 両親のいない俺は孤児院に寝泊まりしていて、この修道女、マリアさんに世話になっている。明るく奔放な性格の彼女だが、今回は必死に神に祈りを捧げていた。その手に抱えられているのは、俺の分身体だった。


 えっと………なんかスミマセン。元凶は貴方の抱いている糞餓鬼です。

 あ。そうだ!


 あることを思い付いた俺は、「幻影」「雰囲気操作」「空間操作」「心達」を使い、広場で泣き叫ぶ村人達の前に出ると、「透明化」を解いた。


 作り上げるイメージは、神。ゴッド。全知全能の存在。「雰囲気操作」で神々しい雰囲気を強引に作り上げる。


『村人達よ』


「空間操作」で声色を変え、「心達」で頭の中に響かせる。

 俺に気づいた村人達が、一様に俺の方を見た。


「「「あ、貴方は………?」」」

『我は神なり。案ずるな。先程の音は、この村に近づく不届きものを成敗した際の物だ』

「か、神、様!?」

「おお、ということは神様、我々は安心してもよいのですね?」

『左様』

「「「おお………!!」」」


 我ながら下手な芝居だとは思うが、これしか思い付かなかったのだからしょうがない。


「あの、神様。無礼を承知の上で、質問を願いたいのですが………」

『構わん』


 恐る恐る訊いてきたのはマリアさん。

 俺神なんて大それた存在じゃないしね?

 そんぐらい別にいいよ。


「この村にあなた様が救うほどの価値があるのでしょうか?」


 ………………うん?

 思わず顔がひきつる。


「大した特産品もなく、町から離れていて、神聖なものなど何一つ無いように思えるのですが………」


 うん、待って。ヤバい。そんなこと微塵も考えてなかった。

 え、どうしよう。これ答えなきゃいけない状況だよね?周りの村人全員「確かに」って感じでこっち見てるんですけど!?


『えー、あぁ、いや、その、あれだ』


 言葉に詰まる。

 村人達の視線が痛い。ええい、もうヤケクソだ!


『こ、この地にゆ、勇者が産まれるのだ。それ故の対処だ』

「「「な、なんと!」」」


 この世界にはステータス等と言うのは無いのだが、職業というのがあって、それによって個人の能力が決まる。中途半端なシステムなのだ。因みに俺は村人だった。

 その中で勇者、というのは化け物みたいな力を持っていて、魔族と戦争を繰り返す人族の最終兵器みたいな存在となっている。当然、現れる確率もそれなりに低い。


 でも何回も転生を繰り返してきた俺だ。それくらいでき………るわけないよな!自分の技能、魔法を見てもできることとは思えない。そりゃそうだ。初めて来た世界のシステムだもの。


 しまったあああああああああああ!!


 俺が心の中で後悔の言葉を叫んでいると、マリアさんがとうてきた。


「それは、この子のことでしょうか」


 え?いやそれ俺………

 とそこで気付いた。マリアさんは俺を抱いてはいなかった。俺はマリアさんの背中に抱えられていた。

 マリアさんがその手に抱き抱えているのは、白い布にくるまれた赤ん坊だった。いや、俺も十分べびーだけども。


 え、ええ!?そんな子いたっけ!?

 慌てて「鑑定」する。


 =========================================


 名前 なし  種族 人族 女

 職業 英雄Lv1


 =========================================


 え?英雄?


 ===============


 英雄

 勇者の上位職


 ===============


 おおおおおおおおおおおおお!?

 なんという奇跡ッッッ!!!

 ていうか勇者の上位職とかヤバッ!


『その通り。しかも、その子は只の勇者ではない。勇者の上位職、英雄だ』


 ドヤ顔で言う俺。

 かなり村人達は驚いていた。


 後に、"神の落とし子"と呼ばれる、勇者ミルフィア=ルナトーンは、こうしてうまれたのである。只、俺は今はその事を知らない。


 ふう、疲れたぁ、と俺はそのまま全能力を解いてこっそり分身体と入れ替わった。

 頭がガンガンする。ベビーの癖に能力を使いすぎたからか。とにかく眠いので寝る。


 おやすみ~。

なんか強引な気もしますがそこはご愛嬌。

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