表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜勇者は魔王に転生したので、ホワイト魔王城を営むために勇者を次々転職させます  作者: あきかたりれお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

第3話昼寝は減給?!いいえ、業務です


朝。魔王城の一日は9時ぴったりに始まる。


ルイーゼ

秘書兼アザゼルの世話係


「アザゼル様。おはようございます。今朝はカモミールティーをいれてみました」


アザゼルはソファにて従業員管理のウィンドウを眺めていた。


「おはようルイーゼ。ありがとう。今日のヒバリやオルウェン、騎士達の配置だけど……」


「午前中は農耕。午後は見張りになっていますね」


「ルイーゼ。君は秘書として優秀だ。だが一点、重大なことを忘れている」


アザゼルは鋭い視線でルイーゼを見つめる。ルイーゼはビクリと肩を震わせた。


「それは……昼寝の時間が無いことだ」


「は……え?ひ、昼寝?」


「いいか。昼寝とは即ち脳を休めること。たった15分設けるだけであら不思議。働くパフォーマンスが上がり、効率的かつ、健康に働くことができる」


「流石アザゼル様!そんな方法があるのですね!お昼寝なんて、サボっているようにしか思えないのに」


「焦って詰め込んでも失敗するだけだ。休む時は思い切り休む。働く時は思い切り働く、そのONとOFFが」


ガチャンッドタッ


慌ただしい音と共に部屋に転げ入って来たのは、昨日魔王城に転職したシンだ。

起き上がるなり、アザゼルに詰め寄る。


「ひ、昼寝って、どういうことですか?!昼寝したら減給じゃ無いんですか?!」


「あ、あぁ。確かそうだったな。勇者は」


「俺の隣で566連勤という地獄を味わった同期の勇者がいました。彼はダンジョン潜り中に昼寝、いや、気を失って倒れた。そしたら、その月の報酬が全て半額になってしまって……ね、寝られない。昼寝なんて恐ろしいこと、出来るわけが」


シンは赤髪を抱えて青ざめる。恐ろしい社畜の日々を思い出し、体が不自然に震え出した。


「落ち着けシン」


アザゼルは冷静にシンの肩を叩く。


「魔王城では昼寝は仕事の内だ。少しずつ慣れていけばいい。それで、なんでここに居るんだ?君には休暇を言い渡したはずだが?」


「うっ……そ、それは」


シンはオドオドと視線をうろつかせる。


「や、休み方が分からなくて……ジッとしていると不安になってしまうんです」


「これは重症だな。よし、出かけるぞ」


「え?」


「俺が休み方を教えてやる。ルイーゼ」


「はいっアザゼル様!」


一体どんなアドバイスを。ルイーゼは目を輝かせる。アザゼルは指をパチンッと鳴らしながら言い張った。


「ピクニックの準備だ!!!」


◇◇◇


魔王城から少し歩いた所。開けた草原。草原には小さな花が揺れ、小川がさらさらと音を立てて流れている。


そこへ――


青白い肌。赤い瞳を尖らせ、ダークな雰囲気を纏ったアザゼルは、ピクニックバスケットを両手にニタリと笑った。


「ルイーゼ!布を引け!」


「はいっ!」


薄桃色の布を地面に敷き、その上でピクニックバスケットを開く。中にはトマト、レタス、ハム、卵が挟まったサンドイッチが。


「よぉし食うぞ。シン。ここに座れ!」


サンドイッチを片手にアザゼルは隣を叩く。シンは初めての体験に唖然と立ち尽くしていた。


「これは……」


「ピクニックだ。俺は職業判定されるまで、家族でよく来ていた。シン。君には今、休む時が必要だ」


「……ありがとう、ございます?」


シンはサンドイッチを受け取ると布の上に座った。サンドイッチにかぶりつく。


「ん……あれ、なんか、いつもより美味しい、かも」


「そよ風が体を撫でる感覚。小川の流れる音……食材の美味しさ。そういう一つ一つに感覚を傾ける。これも休むということだ」


「やべぇ……なんだこれ……」


シンの目から涙が溢れる。それは、辛い日々からの解放か、初めての休日に対する感動か。


「そうして感情を露わにするのも、大事だな」


「う、うっ……べそかくなって殴られない……怖い……」


「えぇ……」


「余程酷い環境におられたのですね……」


シンは鼻を啜り涙を拭う。


「アザゼルさん。アンタ本当に魔王なんですか?」


「あぁ、列記とした魔王だ。この世界のブラックを脅かす、な?」


アザゼルは鋭い牙でサンドイッチを食いちぎった。


◇◇◇


エンゼル王国

南東の貧しい村


「ゴホッ……ゴホッ」


木の板にボロ布を被せただけの家の中、病人の咳が響く。その傍らで、少女は包帯を腹の傷に巻き付けていた。


「ニーア、ニーア」


「どうしたのお母さん?お水?」


「お前、また依頼を受けるつもりじゃないだろうね」


母と呼ばれた女はやせ細った手を伸ばす。ニーアは両手でその手を包み込んだ。


「へっちゃらだよ。次の依頼、そんなに難易度高くないし……安全だから。ね?」


「はぁ、アンタには苦労かけるね。職業判定で勇者にさえ、ならな、ければ……」


「しょうがないって。それに私、勇者になりたかったんだし!今は報酬安いけど、いつかボーナス貰って、良い薬手に入れるよ!だからお母さんは、だーいすきな温泉旅行する夢でも見て待ってて!」


ニーアは頬を丸く持ち上げて笑う。それが強がりだと分かっていながらも、病気の母には止めることができないのだ。


「ニーア……私はアンタが無事ならそれでいいんだよ」


「うん。大丈夫だよお母さん。お母さんのことは私が絶対、守るからね」


ニーアは琥珀色の瞳に力強い意志をこめた。


勇者147番

(依頼内容)

東の森の魔王討伐

魔王石回収

危険度:A

報酬:金貨10枚


女勇者は魔王城へと向かった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ