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新神なんでも相談屋 ~ゴッド・オブ・バディ~  作者: 空希果実


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第4話 ご近所トラブルは地球を救う!?

 ――令和8年。

 日本には様々な価値観が入り乱れていた。

 この時代は続いていく。


 新宿にある新神ビル1F。

 新神なんでも相談屋では、今日も退屈な時間が流れていた。



「あー あー あー あー」

「先生、どうしたんですか? いつもいつもおかしいですけど」

「あー あー あー あー」

「……」

 突然、パイプ椅子から新神はすっくと立ちあがる。

「グリーンジャイアント!!」

 胸を張って、そう叫んだ。ただっ広いフロア全体に声が響いていく。

「……どう考えも先生はグリーンじゃなくて、レッドですけど」

 冷静な牛子のツッコミが入る。

「そうだよな。どうかしてるぜ」

「平常運転なんで、私は気にしてませんけど、対外的に見てとっても恥ずかしいです」

「レッドカーーーーーードッ!!」

「先生の存在がでしょ。知ってます」

「レッドカードを貰ったグリーンジャイアント!」

「……。はあ」

 ちょっと真面目に転職を検討しだす牛子。

 業務のヒマは常態化し、こんな風に無為に時間を過ごすのが大半であった。


 ドタドタドタドタドタ……。

 ん?

 と、そこへドタドタと走り寄ってくる足音が。

 2人が前を見ると、トレーナーにスカート姿のおばさんが、こちらへと駆け寄ってきているのが見えた。

「ねぇ! アンタ達! ヒマなんでしょ!? ちょっと、こっち来なさいよっ」

「えっ? なんですか、いきなり」

 牛子が抗弁する間もなく、おばさんは新神の腕を掴み出入口へ向かって引っ張っていく。

「ちょ、ちょっ、ちょっ、ちょっと。待った! 私は忙しいっ」

 とりあえず、嘘をつく新神。

「何言ってんのよ、ヒマ人が。いいから、私のアパートまで来なさいってのっ! 助けて欲しいのよっ」

 おばさんは強引に新神を引っ張っていく。

 仕方がない。という感じで牛子もその後を付いていくことにした。

 3人ともビルの出入口を出て、新神なんでも相談屋には誰も居ない状態になった。

 ――ガランとした、沈黙だけがフロアに残った。



 おばさんに腕を引っ張られ歩くこと5分ほど、2階建ての古びたアパートがそこにはあった。

「ここよっ! きて!」

 掴んでいた腕を離されるが、今更帰るのもなんだかな、ということで、とりあえず新神は、おばさんの後を付いていくことにした。

 少し遅れて、牛子も後に続いていく。

「ここよっ! 見て!」

 アパートの一階部分、共有部分の通路に置かれた、それを指さすおばさん。

 新神がまじまじとそれを見た。

 ……それは、生活臭溢れる燃えるゴミであった。燃えるゴミが透明のゴミ袋の中に入って括られている。

「はい?」

 意味がわからず、新神はおばさんにそう言った。

「あのね、お隣さんが勝手に共有部分にゴミ置いてっちゃって困ってるのよっ! 毎回毎回、共有部分にゴミ置いてっちゃうのよ。なんとかしてアンタ達っ」

「はい? それは貴方が直接に注意すれば済む話なのでは?」

 新神は至極当然のことを言った。

「違うのよっ。言葉が通じないのよ。外国人なのお隣さんがっ。聞いたこともない言葉で、たぶんアフリカかどっかの国よ。黒人だし、間違いないわ」

「はあ、なるほど。――牛子クン。スマートフォンは持ってきているかね?」

「はい、先生。ここにあります」

 そう言って、後ろに控えていた牛子はスマートフォンを新神に見せた。

「よろしい。おばさん、お隣の方は在宅中なのですか?」

「たぶんね。物音がするし、居ると思うわよ。……じゃ、アンタ達でなんとかしてね」

 そう言って、おばさんは勝手にどこかへ向かって去っていった。

「勝手な人だなぁ。――まぁいい、牛子クン、スマートフォンで言語翻訳してくれ。今のスマホならほぼ世界中の全ての言語をカバーしている。任せたぞ」

「はい、先生。わかりました」

 やっぱり、勝手な人というのは勝手な人を引き寄せるのだろうか? そんなことを思いながら、牛子はスマホの操作をした。



 ピンポーン! おばさんの隣の部屋のインターフォンを新神が押した。

 すると、すぐドアが開いた。

 出てきたのは、確かにおばさんの言った通りの黒人であった。

 ひょろりと背が高く、目がギラギラとしていて、なにかの民族衣装らしき衣服に身を包んでいた。

 確かに一見して、異国の人だとわかる見た目であった。

「こんにちは。少々よろしいでしょうか?」

 その異国風の男性に対して、新神は日本語で語りかけた。


「ウポポ。ンポ?」

 聞きなれない言語。スマホでそれを録音していた牛子が解析ボタンを押す。

 ――しかし、エラー表示がでる。

「ゴミ捨ての件についてお話したくてお伺いしました」

 新神が続ける。

「ンポンポ、ウポポ」

 解析を続ける牛子。しかし、また、エラー表示がでた。

「ダメです先生。たぶん、スマホで対応してない言語圏の方です。例えば、アフリカの少数民族とか?」

「なるほど」

 しばし、思案する新神。

「日本語は話せますか!?」

 ダメ元で新神はそう言ってみる。

 しかし。

「ンポポポポ。ンポポ!」

 まるで、通じてない様子だった。

「ダメだ。お手上げだ」

 肩をすくめて降参する新神。

 と。相手の黒人男性がアパートの部屋の中に引っ込んでいった。

「どうします? 先生?」

「うーん」

 とりあえず、どうしようもないよな。という感じで2人は所在なさげにそこに留まっていた。


 と。ドアが開いて、黒人男性が出てきた。

 肩からは紐をぶら下げていて、小さな太鼓が2つそこには付いていた。

「ンポポ!」

 黒人はそう言うと、突然、2つの太鼓を乱打しはじめた。

 激しいリズムで太鼓は、ポポポポポポポンッ! と鳴り響く。

 そして、そのリズムに合わせて黒人男性はダンスし始めた。

「なんだなんだ? ひょっとして――」

 新神と牛子は顔を見合わせる。

「「一緒に踊れってこと!?」」

 なにしにここに来たんだっけ? と思いつつも、2人は黒人男性と一緒に踊ることにした。


「ンポポ! ンポポポポポ!!」

 男性は激しい奇声をあげて、力強くダンスを踊っている。

 2人も負けじとそれに合わせて身体を躍らせる。

 ――そして、5分後。

 3人のダンスがヒートアップしていると、近所の人達がなにごとか? と集まってきた。


「なんだなんだ?」

「祭りか?」

「いいぜ、一緒に踊っちまえ」

「イヤッホゥ!」


 などと、近所の暇そうな人達が踊りに参加しだし、輪に加わった。

「ンポポ! ンポポポポポ!!」

 ダンスは盛り上がっていき、思わぬ国際交流イベント。

 10人弱のその集団はなんとも言えない一体感を味わうことになった。


 ――2時間後。

 日が落ちてきて、辺りが暗くなってきた頃。

 ようやくダンスは終わった。

 全員汗だくでヘトヘトだったが、なんとも言えない充実感に包まれていた。


 近所の人達と軽く挨拶を交わして、またやろう、と、別れを告げた後、その場には黒人男性と新神と牛子の3人だけが残っていた。

「しかし、なにも解決しなかったな。もう暗くなったし、ヘトヘトだし、今日は帰るか」

 新神がそう牛子に話しかける。

「そうですね。言葉が通じないんじゃどうしようもないですしね」

「しかし、この黒人どうやって日本で生活してるんだろうな? 仕事とかどうしてるんだろうか?」

「さあ? 私に聞かれてもわかりませんよ」

 ……などと、2人で会話していると。

「ンポ!」

 おもむろに、黒人が共有部分に置いてあったゴミ袋を手にし、それをゴミ捨て場へ向かって捨てにいったのだった。


「――なんだ? なんで急に?」

 新神が謎めいていると。牛子も。

「さぁ、皆目見当がつきませんね」

 と、一緒に首を捻った。


「まぁ、でも、これで一件落着。解決したということでいっか」

「はい。結果オーライです先生」

 そう言って納得したことにした2人は、新神ビルへ向かって帰っていくことにした。

 丁度、夕日が落ちた頃で、空には星が瞬きだす時間帯。

 しかし、新宿の空を見上げてもほどんど星が見えることはなかった。



 ――次の日。

 新神なんでも相談屋の室内。

 4つ並んだパイプ椅子の上に横たわっている新神の姿があった。

「ううううう。全身が痛い。牛子クン、早くシップを貼ってくれ」

 うつぶせに寝て、服をまくり上げ、背中全体が露わになっている新神。

 そこへ、牛子が先ほど買ってきたシップを大量に貼り付けていく。

「いててててて、し、しみるーっ! もっと丁寧にやってくれ牛子クンっ」

「なーに、筋肉痛くらいでそんな大げさになってるんですか。もっと、自分の痛みに対して強くなるべきです、先生は!」

 と言って、ぱぁん! と、シップが貼られている背中部分を牛子は叩いた。

「いてーーーーーーーーーーーーーっ!」


 新神の筋肉痛は、その後3日間は続いたという。



第4話 ご近所トラブルは地球を救う!? closed.

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