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鍾繇一族  作者: 涼風隼人


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9/11

第9回 鍾繇、初出仕をする

 冠礼の儀を終えて、四年が経過した。鍾繇、二三歳である。

 

 この四年間も、師である荀爽と共に学問、著作の手伝いに励んできた。

 今は春、鍾繇は庭の掃除をしながら、優しい木漏れ日からほのかな暖かさを感じていた。そこに、家人から「師がお呼びです」、と声を掛けられた。

 

 すぐに、荀爽の書斎に向かった。

 「元常、只今、参上致しました。」

 「お前にとって、いい話であるか、悪い話であるかは分からぬが・・・。」

 「はい、どのようなお話でしょうか。」

 

 「元常、お前は潁川郡の孝廉に挙げられた。」

 「えっ。私が・・・。」

 

  孝廉というのは、地方官が優秀なものを中央に推薦する制度であり、官途への入り口となる。

 

 「その年で孝廉に挙げられるのは名誉なことである。しかし、中央で働くということは、党錮の禁が三度起きれば、その嵐をまともに受けることになりかねない危険がある。」


 「先生、この話は是非、受けたいと思います。」


 「そうか。お前の志は、官途にあるか。」


 「はい。冠礼の儀より考えてまいりましたが、自分の学問を政に活かしたい、と常々考えておりました。」


 「そうか。それなら、その道へ進むとよい。お前がいなくなると、私は些か不便に感じるが・・・。」

 荀爽は笑いながらそう言うと、続ける。


 「私は当面、この生活を続けるつもりだ。お前の進む道は茨の道となる可能性もあるが、お前なら何とか

なるであろう。官途に就く以上、天子様、人民に尽くすことを一番と考えて励むように。」

 「お言葉、この胸に刻みました。数日の内には、洛陽に向かいたいと思います。」


―数日後―

 既に鍾繇の姿は、洛陽にあった。

 鍾繇は早速、尚書台に向かった。


 「豫洲潁川郡長社県より参りました、鍾繇元常と申します。任官の手続きをお願いしたく。」


 「潁川郡の鍾繇・・・。お前の任官先は、この尚書台である。明日より、尚書郎として励むように。」

 鍾繇は拝礼して、任命書を受け取った。


 「明日からが、自分の学問を活かすときだ。」

 心の中で、呟く。

 こうして、鍾繇は「政」への第一歩を踏み出したのである。

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