第40回 鍾毓、司馬師の強権を見る
夏侯玄の件があった事により、司馬師の曹芳に対する不信感は高まり続けた。
そして、権勢究めた司馬師は曹芳を廃位、新たに「曹髦」を立てたのである。
鍾毓は「これは許されることなのか。」と自問自答した。
司馬師を排斥しようとした夏侯玄は三族含めて処刑され、天子を挿げ替えた者は罪に問われない。
こう考えると、自分の廷尉という職務が馬鹿らしい、と思えてならなかった。
「この世の正義は何なのであろうか・・・。」
いくら考えてもわからないが、「強い者が勝つ」ということだけは、わかった。
難しく考えてもしょうがない。
しかし、その司馬師の側には、鍾会が付いている。
今や完全な側近として、政治、軍事ともに活躍をしていると聞こえてきている。
「士季は止めなかったのであろうな・・・。」
当然、そこまでの力は無いであろう。しかし、諫言の一つくらいは出来そうなものだが、それは相手次第、ということもわかっている。
自分が諫言を呈してきたのは、明帝であるが、明帝は聡明であり、家臣の言葉に耳を傾ける姿勢をもっていた。それがわかるが故に、こちらも遠慮をせずに諫言が出来た。
鍾毓は、司馬師のことは実際には良く知らない。だが、そういう感じでないのであろう、という想像は容易についた。
そして、時代は動き続けるのである。




