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第28回 鍾繇、再び男子を授かる
西暦二二五年(黄初六年)、鍾繇七五歳。
今日の鍾繇邸には、いつもと違う緊張感が流れている。
その中で、特に女たちは忙しく動いている。
そして、しばらくすると、赤子の産声が聞こえた。
「生まれたか」
鍾繇は、呟いた。
なんと、この年に第四子となる男子を得たのである。
鍾繇の家は、驚きと喜びで沸いた。
鍾繇はこの名を「会」とした。「鍾会」の誕生である。
「会」には、集まる、交わるといった様な意味があり、鍾繇は才知が集まり長けた者になって欲しい、という願いを込めてこの名前とした。
兄にあたる鍾毓は、この時一八歳で既に黄門侍郎をつとめているが、一四歳から官途についている俊才であった。
後に、この年の離れた兄弟は、全く別の道を歩むことになるのだが、さすがの鍾繇もそこまではわかっていなかったであろう。




