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鍾繇一族  作者: 涼風隼人


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第18回 鍾繇、軍制の成果を挙げる

 関中の重要拠点と言えば、長安になるが、今の長安は李傕、郭汜の争いの傷がいえず、重要拠点の体を為していなかった。

 

 よって、鍾繇は実質的に軍事の拠点となっており、交通の便がよい「潼関」に拠点を置いた。

 

 鍾繇の役目は、何と言っても「争いを起こさせない」ということである。

 

 要注意なのが、涼州の馬騰と韓遂である。

 

 この二人の争いは、必ずと言っていいほど、関中に飛び火し、そのたびに関中が騒がしくなるのである。

 

 節を持している鍾繇は軍権を発動することは出来るが、この節はあくまで「万が一」の時の為であり、軍事経験のない鍾繇が容易に奮っていいものではない。

 

 曹操が期待しているのは、鍾繇の「調整能力」なのである。

 

 この期待に応えるべく、鍾繇は涼州と漢中に多くの間者を放ち、徹底した情報収集を行った。

 

 今のところ、異民族の動向を含めて、大きな動きはなさそうだ。この状態を継続するのが、鍾繇の最大の役目である。

 

 その最中、とうとう曹操と張繡が宛城にて激突した。

 

 圧倒的な兵力差から、張繡は降伏したが、その降伏は計略であり、曹操は散々な打撃を受けて、撤退を余儀なくされたという。

 

 曹操からは、引き続き、涼州と関中を任せる、という指示があり、鍾繇は警戒を怠ることなく、民政と軍政の安定に励み続けた。

 

 そして翌年、再び曹操は宛城の攻撃を行ったが、籠城戦に持ち込まれ、最後は劉表の援軍に押し負けて、退却を余儀なくされた。それでも、鍾繇により、涼州と関中の平安は保たれている。

 

 そして更に翌年、三度宛城の張繡攻めを行い、今度は全面降伏を受けて、南方の後顧の憂いを取り除くことに成功した。

 

 この時、涼州では、馬騰と韓遂の対立が表面化しそうになったが、鍾繇が間に入り調整を行い、事なきを得た。

 

 そして西暦二〇〇年(建安五年)、歴史上名高い袁紹との「官渡の戦い」が勃発する。

 

 曹操の領する官渡城に袁紹軍は総勢一〇万以上の兵力、一方曹操方は三万足らずの兵力と、かなりの劣勢であった。

 

 しかし、投降してきた「許攸」が全軍の兵糧を集積している「烏巣」という場所の警戒が薄いとの情報を持ち込み、曹操は自ら攻め込み焼き討ちに成功、袁紹軍は撤退を余儀なくされた。こうして、曹操軍は劣勢から勝利をつかんだ。

 

 この烏巣急襲には、鍾繇が涼州や関中で集めて送った良馬二千頭が使われ、これに対して漢の名宰相「蕭何」の名前を出して曹操は鍾繇を評価した。

 

 そして、二年後に袁紹が病死し、曹操陣営は、冀州他北方に散らばる袁紹勢力の掃討戦を開始する。袁紹亡きあと、袁譚と袁尚の対立で一枚岩になれないところを各個撃破され、官渡の戦い開戦から五年にして、遂に河北の統一を成し遂げたのである。

 

 その間の鍾繇であるが、袁紹が病死した後、許都に戻り、尚書令に出世した。

 帝都としての機能は引き続き許都に残し、曹操は、軍事的機能を、かつて袁紹が本拠地としていた「鄴」に移した。このあたりから、鍾繇は本格的に「曹操の国」の為の法制度の設計や立案を具体的に始めたのである。

 

 その様な最中、鍾繇の家に一つの慶事が訪れる。

 西暦二〇七年(建安一二年)、待望の男児の誕生である。


 実は、過去、二人の男子が生まれてきたが、いずれも早世してしまい、現時点まで跡取りが決まっていなかったのである。そこに、鍾繇五六歳にしての跡取りの誕生である。

 

 名は、「毓」と定められた。この名前には、「養う・育てる」といった様な意味があり、徳を養い、礼を育てるような儒者になって欲しい、という願いが込められている。後に「神童」と称される子の誕生であった。

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