1/18
第1回 鍾繇、誕生する
西暦一五一年(元嘉元年)、豫州潁川郡長社県で一人の男子が生まれた。
姓は鍾、名は繇という。
母親は鍾繇を生んですぐに、父もそれほど変わらない時期に病にかかり、早世した。
潁川郡の鍾氏といえば、名家中の名家であり、鍾繇は両親を亡くしたとえいえども、族父の「鍾瑜」に預けられ、大切に育てられた。
幼少期の頃に、自分の両親はもうこの世にはおらず、鍾瑜が親代わりであることは説明されていた。
その説明をしたからなのか、非常に物分かりがよく、わがままをいわない子供であった。
他の子供たちと遊ぶよりも、鍾瑜の書斎にある書物に関心を示し、まだ字を覚えていない頃から、書物を眺めていた。
鍾瑜は思った。
「この子は、学問をやらせたら大成するかもしれぬな。」
結論として、この鍾瑜の予想は的中するどころか、予想の範疇を越したものになるのである。




