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悪女と呼ばれた令嬢の真実  作者: 藍沢 理
第3章 光の系譜――エリアーナが示す真実
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第2話

 廊下の窓辺。朝日が差し込む静かな場所で、セバスチャンと二人きりになった。


 彼は深く息を吐いてから、重い口を開く。


「お母様、アリシア様は……浄化の聖女(ピュリフィケーション)の血統でいらっしゃいました」


 浄化の聖女。聞き慣れない言葉だった。


「エルドリア家は、千年前に闇の魔王を浄化した伝説の聖女の末裔なのです。代々、闇を浄化する光の魔法を受け継いできた一族」


 千年前。伝説。そして――光の魔法。


「しかし、その力は世代を重ねるごとに弱まっていき……お母様の代では、ごく微かに残る程度でした。それでも、お母様は優れた治療魔法の使い手でいらっしゃった」


 セバスチャンの視線が、私の右手へ向く。母の指輪を見ているのだろう。


「お嬢様も、その血を引いておられます」


 私に力が? そんな実感はまったくない。十四年間、私はただ苦しんでいただけ。誰も救えなかった。母も、自分自身も。


「でも……私は何も……」

「呪いで封じられていたのです」


 セバスチャンの言葉が、胸に突き刺さる。


「ロドリゴ・ヴァルトハイムはおそらく、お母様から力を奪うために呪いをかけたのでしょう。そしてお嬢様にも、同じ呪いを。力が目覚めないように。聖女の血統を、根絶やしにするために」


 だから、私は何もできなかった。


 だから、助けられなかった。


 力はあったのに、封じられていた。


「しかし今、呪いは解けました」


 セバスチャンが私の手を取る。皺だらけの、温かい手。


「お嬢様の中に、力が眠っているはずです。それを目覚めさせることができれば……」

「目覚めさせられるんですか?」

「シルヴァニア王国に、光の神殿という場所がございます。聖女の血統に関する知識が、そこには残されているはず」

「行きます。今すぐに」


 希望という名の、小さな光が見えた気がした。


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