第5話 解呪方法
賢者の塔――シルヴェリアに戻り、国立魔術研究機関を訪れた。
七階建ての塔。各階には膨大な魔術書が保管されている。
受付で目的を告げると、四階の禁術資料室へ案内された。
薄暗い部屋。書架が壁一面を覆っている。埃の匂いが鼻をつく。
「幸福喰らいの呪詛について調べたい」
司書に告げると、彼は眉をひそめる。
「その呪術は……禁術に分類されています」
「知ってる。だから調べたいんだ」
司書は迷うような表情を見せたが、勇者の身分証を見せると、渋々書架の奥へ案内してくれた。
古びた革装丁の本。タイトルは「古代黒魔術大全」。
ページをめくる。禁呪の項目を探した。
あった。
『幸福喰らいの呪詛――対象の幸福感情に反応し、生命力を吸収する呪術。施術には高度な技術と長時間の儀式を要する。解除は極めて困難』
さらに読み進める。
『施術方法。対象の血液を用い、満月の夜に儀式を執り行う。呪印を対象の心臓部に刻む――』
呪印。エリアーナの心臓には、見えない刻印が刻まれているのか。
『解除方法。呪いを別の対象に移すことで、元の対象を解放できる。ただし移された対象は強い魔力と意志を持たねば、即座に死亡する――』
代償の法則か。
呪いを誰かに押し付けるしかない。
俺は本を閉じた。
「見つかりましたか?」
セバスチャンが尋ねる。
「ああ。解除方法も」
ただし、代償が必要だ。誰かが犠牲にならなければならない。
俺が引き受ける。そう決めた。
次は、犯人を特定する番だ。