4話 3日が立った世界
前回までのあらすじ
見事に加冠を果たし、晴れて聖竜国国王アステルとなったアステル。しかし、その即位式でアドリブで「200年続いた戦争を武力をもって終結させる」と誓ってしまう。
それを見ていたリシュアンはノエルはあきれ顔だが武官、文官問わず泣き崩れ、さらには各国が聖竜国を狙い兵を派兵する事態へ。
激動の時代が今、始まる。
「ほっ、報告です!氷剣軍北西部前線周辺に12万を集結させている模様!」
即位式から3日経った王宮はあわただしく動いていた。俺、アステルのいる軍議の間も忙しく動いている。
「北西部一帯に通り道を作れ!北部平原で殲滅させる戦略を立てる!」
早い。さすがは軍総司令といったところか。
俺はその部屋を去った。俺がいたところで何かできるわけでもない。それなら、内政・外政の最終決定権を持つ俺の力を発揮するとき。王宮政務の間へ向かった。
「様子を見に来たぞ。リオネル」
「だっ、大王様」
大臣らは全員ほぼ同時に跪いた。そんなことしなくてもいいのに。
「いい、調子はどうだ」
「はい。法案3つがそろそろ着手できるかと思われます」
「頼んでおいた税改正、孤児院補助、兵士恩給制度法か」
「ええ、今月中には上奏できるかと」
「焦らずともよい。外政はどうなっている?」
「遠地にある水央国との国交が開ける頃合いかと」
「水央か、作戦場要地だな。頼んだぞ」
傾国の美女ミレイユが頷いた。政治って大変だな。
「奴がこの軍の総大将、リシュアンだ!殺せ!!首を取れ!」
物騒な声が下から響いてくる。
「殲滅のメロディーを。セレーネを右から刺して。正面は俺の重奏部隊で固めて」
「きゅ、急報!左翼が一部決壊!なだれ込んだ敵の総数は1000を下らないと!」
「左翼を放棄させろ。左翼の兵は俺の本陣に流すか、右翼に回せ」
予想内だ。左翼はあえて決壊させた。左翼じたい、3000対10000で開戦したのだしな。
「右翼ダリオンに伝令。左翼の兵も含めクレシェンド、と」
ダリオンのクレシェンドは受け止められない。いや、受け止められるはずもない。
「この音楽に勝利のメロディーというカーテンコールを響かせようか!俺も出る!下のセレーネにも伝令を。カスティエル、しばし本陣を預ける」
「しばし、ですか?勝利まで、でしょ?」
「そ、そうかもな」
戦場の音楽のノイズを取り払う。
「直下兵団『葬奏玉』を呼べ。四柱にそれぞれの小隊を率いさせろ!」
ドガッと馬で地を蹴った。白銀の剣を引き抜くと太陽の光が反射した。戦場の星の如く。葬奏玉とは、俺の直下兵団で僧兵数は1000。黒と赤の全身甲冑を装備した最強兵団。ノエルが言うには葬奏玉は聖龍の兵団の五本指には入ると。
さて、勝つか。