1話 1か月半
聖竜国王都———レドリアの王級の最奥、聖玉宮の本殿、その地は今、激動の時代を生み出そうとしていた。
「あーあ、前線あいつらに任せて大丈夫だったかなー?」
「そう言うなって。信じることから始まるんだから、な?」
「お、おお」
聖玉宮の控室の一室で俺は士官学校時代からの親友とも言っていい、ノエル――――いや、北部軍第7大隊指揮官ノエルと話していた。
「し、失礼致します。そろそろ、本殿の方へ」
「分かった。行くぞリシュアン」
歩き出した。俺は北部軍第6大隊指揮官リシュアン。15歳。一応、この国の王様とは友達?的な関係ではある。いや、まだ王様ではないか。皇太子殿、と言ったほうがいいか。
「先王の逝去から1か月半、大乱などもなく安定はしているな」
「あいつの兄さんは王位継承権持ってないからと言えどな」
「一荒れしかねない状況ではあったな」
二人の将軍が王都の最奥で反乱の話をしている。ククッ。
「冗談が過ぎるぞ。二人とも」
「「ほ、北部指令様!」」
慌てて2人して跪いた。北部指令様———北部総司令統括官聖騎士ガブリエル様だ。剣を抜いたら最後、敵は一人もたってられないって噂のこの国の軍事、軍政のNO.5だ。俺たちの直属の上官でもあるしな。
「よい。跪くな。冗談だ」
俺とノエルは立ち上がるとそっと胸を撫でおろした。ビ、ビビったー。
「それよりも、もう始まるぞ」
「は、はい!」
俺とノエルは慌てて走り出した。
「皇太子様、いや、大王様」
ぼんやりと外を眺めていた俺に話しかけてきた者がいた。聖竜国主席執政補佐官イザベルだ。
「なんだ?」
「いえ、即位式いつでも始められるという報告に参った次第にて」
「分かった。俺も行く。お前は先に行っておけ」
「は、はい!」
ガチャッバタン!というイザベルが出て行った音が俺の心臓をより、締め付け、圧迫した。なにせ、この15歳の少年に一国の王という座は重すぎる。父上がこの世を去られてから1か月と13日が経過していた。父上は享年34歳。若い。若すぎます。兄上も自分には王位継承権がないと断られ、半ば押し付け的に俺に王位が回ってきた。
正直なことを言って、権力や富とかはいらない。ただ、戦争がなくなればいいのに思うことが時々あるだけだ。
廊下を歩いても、天井から下がるシャンデリアを見ても緊張感は微塵も薄れない。スピーチ原稿が飛びそうなレベルだ。
ここで、俺についても話しておこう。俺の名前はアステル。15歳。先王———父王の次男であり、唯一の正室の子。正室の子を違う言い方するなら、嫡男‥‥かな?父王は1か月半前、謎の大病にかかり、発症からたった一夜で、吐血し、死んだ。病名は分かっていない。俺は曲がりなりにも王位継承権を持ち合わせる人間であり、子供だ。未熟すぎる。
こんな俺に何が務まるというのだろう。
どうも。一ノ瀬輝夜という者です。
まずは、この小説をここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
初心者「極み+」ですが、温かい目で見守っていただけると幸いです。
では、また次回お会いしましょう。