決して『Hey!Christian!』を観てはいけない部屋
※しいなここみ様主催「この部屋で○○してはいけない企画」参加作品。
※アメリカになろう関連作品(日本が舞台の為に出展作品になりません)。
※ローファンタジーですがホラー風味がとても強め
親友の美沙が一日だけマンションの部屋を留守にするというので、私が留守番をすることになった。
留守番とはいっても、じつはお願いしたのは私のほうだ。彼女の豪華なマンションの部屋にぜひ住んでみたかったのだ。
「置いてあるものは動かさないでね。ゲーム機は好きに使っていいわよ。猫とも遊んでいいわ」
私を連れて、美沙は部屋の中を案内してくれた。
「汚したらちゃんと掃除してね? ベッドのシーツは私が帰るまでに取り替えて」
「男なんか連れ込まないわよ」
私はそんなつもりは本当になかった。
「ただ、いつもの安アパートとは違う暮らしがしてみたいだけだから」
キッチンへ案内すると、美沙は冷蔵庫を開けた。
「中に入ってる食料品、自由に食べていいわよ。賞味期限の近いものから片付けてね?」
開けられた冷蔵庫の中を見て、私は少しだけ驚いた。
「ペットボトルがたくさんあるね? 色んな種類のジュース?」
「そうよ。通販番組で買ったやつ」
「ジャパンネット・タバタ?」
「ヘイ! クリスチャンよ!」
「何それ?」
「アメリカのほうでやっている通販番組」
「知らないわよ」
美沙は振り向くと、脅すように言った。
「コレはすごく大事なことだから言っておくけど、ヘイ!クリスチャンは観ないでね!」
「えっ?」
「だから、ヘイ!クリスチャンは観るなって言っているだろうが!」
「そ、そこまで言われたら観ないけどさ……」
そう言われて、思わずテレビのほうを観た。
不自然だった。テレビのまわりには髭を生やしたダンディな白人男性とアジア系女子が並んで写る写真や「Hey!Christian!」のステッカーがここぞとばかりに飾られている。
私は聞いてみた。
「ヘイ! クリスチャン! を観るとどうなるの?」
「わからない」
「わからない……って?」
「今のところ彼のファンは日本人で私ひとりだから……」
「そう……あはは……」
「それじゃお留守番、お願いね」
「いや、もうちょいせつめ……」
美沙はまるで海外旅行にでも行くみたいな大荷物を身のまわりに出現させると、部屋をすうっと出ていった。
「へへ……。ブルジョワ気分」
私はふかふかのベッドの上で飛び跳ねて、ゲーム機で遊び、猫と遊び、冷蔵庫のソーセージなどを食い尽くすと、やることがなくなった。
ふいに気になった。
『ヘイ! クリスチャン! を観るとどうなるんだろう……?』
私はスマホで「Hey!Christian!」を調べながらテレビをつける。
私は吸い寄せられるように、そこへ近づいていった。
思ったよりもスグに私はその番組を観ることへ漕ぎつけた。
司会はボザボサ髪の白人男性と赤い眼鏡をかけたアジア系の女子。
英語で喋っているから何もわかんないや。
でも、暇だからだろうか。刺激を求めているからだろうか。ハイテンションで商品紹介をしている彼を観ているうちに注文をしたくなった。テレビ下の引き出しにカタログがあって、この手筈を踏むなら国際電話で頼めるようだ。こうみえて私は英語検定3級所持者。海外留学を夢みて頑張っていた時期もある。何とかカタコトでも通じるかも……!
『おい。何やってんだ』
「ひっ!?」
テレビの画面にゴスロリの格好をした美沙が突然映った。
いや? これはゴスロリ?
彼女は明らかに怒っていた。両目を蒼く光らせて画面越しに私を睨む。
「まっず……!」
私は急いで彼女の家を出ることにする……が、ドアが開かない。
「開かない……! 開かないよ……!」
振り向くとテレビの画面から美沙がぬうっとこの部屋へとやってきた。
私のほうへ古めかしい木の棒を突きだす。
「す! すごいね! 美沙ってば魔女だったの!? かっこいいなぁ!!」
冷や汗が止まらない。そして彼女は眼を蒼くぎらつかせたまま魔法を私へ放つ――
私は9階の窓からひきつった作り笑いのまま落下していった――
∀・)ご一読ありがとうございました♪♪♪企画の主流にのって作品を書こうと思ったのですが、なんだかアメリカになろうとも繋げたくなり。美沙って魔女なんじゃないか?と思ってみたり。そういうのが結集をして本作ができました(笑)(笑)(笑)
∀・)Hey!Christian!は9/1より連載が開始します。気になれば是非チェックしてね。