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EP6 初めての任務(2)


 数本目かの大木が倒れ、 山が築かれたところでショコラは斧を地面に置いた。


「ふぅーっ……! やっぱ慣れてるとはいえ、まとめてやると骨が折れるなぁ」


額の汗をぬぐいながら、彼女は木陰に腰を下ろす。


その隣に立っていたアルベドが口を開く。


「悪くない手際だ。お前は伐採に慣れているようだな」


「村にいた頃、よく手伝ってたんですよ」


斧を振る手が止まった森には、 沈黙が訪れる。


聞こえるのは鳥の鳴き声と、風が木々を揺らす音だけだった。


ショコラはその静けさに包まれながら、切り倒した木々を眺めた。


「これだけあれば足りますかね?」


「あぁ、十分だろう」


その時、 森の気配が変わったのを感じた二人はお互いに目を合わせた。


アルベドは人差し指を立て鼻に近付ける。


それを見たショコラは頷き、できる限り音を立てずゆっくりと立ち上がり、斧に手をかける。


森の奥から、不意に低い唸り声が聞こえた。


乾いた枝を踏み砕く音が続き、やがて複数の気配が近づいてくる。


ショコラは反射的に斧を構えた。


森の奥から迫る複数の影――。


ショコラの背筋を冷たいものが走った。


低く唸る声、 鋭い爪音。 姿を現したのは、 灰色の体毛を逆立てた獣――ガル・ウルフ。


その目は獲物を射抜くように光り、牙を剥き出しにしていた。


群れの一頭が地を蹴った。


狙いはショコラ……ではなく、 その横に立つアルベドだった。


「っ……!」


 咄嗟にショコラは手を伸ばす。


「――『聖障壁セイクリッドバリア』!」


 眩い光が走り、 半透明の防御壁がアルベドの前に展開された。


突進してきたガル・ウルフがそれにぶつかり、激しい音と共に弾き飛ばされる。


「……ほう、 これがお前の力か」


 アルベドは壁の向こうから淡々と声を漏らした。 その瞳には動揺の色はなく、 ただショコラを見つめている。


「よし、 間に合った!」


ショコラは息を荒らげながらも、 新たに迫るガル・ウルフに対し すかさず斧を構える。


彼女は大きく振りかぶると――投げた。


銀の刃が唸りを上げて飛び、獣の額を狙う。


だが、ガル・ウルフは鋭敏な反射で身を翻す。


斧は外れ、背後の幹に深々と突き刺さった。


外した。


しかし、それは狙い通りでもある。


回避して体勢を崩した獣へと、すでにショコラが踏み込んでいた。


「聖儀執行!」


ショコラの腕を青い炎が纏い、 それは棒状の形となる。


炎が収まると、 彼女の武器である純白のトンファーが現れる。


それを振るい獣の顎を打ち抜いた。


ガル・ウルフの体がぐらりと揺れ、次の瞬間、崩れ落ちるように倒れ込む。


「ひとつ!」


 ショコラは荒い呼吸を整えながら声を上げた。


背後から、アルベドの冷静な声が響く。


「今のは悪くない」


「でしょ!」


ショコラは息を弾ませながら、半ば笑顔で振り返る。


「気を抜くな。 まだ数は残っている」


森の奥から、 新たな獣の咆哮が響いた。


ガル・ウルフの倒れた死骸を踏み越え、 新たな影が現れる。


三体。 鋭い牙を光らせ、 ショコラを囲むように間合いを詰めてきた。


ショコラはトンファーを構え直した。


その背に落ち着いた声が降りかかる。


「恐れるな。 お前の得意なやり方で戦え」


「え?」


「聖障壁を使え」


「聖障壁は一度に一つしか展開できないんです。 一つ展開してる時にもう一つ出そうとすると、 先に出していたのが消滅するんです。今アルベドさんに使ってるから守れな―」


その言葉を、 冷たい言葉が遮る。


「私がコイツらにやられるとでも言いたいのか?」


「そ、 そういうことじゃ……」


アルベドは溜息を吐く。


「お前は目の前の敵に集中しろ、 私の事は気にするな」


「……はい!」


 次の瞬間、ショコラは左手を前に突き出した。


「聖障壁!」


目の前に半透明の立方体が展開される。


飛びかかってきた一体がそれに衝突し、弾き返される。


その隙に、彼女は壁を足場のように踏み込んだ。


 ――ガンッ!


高く跳び上がり、 宙からトンファーを振り下ろす。


叩きつけられた一撃は、 獣の頭を打ち砕いた。


「よしっ!」


 ショコラは軽やかに着地し、素早く後退する。


だが、別のガル・ウルフが側面から迫っていた。鋭い牙が彼女の腕を狙う。


「っとと――聖障壁っ!」


 咄嗟に腕の横へ展開された光壁が、獣の牙を阻む。


鋭い歯は壁に突き刺さり、 小さなヒビを走らせた。


張り付いているガル・ウルフにショコラのトンファーが横薙ぎに払う。


鋭い打撃が頸部を捉え、獣が地面へ沈む。


「いただきっ!」


アルベドは腕を組みながら冷静に見ていた。


「危うい戦い方だな」


「えぇ~……厳しいなぁ。 ほめてくれてもいいのに!」


ショコラは口を尖らせながらも、素早く周囲を見渡した。


最後の一体が低く唸り、 地を蹴った。


その動きは先程よりも速く、 真っ直ぐショコラへ牙を向けて突っ込んでくる。


「来たっ!」


ショコラはあえて動きを遅らせた。獣が目前に迫る、その瞬間――。


「今っ!」


彼女は地面に斜めの角度で聖障壁を展開する。


突進していたガル・ウルフがその傾斜に乗り上げ、勢いのままに飛び上がる。

 

その隙を見逃さなかった。


ショコラは素早くフィユタージュにロザリオを装填した。


SACRED(セイクリッド)BLAZING(ブレイジング)


聖力が青い炎となりフィユタージュへと走る。


それをガル・ウルフへと叩き付けた。


聖棍撃(セイクリッド・インパクト)!!」


鈍い音と共に獣の身体が弧を描き、 地面に叩きつけられた。 痙攣し、やがて動かなくなる。


「……ふぅ!」


 ショコラは荒い呼吸を整えながら武器を下ろした。


アルベドが近づき、静かに言葉を落とす。


「腕は立つようだ」


「ぶいっ!」


 ショコラはにかっと笑い、 ピースサインを立てた。

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