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不可解な学校5

 八浜美丘が再び目を覚ました時、体育館裏には自分の血痕だけが残っており誠志郎の姿はなかった。そして、体の痛みも傷もなくなっていた。

 教室に戻ってから誠志郎に礼を言おうと思っていたのだが、教室にも彼の姿はなく夢でも見せられていたかのようだった。

 

 そして、入学式が無事決行された。その場には内田総介を含めた不良達の姿もあり、先程のことは教師達にバレてはいないのだと八浜美丘は考えた。

 だとしたら、誠志郎は何故この場にいないのだろうか。そう思うのは必然で、もしかしたら自分の身代わりにひどい目に遭っているのではないかとも考えているようだった。


 話も長くて面倒くさいと感じる入学式を終え、クラスごとに教室へと帰っていった。

 教室に着くと十分間だけ休憩があると伝えられ、多くの生徒が深いため息を漏らした。いくら面倒な入学式とは言えど慣れない環境での重苦しい式は息が詰まる。


 生徒達は近くにいる新しい仲間と会話を弾ませた。だが、八浜美丘は誰かと楽しく談笑なんて気分ではなかった。

 八浜美丘は席を立つと、呑気に本を読む辻道の元へと向かった。


 読んでいる本に影がかかり、辻道は顔を上げる。その先にいたのが八浜美丘で少しばかり驚いているようにも見えたが、すぐに状況を察した。


「誠志郎の事?」

「ええ」

「誠志郎は家の事情で入学式も出ずにすっ飛んで帰った」

 辻道は淡々と説明し、再び本に視線を落とす。

「家の事情って?入学式よりも大切な事なの?」

 そんな質問が耳に入って来たからか、辻道は本を閉じて首をかしげる彼女の目を真っ直ぐに見た。

「入学式なんかより大切なことなんていくらでもあるだろう」

 気の籠もった力強い言葉に八浜美丘は気圧されたように一歩後ずさる。

「そ、そうよね。教えてくれてありがとう。これから同じクラスメイトとしてよろしくね」

「うん。よろしく。誠志郎にも伝えておくよ」


 八浜美丘はこの空間に柔らかな笑みを残し去って行った。

 良い人だな、なんて単純な事を辻道は思いながら再び本を開いた。

本日もご一読頂きありがとうございます。




星をひとつ頂けるだけで書くための活力になります。


よろしくおねがいします。

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