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ディア王国の王女であるということ2

 月夜に浮かぶ、誠志郎からの救いの声にアイシスは、スンと鼻を鳴らして笑みを浮かべた。

「あなたに何が出来るの。あなたが強いとか、そう言うことは関係なくて、あなたが男である。それだけが私達を救えない理由なんだよ」

 男と女。その性別にそれほどの差があるのだろうか。そう考えている誠志郎にとっては、アイシスの発言そのものが助けを求めているかの様に聞こえていた。


 だから、誠志郎は国の外で出会った、ある男の話を切り出したのだ。


「この国の外に、ライトという目の見えない男がいた」

 誠志郎が話し始めると、アイシスはハッとなり、動かなはずの体を無理矢理に起こした。

 誠志郎はアイシスの真剣な表情に気づいてか気付かずか、話を続けた。


「ライトって男は、男は女に護られる生き物なんだって思い込んでた。俺がこの国に入ってもタダでは帰ってこられないと確信している様だった。あいつには俺の未来が見えていたのかもしれないって今は思う」


「と、突然、何の話をしてるの?私に意味なく話しかけないで」

「気にするな。これは独り言だ」

 そう告げて誠志郎は自由に彼のことを語り始めた。


「そんでさ、この戦いでお前の必死な目を見て気が付いたんだ。あいつの…ライトの目は俺の未来を見越していた訳でも、この世界に絶望していたわけでもなかったのかもしれないって。何故なら、アイシス・ライト(あいつ)は何も諦めてはいなかった。生きることも戦うことでさえも。女兵士に力が劣ると知りながらも、あいつは強くなる道を選んだんだ」


 アイシスは息を飲み、その麗しき瞳にたくさんの涙を溜め込んだ。


「すべては君を守る為なんじゃないのか。()()()()()()()()()。それでも君は男を軽蔑し続けられるのか?」

 アイシスの瞳から涙が、ぽつりとこぼれ落ち。やがて滝の様に頬から流れ出した。


「できないよ。私…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 酷く冷えたこの月夜に、血に濡れた闘技場で誠志郎は優しくアイシス・グランデを抱きしめた。

「大丈夫だ。君も、君の兄貴も、俺が救ってやるから。俺がこのふざけた制度を壊してやるから」

 すると、アイシスは勢いよく顔を上げた。


「でもっ。そんな事は出来ない。この国にはディア女王がいる。ディア女王はあなたをよく思っていないけど、本当は寛大で優しさに溢れた素敵な人なんだ。私達の為なら業火にすら飛び込む人なの。とても裏切れない」

 そんな言葉がアイシスの口から飛び交うと、誠志郎は声をあげて笑い出した。


「なんだよ、あいつって嫌われてる訳じゃなかったのか!てっきり嫌われてるのかと」

「そ、そんな訳ない」


 誠志郎はんーと首を傾げながらも、大した案が浮かぶ事もなくゆっくりと眠りについていた。

 そんな自由気ままな誠志郎を見てアイシスは、肩の力を抜いていた。

「本当にこの人はなんなんだろうな。私を敵だと思ってないのかな。幸せそうに寝やがって…」


 アイシスは誠志郎に告げられた、普通の女の子とい言葉を思い出し頬を赤く染めていた。そして、誠志郎の頬をつねり呟いた。

「私も休もうかな」

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