不可解な進学校4
人気のない体育館裏。ここは不良達にとっては定番のたまり場といった空間だろう。
教師もこの場には訪れることがない。そんな危険な場所に連れてこられた八浜美丘は、五人の不良達に囲まれていた。
「で、私をここに連れてきて何するつもり?まあ、大体は想像ができるけれども、私は本気で抵抗するわよ」
身構える八浜美丘をみて不良達は笑っていた。
「総介聞いたか?」
緑髪の男が金髪の不良にそういった。この金髪の男は誠志郎の推測以上に狂った男、内田総介。その名は裏世界では聞いたことのない人間がいないくらいだ。
裏の世界でもいくつもの抗争があり有力な若手を自分の組に引き入れることが多々ある。そこで一際目立っているのがこの内田総介という男であり、多くの組からのオファーがきている。
「おい、糞女。お前は俺らがお前の体目的だとでも思ってるんだろ?」
「だったら何?違ってくれたらいいんだけどね」
この状況下でも淡々と会話をする八浜美丘に少しだけ感心した内田総介。けれども、彼は気味の悪い笑みを浮かべて八浜美丘の頬に触れた。
「俺らは強くならなきゃいけない」
「は?」
「だからよー。サンドバック殴るよりも人間殴る方が経験値が上がると思わねーか?」
その瞬間、内田総介は拳を握りしめ八浜美丘の頬を撃ち抜いた。思い切り殴ってはいないため、少しばかりよろけた程度だった。手を抜いて殴った理由は、意識がなくては殴ってもつまらないからというイカレタ思考のせい。
彼の取る行動に優しさは一つとしてない。
殴られたことにより口から出血をした八浜美丘は震えていた。今までどんな悪にも牙を向いてきた彼女にとって躊躇いなく自分を殴る人間は初めての出会いだったのだ。それに、彼が力いっぱい殴らなかった真意を本能的に察してしまっていたのだ。
初めて味わう恐怖心に彼女は涙を流していた。それを見て、不良達は内田総介を筆頭にケラケラと笑っていた。
それから五分ほど経過した。時間にしてあまり経ってはいないのだが、八浜美丘にとってはとてつもない長さだった。腹を殴られ、顔を殴られ、髪を引っ張られ。視界のどこかには必ず自分の血がある。
次第に不良達はヒートアップしていき足を使い始めた。パンチよりもキックの方が威力があることは歴然だった。この蹴りをまともに食らってしまえば八浜美丘といえど心身ともにどうなるかわからないだろう。
「よーし、そろそろ、総介の蹴りが見てーな!」
皆から煽られて、調子付いた内田総介は手拍子を要求した。
リズムに乗りながらも空を蹴り、八浜美丘を威圧しだした。
普通はたった一人の女子にここまでするだろうか。裏社会の人間にすら、そう思わせるほどのイカれた男がこの内田総介という男なのだ。彼は、きっとこれからの裏社会を牛耳る男になるのだろう。
彼自身もそうなることを信じて疑わなかった。
「おい、待て」
人気のない体育館裏。普段なら決して人が来ることのない不良達のたまり場に誠志郎が到着した。
誠志郎は八浜美丘の跡を追うように外に出たのだが、見失ってしまい多くの場所を駆けずり回っていた。そんな時に、人気のない場所から手拍子が聞こえてきて駆け寄った。そうして現在に至る。
「なんだよ。お前も参加したいのか?」
機嫌が良さそうな緑髪の男が誠志郎の肩に手をおいた。すると、その手を払い除け誠志郎は八浜美丘を抱きかかえた。
「八浜さん。大丈夫?」
八浜美丘は顔を背けたまま何も答えはしなかった。
そして、誠志郎は彼女の顔を見て怒りに呑まれていた。
「お前ら、女の子を殴って楽しいか?」
誠志郎の問いに内田総介は食い気味に答えた。
「ああ、楽しい!」
その時、誠志郎は自身の体が熱くなっていくのを感じていた。血が焼けるように熱くて、頭の中が真っ白になるその感覚は怒りなんて言葉で括れるモノではないようだった。
誠志郎自身は気がついていないようだが、黒い双眸は青く輝き異様な雰囲気を漂わせた。
その瞳を見た八浜美丘は恐怖に似た感情を抱いてしまっていた。だが、どういうわけか自分の体から痛みが消えていく感じがしていた。それと同時に、目の前にいる誠志郎の顔にいくつもの傷ができていった。気味の悪い現象を前に八浜美丘は意識を失った。
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