久しぶりの本気3
猛獣を見事に倒した誠志郎は、観客席の最上にいるディア女王を指差した。
「おい!こんな獣で俺が死ぬわけねぇだろうが。この国には俺を殺せる奴は一人もいねぇよ。怪我人が増えるだけで無駄な時間にしかならない。話し合いでどうにかならねぇか!?」
誠志郎は、猛獣と戦った時確信していた。この程度の猛獣に怯えているこの国の人間ではいくら束になろうとも自分を負かすことはできないと。
その自信に満ちた瞳を前にディア女王は苛立ちを隠しきれずにいた。そして、その怒りに満ちた声がマイクを通し場内に響き渡った。
「貴様…。貴様…図に乗るなよ。もう、余興は終いだ。本当に殺して構わん、殺れアイシス・グランデ」
すると、誠志郎の前に青髪で腰に剣をこしらえた女の子が姿を現した。
見る限り大げさな鎧は付けていない、それどころか鎧のようなものが部分的にも付けていないようだった。
「アイシス…グランデか。君、まだ子供なのに結構強そうだね」
誠志郎の発言にアイシス・グランデの眉がピクリと動いた。
「私は、もう十八歳。あなたよりも歳が上である自信がある」
「そうなんだ。本当に俺よりも歳上だ。だけどさ、その容姿を見て子供っていたんじゃない…」
誠志郎が意味深な事を呟くと、ブザーが鳴り始めアイシス・グランデは誠志郎の懐へと一瞬の隙に入り込んだ。
そして、腰の鞘から剣を引き抜きその剣先が誠志郎へと向けられた。だが、その剣先は誠志郎の手によって何なく掴まれてしまった。
「さっきの話の続きだがなぁ」
誠志郎がそう口にすると、アイシス・グランデは「なんのことだ」と言いながら手ごと切り落とす勢いで力を込めていった。
「俺がお前をガキだと思った理由はな、その表情だよ。どんな悩みがお前にあるのか俺はしらねぇがな、辛いのが自分一人だとでも思ってるようなしけた面。お前のその面は…この国の外で出会ったあいつによく似てる」
「うるさい、黙って斬られろ」
「嫌だね」
誠志郎は、掴んだ剣先に力を込めた。すると、剣からミシミシという音が鳴り始め、そして割れた。
剣を折られたアイシス・グランデは目を丸くしその光景を疑っている様だった。その隙が誠志郎に見えていない筈もなく、重く鋭い蹴りがアイシス・グランデの腹部に追突した。
彼女の軽い体が大きく吹き飛び、反対側の壁面にぶつかった。数秒後、煙の中から腹部を押さえたアイシス・グランデが姿を見せた。ダメージは与えられている筈なのだが、その表情は平静そのもので誠志郎に警戒心を抱かせた。
「頑丈すぎるだろ…」




