ディア国の大門2
誠志郎一行がディア国の大門の前にたどり着くと、その門が錆びた音を奏でて開き始めた。
その瞬間、ジャケットを着ていた男が一歩後退した。
「じゃあ、俺はここまでだな。この敷居は二度と跨ぎたかねぇんだ」
その言葉を聞いた誠志郎は、そっかと頷きながらも手を差し伸べた。その手は何かと言いたげなジャケットを着た男に誠志郎は言葉を続けた。
「握手だ。知ってるだろ?」
すると、ジャケットを着た男はふんっと鼻を鳴らし、そっぽを向いた。
男は誠志郎をここまで送り届けたが、清史郎が気に入ったからとかではない。その意図がなんなのかは未だにハッキリとはしないが、一つだけ分かることは仲間ではないという事だけだ。
そんな事誠志郎は知っているし、握手を求めてもしてくれない事すらわかっていた。けれども、彼のおかげで時間を負けたという事実に誠志郎は深く感謝していた。
「握手がダメなら、せめて名前を教えてくれ。俺の名前は誠志郎だ。お前は?」
ジャケットを着た男は面倒臭そうにため息を漏らして、口を開く。
「アイシス。俺は、アイシス・ライトだ。お前とはまた会うことになるだろうから名乗っておいてやる。せいぜい足掻いて、俺のようになれ。その時は俺の仲間に加えてやる、お前は腕がたつからな」
まさかのアイシスから勧誘された誠志郎は、あははと笑いながら言葉を返した。
「俺はお前の下にはつかねぇよ。アイシス!お前がなんでこの国に怯えてんのか、なんで女に守られる生き方を選んでるのか俺にはわかんねーけど、それを知った上で俺が今みたいに笑ってられたら……」
誠志郎はその先の言葉を口にはしなかった。
すぐ横にいたカナは首を傾げていたのだが、アイシスには伝わっていたようで、彼は「分かったよ」とだけ言い残して、元来た道へと引き返していった。
誠志郎とカナはアイシスの背を見送った後、ディア国の開かれた大門に向き直った。
「あっ」
カナがなにかに気が付いたようだった。
「どうかした?」
誠志郎がそう尋ねると、カナはどうでも良さそうに口にした。
「いや、もう一人の捕らえた人どっかいっちゃったね」
「まあ、別にいいんじゃないか?」
誠志郎もあまりあの男に興味を示してはいないようだった。
「それもそうね」
カナがそう呟いた瞬間、大門の扉が閉まり始め、二人は慌てて中へと入っていった。折角、アイシスが送ってくれたというのに全てを無駄にしてしまうところだった。
だが、二人はこの大門を潜らなければ良かったのだとすぐに後悔することとなった。




