ディア国の大門1
誠志郎とカナはディア国の荒野に入ってから、二人の男に襲われた。だが、今となってはその二人の男と共にディア国の入口へと向かっていた。
この白砂の上をどれだけ歩けば王国に辿り着けるのだろうか。そんな事を誠志郎が考えていると、黒いジャケットを着た方の男が話し始めた。
「ディア国ってのはクソな国だ。お前も行けばきっと分かる。いいや、分からずして今を生きることが出来なくなる」
敵意のない声色になった男の言葉に誠志郎は耳を傾けた。
「この荒野にいる男達は皆ディア国に行った事があるのか?」
「ああ、勿論だ。俺もこの荒野にいるカスになった衛兵を十人狩ってから国に招き入れられた」
誠志郎とカナは目を見合わせ、自分達に出され条件と全く同じだということに驚いていた。
男はそれからも淡々と話していった。その話というものが誠志郎やカナにとっては重要なことばかりで、先ほどまで誠志郎と喧嘩していたのが嘘だと思ってしまいそうだった。
そして、もう一人の男は依然沈黙を続けている。
「そこの嬢ちゃんは誠志郎の女な訳?嬢ちゃんみたいな子、結構好みなんだけど」
「私はそこの男の物なので…」
カナはそうはっきりと口にして、プイッとそっぽをむいた。
そんなやりとりを横目に見ていた誠志郎は微かに笑みを漏らしていて、ジャケットを着た男が「笑ってんじゃぇぞ」と語尾を荒げた。
「いや悪かった。何かな、そこのおっさんと比べてみるとお前は随分人間らしい」
男は「ん?あー」と声を漏らしながら最後尾を歩いている、おっさんこと初めて誠志郎が捕えた男を見て口を開いた。
「あのおっさんは随分と古株らしくてな。もう生きる事に執着がねぇんだ」
「執着?」
誠志郎が聞き返すと、ジャケットを着た男が頷き、話し始めた。
「生きる事に希望がないって感じだな。そういう意味ではお前とは全くの別人種だ。俺はどちらかと言えばお前と似た部類だろうな。でも、お前より現実を知ってるし抗おうとは思いつつも俺自身の限界も知っている」
そう言われた誠志郎は軽く頷いているようだった。
「確かにな。俺だってお前の考えならまだ分からなくもない。でも、あのおっさんは情がないみたいで丸っ切り読めやしない」
ジャケットの男はどこか不服そうに表情を曇らせた。
「お前如きガキに分かられる程、俺の考えは単調じゃねぇよ」
突然、噛み付かれた誠志郎は腹を立てて言い返そうとした。だが、その時、視界の片隅に大きな門のようなものが薄っすらと見えた。
「おい、あれは何だ。門なのか…?」
「ええ、とても大きいわ。まさか、あれが…」
誠志郎とカナが驚いていると、ジャケットを着た男が無表情のまま言った。
「ああ、あれがディア国。入り口の大門だ」




