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到着!ディア国1

 嵐を切り抜けた船は順調に航路を進み、島まで無事到着していた。

 ユウが船を付けた海岸には何も無い荒野が広がっており、ここが国であるとは到底思えなかった。

 誠志郎はカナと目を見合わせてからユウに尋ねた。


「なあ、ここは本当にディア国なのか?」

 誠志郎の質問に対し、ユウは平然と言葉にした。

「そうだ。君たち二人のことは前もってディア王女に話していてな、島に到着したら伝えてもらい事があると…言伝を預かっている」

「なんだ、お前手配までしてくれてんのか!結局、いい奴だな!」


 何も知らず明るい表情を浮かべる誠志郎とは裏腹に、ユウの表情は暗くなっていった。そして、言葉にすることを迷うかのようにしどろもどろに話し出した。

「この荒野には魔法使いの元衛兵が居る。そ奴らは全て死刑人だから十人捕らえて欲しい。十人捕らえた時点で迎えを出す。話はそれからだ、健闘を祈る。だそうだ」


 誠志郎がどう言うことか考えていると、カナは冷静に理解し説明を始めた。

「つまりは、私達は試されていて、ある程度の強者である衛兵を十人くらい捕らえられないようじゃ、話をする価値すらないってことね」

「じゃあ、俺らはとにかく二人で二十人捕まえれば良いんだな!」

「そうなるわね。少し頑張りましょうか」

「ああ!」


 そう言って簡易的に話が執着してしまった二人は剣を片手に船を降りようとしていた。

「ちょ、ちょっと待ってよ、二人とも!」

 ユウの声が海岸に響き渡り、二人は足を止める。そして、揃って頭を下げ出した。

「ユウ、ここまで運んでくれてありがとう。助かった」

「本当に助かったよ。私からもありがとう」


 二人が感謝の気持ちを表すと、ユウは大きく首を横に振り声にした。

「違うってば!そんな事よりも、あんた達この条件の意味分かってるの?ほぼほぼ、殺害メッセージなんだよ?元衛兵で魔法使いが多くいる荒野じゃ生きてはいけない。出港前に二人の技量を試してみたけど、到底敵わない」

 誠志郎はあっと言葉を漏らしてを叩いた。

「それで、出港前いきなり襲って来たのか!納得納得!じゃあ、今度はナイフ投げてくんなよ」

「そうね。ユウと再会する度にナイフを避けないといけないなんて面倒だし」


 いつまでもどうでも良いことをいつまでも話している二人に、ユウの苛立ちが加速していき、すぐに爆発した。その爆発は物凄く大きな声量に憑依している様だった。


「私は二人を心配してんだよ!?二人じゃ精々倒せて二、三人。噂じゃこの荒野にいる元衛兵の人数は国の人口を凌駕する。二人だけで、ましてやその短刀だけで一時間すら経たずに殺される。ディア女王に会うことよりも二人の命が大切でしょう?」

 ユウは思わず漏れてしまった自分の本心に驚いていた。

 元々、面倒な仕事をマルクスに押し付けられただけ。それどころかこれまで他人に対して感情が芽生えて来なかった筈の自分が、心から誠志郎とカナの安全を願っている。


 ユウが不安な表情で黙り込んでしまうと、誠志郎がその肩を優しく叩いた。

 ユウが顔を上げると、目を輝かせ笑みを浮かべる誠志郎とカナがいた。そして、二人は意図せず互いの言葉を被らせてしまった。


「大丈夫だ。俺は駄目でも…()()()()()()

「大丈夫よ。私には…()()()()()()()()()

 言葉が重なり、互いの想いが行き交ってしまった。

 誠志郎とカナは顔を赤く染め、互いの目を見ない様に意識していて、そんな二人の関係をユウは心から羨ましく思っていた。

 

 自分一人では挑戦することすら困難な道だとしても、信じ合う者が共にいるから怯える事もなく歩みを進められる。時に、それは自身を危険に晒すことよりも恐いのだが、この二人にはその感情を遥かに超えていく信頼に似たナニカがあるのだと、ユウは思った。


 その答えを知りたくて、その答えに近付きたくて、ユウは右拳を突き上げて決断する。

「頑張れ!いってらっしゃい!」


「「行ってきます」」

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