天才と凡才2
三人が航海に出てからすでに一週間が経過した。
思っていたよりも時間がかかっているようで、誠志郎は落ち着きを無くしていた。
あくびをしながらも舵を取るユウに誠志郎がべったり張り付き、「まだか?」と尋ねる。
「まだでーす」と覇気のない回答をユウがする。
そんなやりとりも増えてきた頃、ユウは痺れを切らした。
「てか、あんた何?急いでんの?」
「ああ!すごく急いでる」
真っ直ぐに悪意の無い言葉を向けてくる誠志郎を見て、ユウがため息交じりに舵を取り直した。
二人のやりとりを遠目から見ていたカナの表情は曇っていて、何か懸念すべきことがあるかのようだった。
居ても立っても居られない誠志郎は操縦室を飛び出し、剣を握った。
外は酷い豪雨だ。
船の進みが遅いのもほとんどはこの嵐のせいなのだ。
飛び出す誠志郎を横目に見ていたユウがカナに言った。
「カナ。あいつ連れ戻さないと本当に落ちるよ?嵐に呑まれた船ってのは足場は滑るし、揺れるし、視界も悪い。ちょっと身体能力に自信あるからって立ってもいられない」
ユウがそう話している間も、船は大きく揺れていた。
波の音が操縦室にも響き渡るのだが、カナからの返事だけは無かった。ましてや部屋の外に出る音すらもしていなかった。
カナは誠志郎を止めに行かなかったのか、と思ったユウが振り返ってみると思いがけない光景が視界に入ってきた。
「カナ…あいつ、もしかしてとんでもなく強いの?」
ユウの強張った声に応えるようにカナが呟いた。
「たぶん…私より。だって私にあんな事は出来ない」
誠志郎は波に揺れる船の上、目を瞑り剣を振り続けていた。足場も悪く、大きく揺れる船の上で視界を消して。
誠志郎は船が大きく揺れる前に勢い良く飛び跳ねて揺れる足場を空中で回避していた。目を開けていても出来る芸当では無いその動きに、カナとユウは目を奪われていた。
やがて、嵐を抜け目的の島が目に見えるところまで辿り着いた。すると、誠志郎が満面の笑みを浮かべ、部屋の中へ戻ってきた。
「おい!あれか!あそこに島があるよな!?」
「うるさいな、そうだよ。あれがディア王国だ」
ユウが面倒臭そうに呟くと誠志郎は、笑みを殺して目の色を変えた。気が高まり双眸が青くかがやいていた。
「カナ!」
誠志郎に名前を呼ばれ、カナが「何?」と聞き返す。
「全部終わったら、マルクスとノアとユウを連れてこの世界を旅しようか」
「旅?どうしたの突然」
「俺には知りたい答えがある。それと、俺は平凡な日常があまり好きじゃないのかもしれない」
誠志郎が笑みを浮かべていると、カナは呆れたように頷いた。
「ええ、セイシロウが行くのであればついて行くわ」
「ユウ!お前もな!」
「うるさい奴だな。私は考えておくよ」
満更でもないという回答をもらった誠志郎は満足気に頷き、眠りについた。




