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天才と凡才1

 誠志郎とカナはユウの用意したパンにかじりつきながら、船の進む先を見据えた。どれだけ目を凝らしてみても島一つとしてなく、何処へ向かっているのか分からなくなる。

 そう思った誠志郎が、パンを片手に船を操縦しているユウに尋ねた。

「こんなに何もないのに道が分かるのか?」


 その質問に対してユウが呆れたようにため息をついた。

「私は何百回もこの航路を行き来しているの。初めての時は色々な機械を使ってたけど、今なら潮の匂いだけで辿り着けるわ」

「いや、潮の匂いだけは無理だろう」

 苦笑しつつ誠志郎が呟いた。

 

 不服そうに表情をしかめたユウの顔が窓に映り、カナがそれに気が付き言葉にした。

「でも、良い航海士は潮の匂いや気温の変化、あとは勘とかでも正しい航路を見つけると言われているのよ?」

 カナが誠志郎にそう言うと、ユウが表情を明るくした。

「そう!さっすが私が見込んだカナ・ウィリアム!それに引き換え、セイシロウはバカでクソね。あとバカね!」

「おい!バカが二回入ってんだろうが!」

 誠志郎がすかさず言葉にすると、カナとユウは微かに笑みを浮かべていた。


「気にする点が陳腐(ちんぷ)なのよ、あんたは」

「ふふふ。でも、これがセイシロウらしいんだよ」

「そうなの?カナってセイシロウ(この馬鹿)と短い付き合いなのに苦労してるんじゃない?大丈夫か不安。もし良ければセイシロウ(この馬鹿)を海の藻屑にも出来るけど」

 二人の話が物騒な方向へと飛躍していくと誠志郎は肩身狭い思いをしつつ声を漏らした。


「迷惑かけてるのは百も承知なんだ…」

 やけに湿っぽく言葉にした誠志郎を二人はじっと見つめていた。

「俺は出会って二日程度の女の子に甘えてるクズなんだって分かってる。でも、他に頼りがいねぇから。謝る事はしか出来ないけど、本当に感謝はしてるよ。ありがとう。カナ!」

「カナだけかよ!あんたマジで海の藻屑にしてやろうか?」

「やめておけよ、ユウ。俺は女にめっぽう弱いんだ!マジで海に沈む」


 誠志郎が真剣な表情でそう呟くと、室内は静まり返り、やがて笑いを我慢できなかったカナの声が響き渡った。それにつられるように、誠志郎とユウからも笑顔が溢れた。

 

 なんだかんだでこの三人もまた良いチームなのかも知れない。

 当人達に自覚は無いのだが、マルクスとノアにも劣らない程にユウが誠志郎とカナの空気にあっているようだ。

 この中にマルクスとノアの二人も加われば、さぞかし楽しいメンバーになるのだが…。と誠志郎は一人考えてしまった。

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