静かな旅立ちと修行開始6
剣の交わる音がユウの船に鳴り響き始めて一時間が経過した。
周囲には船一つとしてなく、あるのは海と灼熱の太陽だけだ。
おかしな話だが、地球の最下層にあるはずのこの世界にも上の世界同様に太陽が存在していた。夜になれば月や星も顔を出すし、雲と雨だって存在する。話によれば雷や雪や地上にある全ての現象がここでも再現されていた。
一度はそのことに疑問を抱いていた誠志郎だったが、考えることすら無用と言わんばかりの魔法を体現し、今ではだれかの魔法であろう、という言葉で片付けている。
そんな誠志郎は剣を両手で持ち、肩で息をしていた。
向かい合うのは、どの国も認める剣技の達人カナ・ウィリアムだ。彼女もまた、随分と追い込まれたようで肩で息をしていた。
「セイシロウ。ハァ…ハァ。あなたは一体何処で、誰に、どんな風に、剣を習ったの?」
「言ったろ?ハァ。上の世界で、親代わりのおじさんに、木の棒で習ったんだ」
「何よそれ。そんな遊びみたいなもので私と同等にやり合えるっていうの?」
カナは痺れを切らし、素速く剣先を誠志郎の喉元に突き刺そうとした。だが、その剣先を自らの剣で薙ぎ払うと、その勢いを利用して誠志郎が斬りかかった。
誠志郎の剣はカナの腹部を掠めた。そこでカナが大の字に倒れ修行は一時中断という事になった。
「もうダメ!私はもう動けないわ」
誠志郎は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべ、双眸を青く輝かせた。すると、自身の腹部に切り傷がついた。他人の傷を自分に移す魔法は既に完璧にできているようだ。
すると、カナがバッと起き上がり、誠志郎を睨みつけた。
「私の傷…」
「ああ、俺が斬ったんだ。その傷は俺が受けるべきだろ?」
カナは首を横に振った。
「私の傷は私が背負うべきモノ。セイシロウの魔法は多用するべきでは無いと思う」
その言葉に誠志郎は首を傾げて言葉を返した。
「なんで?俺が痛みを背負えば、カナは痛い想いしなくて良いじゃん」
「それは違うでしょう」
「だから何で?」
「何でって、それは!…」
カナが何かを言おうとしたが、途中で言葉にする事を諦めた。
誠志郎も雰囲気から何かを察したのか、これ以上の言及はしなかった。
そんな二人の気まずい空気を嗅ぎ付けたのか、操縦室のある小屋からユウが顔を出した。
「二人とも。海が落ち着いてるから何か食べよう。海では食べられるときに食べておかないと!」
カナと誠志郎は顔を見合わせて声を揃えた。
「はーい」




