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静かな旅立ちと修行開始5

 汽笛がなり始めた頃、日は完全に登りきり船が出航した。

 多くの船が並列に飛び出す異様な光景を前に誠志郎とカナは目を見開いて興奮していた。

「カナ!見てみろ。すげぇ量の船が!」

「わ、分かってるって!なんて壮大な光景なの」

 右を見ても左を見ても大きな船で、せいしろうは絵本で読んだ海賊になったような気持ちになっていた。海賊は少年心をくすぐる要素があり、誠志郎の胸は最高潮に高鳴っていた。


「よし!カナ、修行の続きだ」

 誠志郎は張り切りながら剣を持ち、船上で身構えた。気の変わりようの早さにカナが呆れつつも、誠志郎に向き合い構えた。

「では行きますよ。本気で斬ってもらって構いません」

「そ、それはちょっと…」 

 誠志郎が口ごもっていると、カナは素早く間合いに踏み込み殺気のこもった剣を振り抜いた。

 誠志郎は間一髪のところで避けたが、危うく本当に斬られてしまうところだった。


「剣技を教えるってのはここまでするのか…」

 誠志郎がそう呟き、カナは剣を構えながら言った。

「お遊びのつもりならやめても良いけど?」


 カナにそう煽られると、誠志郎はニヤリと笑みを見せて剣を置いた。

「どういうつもり?本当にやめるつもり?」

「違う。俺はカナを斬らないから、カナは本気で俺を斬ってくれ。要は剣技とは言っても、斬られないことが大前提だろ?俺はよく攻撃を受けてるからな」

 すると、カナは不機嫌そうに笑みを浮かべていた。剣を握りしめた両手は力を込めすぎて震えている。

「私は、これまで多くの人を斬ってきた。その辺の兵士よりも強いことは間違いない。それでも、セイシロウは生身でやりあおうってこと?」

「ああ」

「馬鹿にしないで」


 カナがそう呟いた瞬間、誠志郎の懐には剣先が入っていて、胸の皮膚を数ミリ持っていかれた。服は斬られ、僅かな血が布を湿らせた。

 誠志郎は拳を構えて、戦闘体制に入った。

「青い瞳は使わないの?」

 カナが素早く、誠志郎の懐に潜り込む。そして、引き抜かれた剣は誠志郎の肉を立つほどの勢いを纏っていた。

「魔法を使う時、俺は良く見えるようになる。それにいつも頼ってちゃ、いざって時に頼れる物が無い。だから…」

 下から振り上げられたカナの剣の下をくぐるように交わし、その剣の面に拳を叩き込んだ。


 誠志郎の魔法は他人の傷を自らが受けることで回復させる身代わり魔法だ。そのことに変わりはないのだが、ここ最近で分かった事もある。誠志郎が魔法を使う時、身体能力そのものが上昇していること。当人もこれまでは自覚がなかったのだが、いくつかの戦闘を経てそう感じるようになっていた。これまではあくまでも、感じていた程度。だが、たった今、拳でカナの剣を折れなかった瞬間に確信した。


 興奮して魔法発動状態だったオークション会場では壊せた物が壊せない。つまりは、魔法発動状態でなければ、誠志郎は少し動体視力の優れている普通の人間だ。


 誠志郎は置いたはずの剣を手に取り構えた。

 その姿を見てカナは揚々と話し始めた。

「一度置いた剣を再びとるなんて、あなたにはプライドもないのね」

「カナ!修行だからと言って挑発してこなくて良いぞ」

 誠志郎があっけらかんと呟くと、カナは頬を赤く染め怒鳴った。

「ち、違うわ!!」

 誠志郎は剣を構え、自らカナの懐へと飛び込んで行った。不意を突くような形になってはしまったが、そんな事関係ないと言わんばかりの冷めた表情で誠志郎は剣を振り抜いた。

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