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不可解な進学校2

 誠志郎と辻道がB組の教室に辿り着き、後方のドアを開けるとお目当の彼女は教室前方の席で同じ中学の友達と話しているようだった。

「な?いたろ?」

 したり顔で呟く辻道を怪訝そうに思いながらも誠志郎の胸は高鳴っていた。

「俺も頑張ってみる」

 誠志郎の素直な一言が聞けた事が嬉しかったのか、辻道は満足そうに「おう!」と返事をして自身の席に着席した。


 一方で誠志郎は八浜美丘と隣の席のため、着席することをためらっていた。恥ずかしいからというのもあるのだろうが、何よりも彼女の周りには人が多くて気まずそうだった。

 入学式もこれからだと言うのに何故か彼女には友達ができていた。


 八浜美丘の性格と容姿の良さでは右に出る者はいないと思っていた誠志朗ではあったが、彼女自身はかなりの人見知りで口調が少しきつめだから友達はなかなかできないと思っていた。勘違いされやすい性格なのだ。

 誠志朗も出会ったばかりの頃は八浜美丘が大嫌いだった。それでも、同じ教室で生活していくと見えてくる彼女の小さな優しさに惹かれていった。


 誰にも屈することなく、常に正しさだけを求めていて憧れに似た感情すらもあるほどだ。けれども、中学では大した関わりを持つことができなかった。だからこそ、慣れない勉学に励み難関と言われた一校に進路を絞ったのだ。それが、育ての親であるソリティアと克二への恩返しになるとも思っていた。


 誠志郎は高鳴る胸を抑えながらも自身の席に着席した。

 

「美丘ちゃんさあ、今度の土曜日遊びに行こうよ!」 

 女子の話し声が大きくて誠志郎にも聞こえていた。

 八浜美丘は少し困った表情を浮かべながら返事をした。

「ごめんね、土曜日は用事があるの」

 あっさりと断られた女子生徒は「ざんね~ん」と言いつつも残念がっている様子はない。ただ、独りにはなりたくないから安定して一緒にいてくれる人間を作っておきたかっただけなのだろう。

入学式の日なんてのは大体が一緒にいてくれる誰かを探す日なのだろう。知り合いが元からいる誠志郎と辻道みたいな人は別として。


 誠志郎が女子トークの災害に巻き込まれ気まずさに耐えかねている時、教室前方のドアが勢いよく開かれた。皆は教師が来たものかと身構えたが、入ってきたのは金髪や緑髪、茶髪などいろとりどりなヘアカラーをした連中だった。

 この高校が治安の悪い高校だと言うことを誰もが知っているため、彼らが不良であることは瞬時に理解できただろう。勿論、誠志郎もそのことは理解していた。だが、皆のように恐れることはなく、平然な顔をしていた。


 不良と思われる連中は、八浜美丘と話していた女子達に視線を向けた。そして、その中の独りに声をかけたのだ。

「よお、探したじゃねーか。ちょこまかしてんじゃねーぞ」 

 金髪の男が不機嫌そうに言うと、声をかけられた女子生徒は怯えた表情で反応した。

「ごめん。今行きます」

 知り合いではあるみたいだが、どう見ても良い関係を築けているとは思えない。二人の間には明らかな上下関係が確立されてた。まるで、貴族と奴隷。

 そう思った誠志郎は柄にもなく苛立ちを感じていた。


 女子生徒は悲しげな表情をしないように取り繕って笑みを浮かべた。

「じゃ、私はここらで抜けるね。またね〜」

 そして、不良グループの奴らと女子生徒は誠志郎らに背を向けた。これで緊迫した空気から開放されると多くの人が思っただろう。ただ、辻道だけは誠志郎を見てニヤニヤとしていた。


 誠志郎は世の中の不条理というものが心底嫌いで、偉そうな人間も同等に嫌いだった。そんな奴を見つけてはぶつかってきた。だからこそ、いじめにあうこともあったし白い目で見られることもあった。

 宮島誠志郎とは、怒りが湧いた時に他人の目など気にするタイプではないのだ。だからこそ、あの不良グループは誠志郎一人に潰される。辻道はそう確信していた。

 だが、そんな期待とは裏腹に、席を立ったのは八浜美丘だった。誠志郎も席を立つ体制にはなっていたが予想外の八浜美丘の行動に体が止まっていた。

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