静かな旅立ちと修行開始4
「美味い!」
ユウの差し出した茶を啜った誠志郎とカナはが同時に言葉にした。
「そりゃ美味いだろうね。ディア国で採れる茶葉は世界一。私も大好きな茶だよ」
二人はユウの話も半分耳を傾けながらお茶を啜った。渋味と甘味を上手く混ぜ合わせた上に茶葉の突き抜ける爽やかな風味まである。誠志郎とてこれほどの美味しい茶には巡り合ってこなかった。
二人が一気に飲み干すと、ユウは本題を切り出した。
「で、君の名前がなぜ悪名や悪魔と呼ばれるかだよね」
誠志郎も真剣な面持ちで「ああ」と答えた。
「昔々、百年くらい前かな?この世は内戦に明け暮れていた。戦争の引き金は分からないんだけど、その戦争を終わらせようとした人たちがいた。その人たちは特殊な力を使って見事に戦争に終止符を打った。その人達は後に五代魔法使いと呼ばれた。君がこれから会おうとしているディア女王もそうなんだけどね」
「そ、そうなのか…」
「五代魔法使いの人達は英雄として民に愛されていた。それなのに、一人の魔法使いの裏切りによって魔法使いが二人殺された。言い伝えでは裏切りを起こした魔法使いも死んだみたいね。その魔法使いの名が…セイシロウ」
誠志郎は汗一つかく事なくユウに質問した。
「裏切りを起こした魔法使いの名前が俺と同じだから悪魔の名前だってのは分かった。じゃあ、ディア女王以外の魔法使いは何処にいる?話ではもう一人余っているはずだが?」
「君、悪魔の名前をそんなにすんなり受け入れるのね」
「良いから、質問に答えてくれ」
ユウはハイハイと軽くあしらいながらも質問に答えた。
「ディア女王ともう一人、アムーという魔法使いがいたはず。けれども、行方不明のまま迷宮入りしてしまった」
「なるほどね」
誠志郎が意味深に呟くと、一人小屋を出て行ってしまった。その様子を見ていたカナとユウは二人で首を傾げながらも誠志郎の後を追った。
小屋を出て直ぐにカナが誠志郎に問う。
「何か分かったの?」
誠志郎はじっと空を見つめたまま言った。
「何も分からないことが分かった。だから、俺らの行く先はディア国で間違っていなかったんだ。そこには歴史の全貌を知るディア女王がいるからな」
カナは誠志郎を真っ直ぐ見据え、「うん!」と元気な声を漏らした。
ユウは誠志郎に聞こえないよう、ヒソヒソとカナに話しかける。
「ねえ、あいつって馬鹿でしょ?何処が良いの?」
カナはその質問にあっけらかんと答えた。
「何事も誰にでも真っ直ぐなところ、かな」
「真っ直ぐねぇ。私には馬鹿なだけにしか見えないけど」
ユウが正直な気持ちをさらけ出すと、カナはふふっと笑い始めた。
「ユウも真っ直ぐだから、相性良いかもね?」
「だ、誰があんな奴と」
「ふふふ。近い内に気がつくよ」
そんなひそひそ話が行われていたことに気が付きもしない誠志郎は、ユウが言う所の馬鹿面でカナに駆け寄った。
「よし、カナ。俺に剣技を教えてくれるんだろ。今からやろう!」
「え、もう?」
「ああ!俺はカナより弱いが、直ぐにカナより強くならないとダメだろ?」
そう言って、誠志郎は地震の弱さをあっという間に認めてしまった。それなのに笑顔を振りまいていることがユウには理解し難いことだった。
男とはプライドだけで弱い生き物だ。という、ユウの概念に亀裂が入りかけた瞬間でもあった。
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